ソレックス50PHH仕様だがFコンVプロでマネージ!? インジェクション化も視野に入れた仕上げ|1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X Vol.4

昔からあこがれていたというソレックス50PHHは、L型メカチューンを作るにあたって譲れないアイテムだった。

       
「心血を注ぐ」とは、こういうクルマのことを指すのであろう。ノスタルジック2デイズ2018で一躍注目を集めたアンリミテッドが製作したハコスカ。速くて美しいをテーマに、約3年という歳月をかけて製作されたマシンは、オーナーと作り手のこだわりに満ちていた。
すべてにおいて最上級を目指したその仕上がりをご覧いただこう。

【1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X Vol.4】

【3】から続く

 そうして仕上がった軽くて強靭なボディに積み込まれたのは、L28型改3.2L仕様のフルチューンエンジンだ。「レスポンスよりトルクを重視したい」というオーナーのオーナーの意向を受け、ASWの鍛造ピストンやコンロッド、フルカウンタークランクをセット。当然ながらヘッドまわりにも手が入り、79度カムやビックバルブを組み込み、燃焼室やポート形状も最適化。それにソレックス50PHHを組み合わせることで、トルクフルな特性へと生まれ変わらせた。また高回転での点火トラブルを防ぐべく、ライジングのダイレクトイグニッションキットを投入。FコンVプロでマネージメントしている点も見逃せない。

「そこまでするならインジェクション化するという手もありますが、オーナーの希望もあり、あえてキャブ仕様にこだわっています。ダイレクトイグニッション化することで、プラグコードなどが不要になり、エンジンルームがスッキリするのもメリットですね」。

 その言葉どおり、L28型改3.2Lの強心臓が鎮座するエンジンルームは、まさに芸術的な美しさ。レースパックのスマートワイヤーを導入して配線をスッキリと処理したほか、バッテリーはトランクに移設。ウオッシャータンクなど走りに不要なものは徹底的に撤去している。

「ヘッドライトのベゼルなどの金メッキ部分は、あえてブラックメッキをし直すなど、細部までこだわりました。ボルト1本の色にも気を使うことで統一感を高めています」。

 気が遠くなるような地道な作業の連続だが、そうした積み重ねがクルマの完成度を引き上げているのだ。

>>【画像45枚】高回転をキープするサーキット走行では安定した点火性能を実現したい。そこでRB型エンジン用のピックアップを組み込み、ダイレクトイグニッション化。インジェクション化したくなった場合、すぐにスイッチできる仕様として、点火系のみFコンVプロでマネージメントしているL28型改3.2L仕様エンジンなど



結晶塗装を施したタペットカバーやアルマイト仕上げのファンネルをブルーで統一したのもオーナーのこだわり。





高回転でパンチを生み出す燃焼室形状や霧化効率を考えて仕上げたポート形状など、サーキットでの戦闘力を高めるために考えうることをすべて実施した3.2Lフルチューン。まだ慣らし前だが、340〜350㎰を目標とする。レブを8000rpmに設定したのはそれ以上高めると寿命が著しく落ちるから。内部パーツは高い実績を誇るASW製で統一。φ89mmの鍛造ピストンはピンハイトが27mmと短く設計されており、首振りによりブロックかじり予防が期待できる。86mmフルカウンタークランクの導入にあたりブロックは逃げ加工を実施したほか、クランクキャップのボルトも拡大。そのほか強度向上のためのブロックフィラー充填やパルホスコート処理など、万全に作り込まれている。当然ながら組み上げ精度にも徹底的にこだわった。





