心はいつもJDMのフェアレディZに向いている。オリジナル度の高さにこだわるZファン|1975年式 ダットサン 280Z Vol.1

S30Zをこよなく愛すハン・ブウさん。所有する1台1台のZについて熱心に語る、熱きZファンだ。「オリジナル、オリジナル!」と強調する話し方が印象的。日本も大好きで「昨年夏に日本を訪れたとき、『了解、それでOKです』の意味で使ったサムズアップ(「いいね!」の仕草)が全然通じなかった」と自らのエピソードを紹介してくれた。

       
手に入れにくいからこそ、手に入れたい……この気持ちは世界共通なのかもしれない。クルマ好きの日本人の一部が左ハンドルの輸入車に乗りたいと思うのと同じように、アメリカのニッポン旧車好きの中ではJDM(日本国内仕様)にこだわる人もけっこう見かける。今回取材したオーナーも「オリジナル」と「ローマイレッジ」にこだわりがあるようで、自分好みのS30Zをコレクションしていた。

【1975年式 ダットサン 280Z Vol.1】

 日本は右ハンドルで左側通行。かつてダットサンが手本としたイギリスもそれは同じだった。やがて1970年代になりスーパーカーブームが到来すると、イタリアやドイツやアメリカから日本へやってきたクルマは左ハンドルばかり。見るほうも乗るほうも、左ハンドルというだけで、それはもう、とってもカッコ良かったのだ。
 されば逆もまた真なり。日本旧車人気がどんどん高まるアメリカでは「オリジナル」「JDM(日本国内仕様)」という言葉とともに右ハンドルの日本旧車が羨望のまなざしにさらされる。

 そもそもアメリカには右ハンドル車が少ない。日本は積極的に左ハンドル車を輸出したし、それ以前に輸入されていたイギリス車は、ヨーロッパの地で左ハンドル車を作ることに慣れていた。だから本当に古い戦前のイギリス車が右ハンドルで走っているか、でなければ今日アメリカで見かけるのは、配達に便利なようすべて右ハンドルになっている郵便配達車だけ。

 だからこそ、希少な右ハンドルJDMにあこがれてしまう。そんな1人、カリフォルニアに住むハン・ブウさんはダットサンファン。中でもS30がダントツで好きで、オリジナル中のオリジナルにこだわるがゆえ、心はいつもJDMのフェアレディZに向いている。


>>【画像14枚】175HR14、ブリヂストン、MADE IN JAPANの文字などがはっきりと確認でき、もしかすると新車時そのものだったのかもしれないタイヤなど



ブウさんの自宅は、カリフォルニア州サンノゼ市南部の丘陵地に造成された新興住宅地にある。この地域は年間を通じて晴天の日が圧倒的に多く、そのうえ日差しが強い。普段はカバーをかけて車両を保管しているものの、弟に買ってあげたという1975年式280Z(左)はボディの傷みが進行していた。ブウさんは現在、この家からクルマで数分の場所にあるアパートに住んでいるそうだ。


【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 10月号 Vol.177(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 ダットサン 280Z(全6記事)

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text & PHOTO:HISASHI MASUI/増井久志

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