「三菱の出物があるんだけど」って電話で相談してきたんだ。「とにかく買っておけ!」|三菱車の世界での足跡2|ルーツが同じ仲間だからこそ、分かり合える趣味の世界 Vol.4

1981年式三菱ランサーEX 1800 GSRターボ。いかにも速そうな名前ではないか。「ターボインタークーラー」と裏文字で示されたエアダムが、前を行くクルマのルームミラーに映る姿を想像するとすごくカッコいい! この前期型の個体は外見を後期型へ変更してあった。2代目ランサーではスリーダイヤは影を潜め「MMC」のエンブレムをつけていた。

       
アメリカには熱心なニッポン旧車の愛好家がいることは、この連載を通じてお伝えしてきた。やはりニッサン、トヨタ、ホンダのファンがアメリカでは多いのだが、今回は三菱車を大切に乗り続けているオーナーと、その仲間を紹介する。2人は、ルーツが同じであるという強い絆でも結ばれているのだ。 

【ルーツが同じ仲間だからこそ、分かり合える趣味の世界 Vol.4】

【3】から続く

 自動車産業の大きさというのは日本自身のことを思い出してみるとよくわかる。戦後の日本占領にあまりに費用がかかり過ぎたため、「自分で稼ぐように」とマッカーサー元帥が当時の日本に自動車を造らせることにした。すると日本は、ヨーロッパのクルマを手本にしてどんどん自分でクルマを造ってしまい、あっという間に豊かな国になったのだった(当時の様子は本誌VOL168からの連載「あの時代、あのクルマ」に詳しく書かれている)。

 アジアに登場した自動車先進国日本の成功を、他のアジア諸国は追おうとした。工業化を目指した東南アジアの5カ国がASEANを結成したのが1967年。フィリピンはその先陣を切って1972年に乗用車国産化計画を発表し、それまでのノックダウン生産からより高度な完全国産化に向けて動き出した。この計画では、アメリカのGMとフォード、デルタ(1963年からトヨタがノックダウン輸出をしていた)、カルコ(三菱と米クライスラーの合弁)、DMP(独フォルクスワーゲン系)の5社に乗用車組み立てが許可され、同時に主要部品の国産化が義務付けられた。

 70年代を通じて自動車販売は拡大したものの、年間3万台程度の小さな規模だった。欧米メーカーのシェアは常に低く、さらに80年代の政治不安で撤退が続き、ついにはトヨタまでもが撤退を決めた。デルタは操業停止に追い込まれた(1983年)。

>>【画像22枚】裏庭にある、日本旧車が9台収まる巨大なガレージや、ガレージに収まる、三菱ランサー1600 GSR(1973年式)、TE27系レビン(1973年式)とトレノ(1972年式)など

 残された自動車メーカーは三菱と日産(1982年に進出)のみ。トヨタが1988年に業務を再開した中にあって、三菱のみが途切れることなく操業を続け、現在の「三菱モーターズ・フィリピン」につながっている。

 排ガスデータ不正問題に揺れる三菱からは今年2月、ランサーの次期モデル開発中止が伝えられた。信頼回復に向けて日産とチームを組む道を選ぶ中で「三菱ブランドを維持する」としているが、もしかすると我々は、時代のうねりの中で日本のクルマ文化の一部が消えていきかねない瞬間を目撃しているのかもしれない。1970年に自動車部門の独立を果たした三菱自動車。往年の勢いを取り戻すことを願いたい。



鬼に金棒といった観のあるターボが、G62B型シリウスエンジンから135psをひねり出した。エンジンルームのプレートにはエンジン形式の脇に「過給器付」と示されていた。「バキューム系統がリークを起こしたときには、Y字形の金属パーツを探すのが大変だった」とコンスタンティーノさんが説明。その他にはトラブルはないそうだ。




2代目からGSRは4ドアセダンベースとなった。コックピットは車両外観を映すかのように直線的なデザイン。シートはラグジュアリー感を出しつつもサイドにサポートを加えていた。シートにかすかに浮かびあがる「ターボ」の文字が気に入っていると、コンスタンティーノさんは言った。





2代目からGSRは4ドアセダンベースとなった。コックピットは車両外観を映すかのように直線的なデザイン。シートはラグジュアリー感を出しつつもサイドにサポートを加えていた。シートにかすかに浮かびあがる「ターボ」の文字が気に入っていると、コンスタンティーノさんは言った。



【5】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2017年2月号 vol.179(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

ルーツが同じ仲間だからこそ、分かり合える趣味の世界(全5記事)

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【1】【2】【3】から続く

text & photo:HISASHI MASUI/増井久志

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