伊豆長岡の伝説のヒルクライムコースを走るベレット! 本来の魅力を後世に伝えるためのオリジナルレストア|1969年式 いすゞ ベレット 1600 GTR Vol.3

前期型は大型ライトベゼルの設定がなく、スッキリとした顔つきが特徴。

       
【情熱のスポーツユニット】
他人とは違うクルマに乗っている、という優越感や満足感は、旧車乗りの自己主張そのもの。
その極みとも言えるのが、スポーツ仕様のエンジン搭載車を所有することだろう。
高圧縮比、複数キャブレター、ダブルオーバーヘッドカムシャフト、5速マニュアルミッションなど、クルマ好きの心をわしづかみにする、ホットなメカニズムが組み込まれたクルマたち。
数ある中から選び出した5種類のスポーツユニットを眺めながら、ぜひ妄想をふくらませてほしい。

【1969年式 いすゞ ベレット 1600 GTR Vol.3】

【2】から続く

 オーナー的には元のままを維持してきただけというが、前期型の1600GTRのパーツは入手困難な状態であり、後期型や1800モデル用のパーツで代用することは当たり前のように行われている。今使うのに問題ないように現代的パーツを取り入れることを否定しているわけではない。ただ本来持っている良さをスポイルしてしまうのは心が痛むし、歴史から消え去ってしまうはかない存在にはしたくないということからオリジナルの伝承を希望しているという。

「いい例がマフラーエンドなんですが、古いクルマだから乗っていれば朽ち果てていきますよ。そうすると腐食に強い材質のものが選ばれる傾向で、ステンレス製が多くなります。でもベレットの排気音は野太いのが本来のもの。スチール製でないとオリジナルのサウンドを再現できません。ステンレスでは甲高くてベレットではないと思えるんです」というように、オーナーはベレット本来の魅力を後世に伝えていくため、ネジ一本、ワッシャーに到るまでワンオフ製作して奮闘しているのだ。



>>【画像17枚】本文中でも触れたとおり、磨き込まれた状態はステンレス製と見間違えるほどのスチール製マフラーエンドなど

OWNER’S VOICE/オリジナルを保つために欠品パーツはワンオフ !  



 3年前にレストアを開始して、ようやく納得のいく状態になった個体。しかしオリジナル状態を保つために、現役時代に付き合いのあった人たちに頼んで、欠品パーツを自らワンオフしているという。オリジナルへのこだわりは筋金入りで、自作ガレージでも日々格闘している。しかしそれが楽しくて仕方ないというオーナーは、充実のガレージライフを送っているのだ。




この峠道はオーナーのご自宅の近所だが、なんとこの場所こそ、日本に本格的サーキットが完成する以前に、後に活躍するレーシングドライバーたちがヒルクライムを行っていた、伊豆長岡の伝説のヒルクライムコースなのだ。

1969年式 いすゞ ベレット 1600 GTR(PR91W)
SPECIFICATION 諸元
全長 4005mm
全幅 1495mm
全高 1325mm
ホイールベース 2350mm
トレッド前/後 1260 / 1240mm
最低地上高 195mm
室内長 1480mm
室内幅 1240mm
室内高 1060mm
車両重量 970kg
乗車定員 4名
最高速度 190km / h
登坂能力 0.488°
最小回転半径 5.00m
エンジン型式 G161W型
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
総排気量 1584cc
ボア×ストローク 82×75mm
圧縮比 10.3:1
最高出力 120ps / 6400rpm
最大トルク 14.5kg-m / 5200rpm
燃料供給装置ソレックス型ツインチョークキャブレター×2
燃料タンク容量 46L
変速機 前進4段 / 後退 1段
変速比 1速 3.467 / 2速 1.989 / 3速 1.356 / 4速 1.000 / 後退 3.592
最終減速比 3.727
ステアリング型式 ラックピニオン
サスペンション前/後 ダブルウイッシュボーン / ダイアゴナルリンク式スイングアクスル
ブレーキ前/後 ディスク / リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 165HR13
発売当時価格 111.0万円

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年4月号 vol.180
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1969年式 いすゞ ベレット 1600 GTR(全3記事)

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【1】【2】から続く

photo:TARO KODA/幸田太郎(Studio Roots)

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