1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X(KGC10)
SPECIFICATION 諸元
■ ボディ:ホワイトボディ状態からフルレストア、グローバルジグにてフレーム修正、ホールソーによる各部穴開け軽量加工、フルスポット増し、アンテナ/クオーターピラー/給油口の穴埋め加工、安全タンク装着にともなうベースフレーム&トランクフロア加工、けん引フック装着に伴いフロア加工&リアメンバーのチャネリング加工、リアスタビライザー溶接加工装着、エポキシプライマーによるボディ全塗装、キャビンフロア/前後タイヤハウス/腹下チッピング塗装、フロントバランスパネルのカーボン化、ガッチリサポート装着、ドライカーボンボンネット/ドア/フェンダーミラー、カーボンフロントフェンダー/トランクフード(サポートロッド製作)、ロールケージ取り付け、オリジナルシルバー全塗装、フロントスポイラー/オーバーフェンダー/リアスポイラーブラック塗装、ウインドーモールカーボン加工、FRPフロント&リアバンパーメッキ加工
■ エンジン:L28型改3.2L仕様(ヘッド)周回燃焼室アルゴン溶接(オリジナル形状、半鏡面仕様)、ポート拡大加工(3.2L専用ビッグポートスペシャル仕様:INヘアライン仕上げ、EX半鏡面)、スペシャル形状シートカット、ASW製79Rスペシャルカムシャフト、ABB/PBBバルブガイド、ASW製INφ46.5mm/EXφ38mm-119mmビッグバルブ/強化バルブスプリング/チタンリテーナー/強化コッター/ロッカーアーム/バーニアスプロケット(ブロック)N42マニアブロックフル加工、クランクキャップボルトサイズアップ、ラインボーリング、クランクセンター裏ボーリング、上下面研、ダミーヘッドボーリング、ホーニング、パルホスコート、3.2Lクランク逃げ加工、ブロックフィラー充てん、周回対応ブロック上面水穴数調整、オイル穴拡大、チェーンガイドボルト穴拡大、強化チェーン、ASW製ショートピンハイSPLφ89mm鍛造ピストン(ピンハイ27mm)/86mmストロークフルカウンタークランク/H断面ナローコンロッド(138.5mm)/アルミ製オイルパン、エアコン専用ATIダンパープーリー
■ 点火系:ライジング製ダイレクトイグニッションシステム、HKS製FコンVプロ制御、ASW製軽量オルタネーター、強化リダクションセルモーター
■ 吸気系:ソレックス50PHH(フルオーバーホール、パワーポンプジェット加工)
■ 排気系:φ48.6mm6-1チタンタコ足、φ80mmチタンマフラー
■ 燃料計:インジェクション高圧ポンプ(2基)、ASW製電磁ポンプ(1基)、大容量フューエルレギュレーター(2基)、コレクタータンク、フューエルデリバリーパイプ、ATLフューエルタンク、周回対応燃料配管
■ 冷却系:アルミ3層ラジエーター、電動ファン、オイルクーラー
■ 駆動系:OS技研ツインプレートクラッチ、ベルハウジング加工、HPI製6速クロスミッション、カーボンプロペラシャフト、R200デフオーバーホール、ニスモLSD(ファイナル4.1)、エスコート製アルフィンデフカバー/ビレットデフキャリア、デフメンバー位置上げ、等速ドライブシャフト、プロテック製アルミ削り出しハブ
■ 足回り:エナペタル製車高調(フロント7kg/mm、リア20kg/mm)(F)ピロエンド調整式ロワアーム/テンションロッド/タイロッド、強化スタビライザー(R)フルピロ調整式スイングアーム、ワークスタイプスタビライザー
■ ブレーキ:(F)ブレンボ4ポットキャリパー、φ330mm2ピースドリルドスリットローター(R)ブレンボ2ポットキャリパー、φ330mm2ピースドリルドスリットローター、インドラム式パーキングブレーキ(純正ワイヤー対応)ブレーキマスターバック/シリンダー大容量化、ブレーキライン引き直し、プロポーショニングバルブ装着
■ タイヤ:ダンロップDIREZZA ZⅢ(F)225/45R16
(R)245/40R17
■ ホイール:レイズ ボルクレーシングTE37V(F)16×8.5J -6
(R)17×10J -20
■ 内装:ナルディ製ステアリング、レカロ製RS-G(アルカンターラ)、6点式ロールケージ、レースパック製メーター/スマートワイヤー(フルハーネス)

【5】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年5月号 vol.016
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X(全6記事)

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【1】【2】【3】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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