「サーキットでの速さを追い求める」そして、コンセプトに掲げたのは「速さと美しさ」を兼ね備えたハコスカ|1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X Vol.3

サーキットでのポテンシャルと 仕上がりの美しさを両立する。

       
「心血を注ぐ」とは、こういうクルマのことを指すのであろう。ノスタルジック2デイズ2018で一躍注目を集めたアンリミテッドが製作したハコスカ。速くて美しいをテーマに、約3年という歳月をかけて製作されたマシンは、オーナーと作り手のこだわりに満ちていた。
すべてにおいて最上級を目指したその仕上がりをご覧いただこう。

【1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X Vol.3】

【2】から続く

 妥協なくクルマを仕上げるのは、決してたやすいことではない。莫大な時間や労力、そして予算がかかるものだ。しかし「サーキットでの速さを追い求める」という明確な目的を持って製作に取り組んだこのハコスカでは、その目標に向かいひたすら突き進められた。

 ベースとなったKGC10は、フロアには穴があき、フェンダー下も朽ち果てた1972年式のハコスカHT。まず取り組んだのがボディのフルレストアだ。ボディを丸裸にしたうえで、サビが出ている部分を修復。さらに応力が集中するストラットまわりを中心に、フルスポット増しを実施していった。

「リアのバルクヘッド開口部にはアルミバーを追加するなど剛性を確保しつつ、不要なサービスホールやボルト穴のスムージング処理も行なうなど、見た目の美しさにもこだわりました」とアンリミテッド代表の西桐直人さん。

 トランク内を加工して安全タンクをできるだけ下側にマウントしたのも、重心をできるだけ低くしたいから。また負荷が少ない部分では、ホールソーで穴開け加工を行ない重量減につなげるなど、地道な作業を重ねている。


>>【画像45枚】装着に伴いシフト位置が若干後方にズレているが、コンソールはもちろん中身(フロアトンネル部)までキッチリ処理して違和感なく収めている、HPI製S15シルビア用6速クロスのミッションなど



少しでも軽くするために内装やフロアカーペットは撤去。フロアはあえてチッピング塗装で仕上げている。安全性確保と剛性アップを目的に6点式ロールケージも組み込んだ。





ドライカーボン製のドアを投入。またGT-Xに標準装備されるパワーウインドーは廃し、手動化された。これも軽量化を進めるためだ。





スマートワイヤーの導入に伴い、できる限り配線も短く引き直した。トラブル予防になるし、配線の間引きによる軽量化効果は侮れない。燃料配管もシンプルかつ最小限に処理。



1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X(KGC10)
SPECIFICATION 諸元
■ ボディ:ホワイトボディ状態からフルレストア、グローバルジグにてフレーム修正、ホールソーによる各部穴開け軽量加工、フルスポット増し、アンテナ/クオーターピラー/給油口の穴埋め加工、安全タンク装着にともなうベースフレーム&トランクフロア加工、けん引フック装着に伴いフロア加工&リアメンバーのチャネリング加工、リアスタビライザー溶接加工装着、エポキシプライマーによるボディ全塗装、キャビンフロア/前後タイヤハウス/腹下チッピング塗装、フロントバランスパネルのカーボン化、ガッチリサポート装着、ドライカーボンボンネット/ドア/フェンダーミラー、カーボンフロントフェンダー/トランクフード(サポートロッド製作)、ロールケージ取り付け、オリジナルシルバー全塗装、フロントスポイラー/オーバーフェンダー/リアスポイラーブラック塗装、ウインドーモールカーボン加工、FRPフロント&リアバンパーメッキ加工
■ エンジン:L28型改3.2L仕様(ヘッド)周回燃焼室アルゴン溶接(オリジナル形状、半鏡面仕様)、ポート拡大加工(3.2L専用ビッグポートスペシャル仕様:INヘアライン仕上げ、EX半鏡面)、スペシャル形状シートカット、ASW製79Rスペシャルカムシャフト、ABB/PBBバルブガイド、ASW製INφ46.5mm/EXφ38mm-119mmビッグバルブ/強化バルブスプリング/チタンリテーナー/強化コッター/ロッカーアーム/バーニアスプロケット(ブロック)N42マニアブロックフル加工、クランクキャップボルトサイズアップ、ラインボーリング、クランクセンター裏ボーリング、上下面研、ダミーヘッドボーリング、ホーニング、パルホスコート、3.2Lクランク逃げ加工、ブロックフィラー充てん、周回対応ブロック上面水穴数調整、オイル穴拡大、チェーンガイドボルト穴拡大、強化チェーン、ASW製ショートピンハイSPLφ89mm鍛造ピストン(ピンハイ27mm)/86mmストロークフルカウンタークランク/H断面ナローコンロッド(138.5mm)/アルミ製オイルパン、エアコン専用ATIダンパープーリー
■ 点火系:ライジング製ダイレクトイグニッションシステム、HKS製FコンVプロ制御、ASW製軽量オルタネーター、強化リダクションセルモーター
■ 吸気系:ソレックス50PHH(フルオーバーホール、パワーポンプジェット加工)
■ 排気系:φ48.6mm6-1チタンタコ足、φ80mmチタンマフラー
■ 燃料計:インジェクション高圧ポンプ(2基)、ASW製電磁ポンプ(1基)、大容量フューエルレギュレーター(2基)、コレクタータンク、フューエルデリバリーパイプ、ATLフューエルタンク、周回対応燃料配管
■ 冷却系:アルミ3層ラジエーター、電動ファン、オイルクーラー
■ 駆動系:OS技研ツインプレートクラッチ、ベルハウジング加工、HPI製6速クロスミッション、カーボンプロペラシャフト、R200デフオーバーホール、ニスモLSD(ファイナル4.1)、エスコート製アルフィンデフカバー/ビレットデフキャリア、デフメンバー位置上げ、等速ドライブシャフト、プロテック製アルミ削り出しハブ
■ 足回り:エナペタル製車高調(フロント7kg/mm、リア20kg/mm)(F)ピロエンド調整式ロワアーム/テンションロッド/タイロッド、強化スタビライザー(R)フルピロ調整式スイングアーム、ワークスタイプスタビライザー
■ ブレーキ:(F)ブレンボ4ポットキャリパー、φ330mm2ピースドリルドスリットローター(R)ブレンボ2ポットキャリパー、φ330mm2ピースドリルドスリットローター、インドラム式パーキングブレーキ(純正ワイヤー対応)ブレーキマスターバック/シリンダー大容量化、ブレーキライン引き直し、プロポーショニングバルブ装着
■ タイヤ:ダンロップDIREZZA ZⅢ(F)225/45R16
(R)245/40R17
■ ホイール:レイズ ボルクレーシングTE37V(F)16×8.5J -6
(R)17×10J -20
■ 内装:ナルディ製ステアリング、レカロ製RS-G(アルカンターラ)、6点式ロールケージ、レースパック製メーター/スマートワイヤー(フルハーネス)

【4】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2018年5月号 vol.016
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 日産 スカイラインHT 2000 GT-X(全6記事)

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【1】【2】から続く

text : DAISUKE ISHIKAWA/石川大輔 photo : MOTOSUKE FUJII(SALUTE)/藤井元輔(サルーテ)

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