80年代前半、最先端スペシャリティカー&テクノロジーの対決、ソアラとレパード!|栄華を極めて一時代を築いた両雄 Vol.1

ソアラとレパード。栄華を極めて一時代を築いた両雄の歴史をひもとく。

       
センセーショナルなデビューを果たしたソアラと日産が技術の粋を尽くして開発したレパード。
両車は互いを強く意識するとともに高めあい、80年代の10年間をともに駆け抜けていった。
しかし両雄は最終的に別の道を選んだのだった。

【栄華を極めて一時代を築いた両雄 Vol.1】

 排ガス対策に一応のケリを付けた日本の自動車メーカーは、1980年代になると反撃に転じた。それまでの鬱憤を晴らすようにエンジニアと経営陣は再びパワー競争に乗り出し、新しいジャンルにも興味を示すようになる。革新的なテクノロジーやアイデアを採用することにも積極的になった。
 日産は1979年にブルーバードをモデルチェンジした。この910ブルーバードでは6気筒エンジンを整理し、4気筒エンジン搭載車だけでシリーズを構成している。その抜けた穴に、日産はプレミアム性の強いスペシャリティーカーを送り込む計画を立て、実行に移した。1980年9月、新ブランドのスペシャリティーカーは「レパード」と名付けられ、正式デビューを飾る。合わせて、チェリー店向けに兄弟車のレパードTR‐X(トライエックス)も送り込んだ。

 F30レパードは、デザインもメカニズムも革新的だった。2ドアハードトップだけでなく4ドアハードトップを設定し、時代に先駆けてエアロダイナミクスを極めることにも力を注いだ。インテリアも贅を尽くした造りだったから、日産の期待度の高さが分かる。今につながるマルチメーターやドライブコンピューターなどを採用しているのも特筆すべきポイント。日産が先鞭をつけ、クリーンでパワフル、しかも無過給時に燃費を悪化させない直列6気筒SOHCターボのL20ET型は1981年に追加された。また、ラック&ピニオン式ステアリングや4輪独立懸架のサスペンション、オートレベライザーなど新装備も満載。F30はプレステージ・スペシャリティーカーという新たな世界の扉を開いたのだ。

 当然だが、すぐに追従するものが出てくる。レパートが発売された直後に開催された大阪モーターショーで、トヨタはEX‐8を参考出品した。ウエッジシェイプの流麗な2ドアクーペで、フードの中には新設計の2・8L直列6気筒DOHCエンジンを収めている。翌1981年2月、正式車名をソアラと命名して発売。2・8GTは当時の日本車として最高のパフォーマンスを発揮しただけでなく、インテリアも先進的だ。日本初のデジタル表示のエレクトロニックディスプレイメーターを採用し、オートエアコンもタッチパネル式のマイコン制御だ。先進性と未来感覚を強烈にアピールし、エンジンを上質な6気筒だけに限定したソアラは、高額な販売価格にもかかわらず瞬く間に人気モデルに。それまで2Lを超える普通車は販売が伸び悩んでいたが、その常識を覆した。

 ソアラの好調に刺激を受け、マツダはコスモをモデルチェンジ。リトラクタブル・ヘッドライトを採用し、ロータリーエンジンもパワフルだ。また、三菱も1982年春にスタリオンを送り出す。こちらはターボが主役だが、4気筒SOHCターボである。両車とも上質感はソアラに遠く及ばず、その牙城を崩すことはできなかった。

>>【画像13枚】センセーショナルなデビューを果たしたソアラなど



F30 それまでの国産車にはなかった「アッパーミドルクラスのパーソナルカー」というコンセプトのもと開発された初代レパード。ボディは2ドアと4ドアのハードトップを用意し、異なる販売店で扱う「TR-X(トライエックス)」も設定。時代を先取りしたデザインと、先進の装備が魅力だった。





Z10 1980年の大阪国際モーターショーに「EX-8」の名で参考出品され、翌年にデビュー。高級パーソナルクーペにふさわしいエレガントなスタイリングで、後に大ヒットとなる「スーパーホワイト」の外板色を初採用。エンジンは、トヨタ自慢のツインカムユニットでレパードに差をつけた。




F31 6年ぶりにフルモデルチェンジを受けた2代目レパードは、2ドア一本に絞り、ソアラとの真っ向勝負を選んだ。そして初代同様、先進装備や最先端技術が特徴で、最上級グレードには日本初4カム24バルブの3LV型6気筒を搭載。後期ではツインカムターボも用意された。






Z20 初代の大ヒットを受けて1986年1月に登場。スタイリングはより洗練され、中身は大幅に進化。足回りには4輪ダブルウイッシュボーンをおごり、エンジンは3Lターボや2Lツインターボを搭載。また、スエード調素材を使った「グランベールインテリア」など、贅を尽くした装備も話題だった。


【2】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2015年 07月号 vol.30
(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

栄華を極めて一時代を築いた両雄(全2記事)

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明

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