「昔のレーシングカーが現代によみがえったような雰囲気を生み出すことも目標でした」外観はオリジナルのように見えて、実は中身はすごい!|1968年式 ダットサン フェアレディ 2000 Vol.3

純正にこだわったエクステリア、エンジンルームは今どきなカスタム! 

       
「能ある鷹は爪を隠す」。旧車のモディファイにおいても、時として使われる表現だ。ごく普通に見えるのに、フタを開けたらびっくり。レーシングスペックのエキップメントに、ワイヤータックやシェイブドベイまで駆使され、まさにギャップだらけ。10年以上の歳月をかけて、オーナー自ら仕上げたフェアレディの爪は、鋭く、美しい。

【1968年式 ダットサン フェアレディ 2000 Vol.3】

【2】から続く

 オーナーは工業高校時代には自動車部に所属し、現在も勤める自動車販売店に入社した当時は、整備を担当していた。そのためクルマの構造や工具の使い方には精通しており、板金や塗装、自分には少し手に負えないと思う複雑な作り物などを除いて、ほとんどすべての作業を自らこなしている。

 そんなオーナーにとって頼れる存在が、愛知県豊明市にある「ダディーモーターワークス」尾頭邦宏代表だ。実は、尾頭さんとオーナーは、高校の自動車部の先輩後輩という間柄。年は離れているので同じ時期に学校に通っていたわけではないが、尾頭さんいわく、「OBが卒業後も部室に顔を出して後輩の面倒を見たり、部品を発注しておいてもらったりするのが部の伝統(笑)」だそうで、二人は当時から顔なじみだった。そういう間柄もあって、尾頭さんは後輩であるオーナーからの依頼を受け、フェアレディのブレーキの配管や電気系統に関する作業を担当した。

「隠せるものはできるだけ隠して、シンプルなエンジンルームにしたいということだったので、協力させてもらいました。全体的に地味といえば地味かもしれませんけど、すごくこだわりが詰まっているし、仕上がりもきれい。玄人好みの1台ですね」と、尾頭さんも後輩のクルマを評価している。
 そしてその言葉は、オーナーが目指した方向性を的確に表したものでもあった。外観はまるでオリジナルのように見えて、実は中身はすごい!  と見る人に感じ取ってもらえることが、オーナーにとっての快感なのだ。エンジンに備わるソレックス50PHHやフロントブレーキのMK63キャリパー、純正の14インチをベースに、15インチ化&ワイド加工したスチールホイールなどが、その気持ちを象徴している。

>>【画像23枚】エンジンルームからはキャブが邪魔して見えないが、左フロントのタイヤハウスからチラッと見えるオールステンレス等長タコ足など


「昔のレーシングカーが現代によみがえったような雰囲気を生み出すことも目標でした。なにせ走るクルマが好きなので(笑)。これまでにエンジンは2回バラして、強化部品の組み付けも自分でやっています。実際すごく大変でしたし、後で失敗したなと思ったこともたくさんありました。でも、自分の手を動かしてみると、ノーマルと比べてどこがどう変わったかがよく分かるんですよね。自分で作業することの一番の効用はそこだと思います。もちろん出費をセーブできるというメリットもありますけど、その分、時間はかかりますから(笑)。このフェアレディも、これまでに10年以上の歳月を費やしてきたわけですし。自分の中では、現状でほぼ完成形のつもりなので、これからは現状維持に努めたいと思います。子供もこのクルマを気に入っているので、これから家族との思い出も増やしていきたいですね」



キャブレターは純正よりも径の大きいソレックス50PHHを装着し、現在はジェット類も完璧にセッティング。燃料ポンプはニスモ製を使用している。





OS技研の特注ピストンやキャレロのコンロッドなどが組み込まれたU20型エンジン。シンプルで美しいエンジンルームにするため、絶妙なワイヤータックが施されている。


OWNER’S VOICE/フェアレディのよさを、ずっと楽しんでいきたい


 地元愛知県でオーナー・ミーティングも主催するオーナー。昨年11月には27台のフェアレディが集まり、親睦を深めた。今年も同じ時期に開催する予定なので、多くのオーナーとの出会いを楽しみにしている。写真の息子さんは現在2歳。クルマ趣味は家族からの理解も得られ、息子さんもフェアレディに乗るのが大好きだそうだ。実はもう1台、1967年式のSR311も所有しており、希少なローウインドー(フロントスクリーンが低いタイプ)だ。「いい感じのボロさなので、そちらはできるだけそのままの状態をキープして楽しみたいと思います」

1968年式 ダットサン フェアレディ 2000(SRL311)
SPECIFICATION 諸元
■ エクステリア:マーシャル製W反射鏡ヘッドライト、リアフェンダーたたき出し
■ エンジン:U20型改、OS技研製φ88.2mm鍛造ピストン、キャレロ製H断面コンロッド、加工カム(74度)、イスキー製強化バルブスプリング
■ 点火系:永井電子機器製ウルトラMDI、PPK
■ 吸気系:ソレックス50PHH
■ 排気系:ガレージアルティア製タコ足/マフラー
■ 冷却系:特注ラジエーター
■ 燃料系:ニスモ燃料ポンプ
■ 駆動系:OS技研製ツインプレートクラッチ、マジックパフォーマンス製71A改ミッション
■ 足回り:(F)ショップオリジナルレーシングサス、マナティレーシング製ロワアーム/スタビ(ピロボールタイプ) (R)ビルシュタイン製ショックアブソーバー、純正レース用サス
■ ブレーキ:(F)MK63キャリパー(ワンオフブラケット)、ステンメッシュホース (R)強化シュー
■ タイヤ:ダンロップ 185/65R15(前後とも)
■ ホイール:日産純正改15インチ(ハコスカGT-R用センターキャップ)15×6J
■ 内装:マッハステアリング、オートルック製ローバックシート、ダッシュボード張り替え

初出:ノスタルジックスピード 2018年5月号 vol.016
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1968年式 ダットサン フェアレディ 2000(全3記事)

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【1】【2】から続く

text : HIDEO KOBAYASHI/小林秀雄 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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