CVCCエンジンの市販第1号となったEF型や4気筒のL型など。国産車の主流、直列4気筒エンジン|心おどる直列4気筒

プリンスの流れをくむG型エンジンや、OHVにこだわってエンジンを開発したトヨタの3代目RT40トヨペット・コロナに搭載された2R型エンジンなど。

       
レシプロエンジンには直列、V型、水平対向などがあり、気筒数も単気筒から6気筒、
さらにそれ以上とバリエーションも豊富だ。しかし乗用車の主流といえば、
やはり直列4気筒になる。各社の国産旧車に搭載されていたエンジンをまとめてみた。

【心おどる直列4気筒】

原形があって、さらに改良される


 日産を、そして1960年代の日本を代表する直列4気筒が、L13型とL16型に始まるL型系列のSOHCエンジンだ。1967年8月、510ブルーバードに搭載され、お目見えした。ハイウエー時代を見据えたSOHCエンジンで、ヘッド部分は軽量なアルミ、クランクシャフトは静粛性と耐久性の向上に効果が大きい5ベアリング支持だ。モジュール化しやすく、高効率で生産性も優れていた。L型系列の直列4気筒エンジンは、SOHC時代へと導いた立役者と言ってよいだろう。

 初代セドリックに積まれて1960年に登場したのがG型直列4気筒OHVである。これはオースチン社との提携を通して学んだエンジン技術に、日産の独自技術を加えたエンジンだ。オースチンの1H型エンジンの事実上の後継機である。当時の小型車の上限に合わせて設計され、排気量は1488ccだ。310ブルーバードのC型、E型と同様にオーバースクエア(ショートストローク)設計で、5000rpmまで軽やかに回った。フェアレディ1500が積むのは、バルブスプリングやメタルなどを強化した進化型のG型だ。

 同じ時期、小型車の最大排気量が2000ccに拡大されたのをとらえて、セドリック1900を発売した。エンジンは優れた耐久性に加え、経済性も高い1883cc、ターンフローのH型直列4気筒OHVだ。実用域のトルクが太く、扱いやすいため、タクシーや商用車に積まれ、フォークリフト用エンジンとしても珍重された。


>>>【画像4枚】日産を代表するパワープラント、L型エンジンのSOHC4気筒版など


 H型は40年にわたって第一線で活躍した隠れた名作でもある。1965年に登場した2代目の130セドリックには、ストロークを延ばした1973ccのH20型エンジンが搭載された。ちなみにスカイライン2000RSに搭載されたFJ20型直列4気筒DOHC4バルブも、原形はH20型エンジンだ。

 日産に吸収されたプリンス自動車は戦前の航空機メーカーを母体にしている。だから技術レベルは高く、エンジンも高性能だった。その筆頭は、1967年夏にスカイライン1500デラックスに積まれて登場した第2世代のG型エンジンである。1483ccのG15型直列4気筒SOHCは、クロスフロー配置や5ベアリング支持を採用したオーバースクエアの4気筒で、性能的にもクラスレベルを大きく超えていた。本家筋であるL型エンジンにとっても手ごわいライバルとなっている。

 トヨタは早い時期からサイドバルブではなくOHV方式にこだわった。1953年9月に発表されたトヨペットスーパーの心臓は、新開発のR型直列4気筒OHVだ。ボア77mm、ストローク78mmで、排気量は1453ccだった。当時のトヨタのエンジニアはスクエアに近い設計を好む傾向が強いようだ。

 クラウンにも積まれたR型エンジンは、1964年に登場した3代目のRT40コロナ1500ではボアを1mm広げた1490ccの2R型に進化している。1965年には1587ccの4R型も誕生。また、トヨタ1600GTが積むDOHCヘッド架装の9R型エンジンは、量産DOHCの先駆けにもなった。排気量を拡大し、SOHC化した7R型や8R型も人気となっている。マークIIGSSに積まれた8R‐G型と18R‐G型DOHCもR型の仲間だ。

 T型直列4気筒OHVも素性のいい名作である。クロスフロー方式を採用し、高回転まで気持ちよく回った。最初の作品は1407ccのT型と1588ccの2T型だ。2T型をDOHC化した2T‐G型は、名機の称号を与えられるほどの実力派だった。80年代には排気量を1770ccに拡大し、過給機で武装した3T‐GTEU型DOHCターボも登場する。モータースポーツの世界でも数々の伝説を生んだ。

