日本の総人口はついに1億人の大台へ。サニー対カローラの競争|1966年はヴィンテージイヤー Vol.2

サラリーマンを狙って開発された、新しいコンセプトのコンパクト・ファミリーカー、ダットサンサニー1000など。

       
【1966年はヴィンテージイヤー Vol.2】

【1】から続く

 60年代後半、日本の産業と文化は高度成長政策を背景に急成長。この流れに乗ってヴィンテージイヤーとなったのが西暦1966年だ。昭和の年号では41年になる。日本の総人口はついに1億人の大台を超えた。ひのえうまの年だったので出生数は20世紀最低の136万人にとどまっている。が、出生率は上回ったため、初めて総人口が1億人を突破した。

 人々の年収は増え、マイカーも夢ではなくなっている。日本のマイカー元年と位置づけられているのが、この66年だ。20世紀の名車と呼ばれるクルマが数多く誕生し、バリエーションも大きく広がった。高性能に対する追求を背景に、レースなどのモータースポーツも盛んになっている。
 1965年、大学を卒業して勤めるようになったフレッシュなサラリーマンの初任給は、2万5000円に達し、翌1966年には2万7000円に迫っている。サラリーマンの平均賃金は4万4000円台に乗り、年収が100万円を超える人も徐々に増えてきた。

 このくらい年収があれば中古車ではなく新車にも手が届く。こういったサラリーマンを狙って開発された、新しいコンセプトのコンパクト・ファミリーカーがダットサンサニー1000だ。850万通にも及ぶ応募ハガキの中から2月9日に車名を発表し、4月に発売を開始している。


>>【画像25枚】ブルーバードの下のポジション。クラス水準を超えた実力を誇り、出だし好調だったが、カローラの登場によって二番手に甘んじたサニー1000など


 ダイヤモンドカットと呼ばれる直線基調のクリーンな2ドアセダンで、エンジンは988ccのA10型直列4気筒OHVだ。当時としてはクラス最高のスペックを身につけていた。しかも625kgの軽量ボディだったから、軽快な走りを見せつけている。発売されるや、サニーは好調な販売を記録し、兄貴分のブルーバードを脅かした。トータル性能の高いサニーは、またたく間に日本を代表するファミリーカーへとのし上がるのである。

 サニーの発売から1カ月後の5月、中島飛行機を母体とする富士重工業は前輪駆動の上質なファミリーカーを発売した。アルミ合金製の水平対向4気筒エンジンとデュアルラジエーター、凝った4輪独立懸架など、斬新なメカニズムが話題をまいたスバル1000だ。最初のサニーが2ドアセダンであるのに対し、スバル1000は1クラス上と感じさせる4ドアセダンだった。キャビンだけでなくトランクも広い。

 この2車を追うように、11月にはトヨタがカローラ1100を発売した。カローラは、パブリカとコロナの間のポジションに位置する新世代のコンパクト・ファミリーカーだ。合理的な設計に徹したために販売が伸び悩んだパブリカの失敗を糧にして開発され、すべての項目において高得点の「80点+α主義」を貫いている。

 注目のパワーユニットは1077ccの直列4気筒OHVだ。サニーと比べると税金面では不利だったが、「プラス100ccの余裕」のキャッチコピーが成功し、優位に立った。これ以降、カローラとサニーはベストセラーの座をかけて激烈な販売合戦を繰り広げている。これがCS戦争だ。

 ファミリア800で登録車の市場を切り開いた東洋工業(現・マツダ)は、1966年8月に美しいイタリアンデザインの6人乗り4ドアセダン、ルーチェ1500を発売した。エンジンは5ベアリング支持のクランクシャフトや半球形燃焼室などを採用したアルミ合金製の直列4気筒SOHCだ。合わせガラスやアンチバーストドアロックなど、安全装備も世界レベルにあった。

 また、ホンダは年初に精緻な直列4気筒DOHCエンジンを積むS600を発展させたS800を発売。コンバーチブルだけでなく粋な2ドアクーペも仲間に加えた。三菱もカローラより先にコルト1000をコルト1100に進化させ、ファストバックのコルト800は4サイクルエンジンを積むコルト1000Fへと発展する。



マツダが満を持して投入した上級ファミリーカーが、ルーチェ1500だ。時代の先をいくSOHCエンジンを積む、6人乗りの上質な4ドアセダンだった。




ミニカからの買い替えを狙った2サイクル3気筒のコルト800は、販売が伸び悩んだ。そこでコルト1000のエンジンを積んだコルト1000Fを投入する。



【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年12月号 Vol.178(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1966年はヴィンテージイヤー(全3記事)

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【1】から続く

text:HIDEAKI KATAOKA/片岡英明

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