30年近い時間を経てカリフォルニア州で再び登録されたZ。片山豊さんのマーケティングの鋭さにより、今もつづくスポーツカーとしてのZカーがある|1975年式 ダットサン 280Z Vol.3

オリジナルはステアリングとシフトノブの色が異なる。そこがいいのだという。ステアリングは木に模した樹脂製、シフトノブは木製。「ローマイレージ!」と叫ぶブウさんが指差した先のオドメーターは4万5153マイルを示していた。

       
手に入れにくいからこそ、手に入れたい……この気持ちは世界共通なのかもしれない。クルマ好きの日本人の一部が左ハンドルの輸入車に乗りたいと思うのと同じように、アメリカのニッポン旧車好きの中ではJDM(日本国内仕様)にこだわる人もけっこう見かける。今回取材したオーナーも「オリジナル」と「ローマイレッジ」にこだわりがあるようで、自分好みのS30Zをコレクションしていた。

【1975年式 ダットサン 280Z Vol.3】

【2】から続く

 Zカーがスポーツカーとして今日まで続くコンセプトを携え、かつアメリカ市場の好みが存分に盛り込まれて世に送り出されたことは、ミスターKこと片山豊さんのマーケティングの鋭さとみずからの尽力の賜物である。現在では歴史の研究も進み、その過程はかなりの部分が一般のファンにも明らかになっている。

 先代フェアレディがブリティッシュライトウェイトを手本としたロードスターであったため、次期モデルもコンセプトを引き継ぐ方向で検討されていた。そこへ米国日産の社長だった片山さんが持ち込んだ要望は、アメリカ好みの大きめのエンジンを使用した「ジャガーEタイプのようなクルマだった」と本人が述懐している。最終的にクローズドボディのクーペとなったフェアレディZは、そのスタイルに恥じない立派なスポーツカーだった。ドアヒンジがAピラーより前方に配置されていることなど、デザインにイギリス車的な流れをかいま見ることができる。


>>【画像14枚】左側はチョーク、右側はスロットルレバー。ごく初期のS30Zのみに装備されていたシフトレバーの手前に並んだ2つのレバーなど




残されていたナンバープレートはカリフォルニア州のもの。貼ってあった登録ステッカーが1988年のものだったことから、これが最後の登録年だと分かった。カリフォルニアでこの個体を購入したファーストオーナーがオハイオ州へ引っ越した際に、なぜかオハイオ州では一切登録をしなかった。ブウさんが引き取ったことによって、なんと30年近い時間を経てカリフォルニア州で再び登録されたわけだ。その証となる2017年の緑色の登録ステッカーが誇らしげに見えた。オリジナルの青色ナンバープレートが保管されていたことも幸い。「これで細かいところを整備して、ようやく走らせてやることができそうです」とブウさんはうれしそうだった。



初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 10月号 Vol.177(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 ダットサン 280Z(全6記事)

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【1】【2】から続く

text & PHOTO:HISASHI MASUI/増井久志

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