水冷エンジン搭載車と同じボディに、なぜか残された空冷エンジン|1970年式 トヨタ パブリカ バン 800 デラックス

シンプルで実用性の高いインストルメントパネル周り。センタートンネルの左側にある汎用の扇風機は、クーラーのない旧車ではマストアイテム。

       
昔は各自動車メーカーから、多くの乗用車型商用バンがラインナップされていた。
普段は乗用車のように乗れ、いざとなれば多くの荷物を積むことができる働き者たち。
今あらためて彼らの姿を見ると、懐かしい昭和の風景を思い出さずにいられない。

【1970年式 トヨタ パブリカ バン 800 デラックス Vol.1】

 日本のモータリゼーションにあって、大衆車というカテゴリーの草分けとなったのがトヨタパブリカだった。 1961年6月に0.7L空冷水平対向2気筒OHVのU型エンジンを搭載して初代UP10パブリカがデビュー。1966年4月にマイナーチェンジを行い、エンジン排気量を0.8Lにアップし、フロントとリアのデザインを変えてUP20として登場した。パブリカの基本はセダンだが、同じシャシーを使ってコンバーチブルやディタッチャブルトップなどの派生モデルを展開。さらに2U型空冷水平対向エンジンは、スポーツカーのトヨタスポーツ800、ワンボックスバン&トラックのミニエースなど、幅広い車種に搭載された。シンプルかつユニークな機構を持つ2U型エンジンは、トヨタにとって屋台骨を支える空冷エンジンだった。

 一方、自動車のエンジンは、騒音が少なく安定した冷却が行える水冷エンジンが主流となっていった。それは排気量が大きくなるほど水冷が有利となり、パブリカも1969年4月のフルモデルチェンジで2代目P30系となった時に、主力は1Lの水冷直列4気筒OHVの2K型にシフトされた。しかし、新型ボディに2U型空冷水平対向2気筒エンジンを搭載するモデルも、なぜか残されたのである。

>>【画像21枚】カタログでは「からだになじむバケットタイプ」と記されており、NEWパブリカ独特の「99パーセンタル」設計(100人中99人が理想の運転姿勢がとれる)となっている通気性発泡レザーのシートなど




バンの常識とも言える、リアシートをすべて折りたたんだ状態。後席の座面を持ち上げ、背もたれを前に倒すことで、フラットな荷室が生まれる。





後席を生かした時の荷室。最大積載量は300kgとなっている。





フラットな荷室を実現するため、スペアタイヤは車外に吊り下げられている。



空冷エンジン搭載の最後のバン。


1970年式 トヨタ パブリカ バン 800 デラックス(UP36V
SPECIFICATIONS 諸元
全長 3675mm
全幅 1460mm
全高 1395mm
ホイールベース 2160mm
トレッド前/後 1235 / 1200mm
荷物室長 1300mm(2名乗車時)、740mm(5名乗車時)
荷物室幅 1220mm
荷物室高 855mm
車両重量 675kg
乗車定員 5名
最大積載量 300kg
最高速度 115km / h
登坂能力sinθ 0.307
最小回転半径 4.4m
エンジン型式 2U-C型
エンジン種類 空冷水平対向2気筒OHV
総排気量 790cc
ボア×ストローク 83×73mm
圧縮比 8.2:1
最高出力 40ps / 5000rpm
最大トルク 6.4kg-m / 3000rpm
変速機 前進4段 / 後退 1段 オールシンクロメッシュ
変速比 1速 4.200 / 2速 2.400 / 3速 1.684 / 4速 1.125 / 後退 4.333
最終減速比 3.890
燃料タンク容量 30L
ステアリング型式 ウォーム・セクタローラ式
サスペンション前/後 独立懸架ストラット式 / 半楕円板バネ式
ブレーキ 前後ともドラム
タイヤ 前後とも5.00-12-4PR U.L.T.
発売当時価格 39.5万円

【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 10月号 Vol.177(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1970年式 トヨタ パブリカ バン 800 デラックス(全3記事)

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photo:ISAO YATSUI/谷井 功

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