 K型系列の直列4気筒OHVも傑作である。1966年秋、カローラ1100に初めて搭載され、高評価を獲得した。1077ccのK型は、1969年に993ccの2K型と1166ccの3K型を加えている。70年代は排ガス対策に励み、1978年にKP61スターレットに1290ccの4K型エンジンを投入。K型エンジンの魅力を再確認させた。

 商用車のライトエースやタウンエース、提携しているダイハツのシャルマンなどにも搭載され、好評を博している。また、排気量を1496ccとした5K型エンジンはライトエースのワゴン仕様やデリボーイに搭載された。フォークリフトにも使われている。驚いたことに今も現役のエンジンだ。

独自の機構を組み込んで進化


 ホンダは1963年8月に発売した軽4輪トラックのT360に、総アルミ製のAS250E型直列4気筒DOHCを搭載して人々の度肝を抜いた。キャブを4基装着し、8500rpmまで使えたのである。排気量を531ccに拡大したのが、S500のAS280E型DOHCだ。これに続く606ccのAS285E型と791ccのAS800E型DOHCも、当時の量産エンジンとしては群を抜く高性能だった。

 70年代、ホンダは環境に優しいエンジンに目を向けるようになる。最初の作品は、1973年12月に送り出したCVCCエンジンだ。副燃焼室を備えた後処理なしの直列4気筒SOHCで、1488ccのED型はシビックに搭載された。2代目シビックのときにEM型へと進化。アコードには1599ccのEF型と1750ccのEK型エンジンを搭載する。そして80年代に熟成度を高めたCVCC‐Ⅱへと進化した。

 三菱初の直列4気筒SOHCとDOHCが4G系エンジンだ。ロングストローク設計だが、高回転まで気持ちよく回った。1597ccの4G32型エンジンが有名だが、この血を引く199
5ccの4G52型や2555ccの4G54型エンジンも傑作である。ポルシェに技術供与したバランサーシャフトの採用も話題を呼んだ。また、ミラージュにはG12型と呼ぶ1410ccのSOHCエンジンを開発し、スーパーシフトの4速ATや3速ATと組み合わせた。最大の特徴は、今につながるFF車用の横置きレイアウトだったことだ。

 マツダはロータリーのイメージが強いが、レシプロの直列4気筒エンジンにも優れた作品が多い。軽自動車の初代キャロルには進歩的な設計のDA型直列4気筒OHVを搭載した。ファミリアも初代から「白いエンジン」と呼ぶアルミ合金製の軽量エンジンを積んでいる。これはハイカムシャフト、5ベアリング支持のクランクシャフト、クロスフローの半球形燃焼室など、技術レベルが高かった。また、ファミリアクーペとルーチェ1500が積むのは、4気筒初のSOHCエンジンだ。真面目な設計哲学が光る。

 今はトラックとバスの専門メーカーとして知られているいすゞの乗用車はヨーロッパ車の味わいに近い。1963年6月に誕生したベレットの心臓は、G150系の直列4気筒OHVだ。ベレット1600GTには排気量を1579ccにスケールアップしたG160型エンジンを積んでいる。

 70年代を前にSOHC化を断行し、117クーペとベレット1600GTタイプRにはDOHCのG161W型エンジンを搭載した。最先端の電子制御燃料噴射装置にも挑んだ。1817ccのG180型や1947ccのG200型も誕生する。80年代にはFF車用の4気筒エンジンや個性派のディーゼルも送り出すなど、いすゞの4気筒エンジンには注目すべきことが多い。



日産を代表するパワープラント、SOHCのL型エンジン。4気筒と6気筒があるが、写真は510ブルーバード1600 SSSに搭載されている、L16型SUツインキャブ仕様。





OHVにこだわってエンジンを開発したトヨタ。3代目RT40トヨペット・コロナに搭載された2R型エンジンも、後のT型につながる量産パワープラントとしては名機に数えられる。





プリンスの流れをくむG型エンジンも4気筒と6気筒がある。日産との合併後もスカイラインやローレルの一部グレードに搭載された。写真は4気筒SOHCのG16型。




シビック4ドアに搭載されて、CVCCエンジンの市販第1号となったEF型。



初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 6月号 Vol.175(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


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text:HIDEAKI KATAOKA/片岡英明

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