総アルミ製の高回転型DOHCエンジンを搭載し「高速時代のライトバン」を謳う|1967年式 ホンダ LM800

シンプルなダッシュボード。このクルマはコラムシフトだが、フロアシフトのタイプも存在する。時計は当時の雰囲気に合わせてオーナーが取り付けたもの。

       
昔は各自動車メーカーから、多くの乗用車型商用バンがラインナップされていた。
普段は乗用車のように乗れ、いざとなれば多くの荷物を積むことができる働き者たち。
今あらためて彼らの姿を見ると、懐かしい昭和の風景を思い出さずにいられない。

【1967年式 ホンダ LM800 Vol.2】

【1】から続く

 1965年登場のホンダL700/P700。このときホンダが四輪車用としてあったエンジンは、S360を始祖とする直列4気筒のDOHCしかなく、L700にもS600用のAS285E型(排気量606cc)を元にしたAS700E型(687cc)を採用。スポーツが4連CVキャブを装備したのに対して、シングルキャブという違いはあるものの、総アルミ製の高回転型エンジンを搭載したぜいたくな商用バンが誕生した。当時のカタログには「高速時代のライトバン」の文字があり、運動性能の高さをアピールしている。

 Lシリーズには2つのグレードがあり、スタンダードはL700、その豪華版はLM700となる。LM700の発売当時価格は52万5000円。これは当時の同クラス商用車に比べ非常に高価であり、セールス面で苦戦したことだろう。ちなみにスポーツカーのS600は50万9000円だった。

 他社のライバル車たちが乗用車の基本設計を流用したのに対し、専用設計のボディに、S600のエンジンをボアアップして使わざるを得なかったL700はコストがかかりすぎた。乗用型のN800も試作されたが、これはショーモデルのみで終わっている。

 1966年にはエンジンをS800と共通型式であるAS800E(791cc)に変更し、車名もL800となる。この豪華版であるLM800の価格は43万8000円であり、700に対して大幅の値下げとなった。

 L800では、S800とエンジン本体、ミッション、デフ(リジッドタイプ)が共通化されており、これはコスト削減を意識したものと考えられる。


>>【画像25枚】基本的にS800のAS800Eと同じだが、デスビの上にバキューム式の進角装置が付くのがLの特徴となっているエンジンなど



最高速160km/hまで刻まれたスピードメーターと水温計、燃料計のみのシンプルなメーター類。





フロントシートはセパレートタイプ。ほかにベンチシートの設定もあった。ちなみにベンチタイプは天井に頭が付きそうなほど座面が高い。






ボディは2ドアの設定のみ。このボディカラーはサックスブルーメタリック。



1967年式 ホンダ LM800(AL800)
SPECIFICATIONS 諸元
全長 3690mm
全幅 1485mm
全高 1400mm
ホイールベース 2195mm
トレッド前/後 1200 / 1190mm
最低地上高 165mm
客室荷台内長 1235mm
客室荷台内幅 1190mm
客室荷台内高 845mm
車両重量 800kg
乗車定員 2(5)名
最大積載量 400(ー)kg
最高速度 130km / h
最小回転半径 4.0m
登坂能力sinθ 0.383
エンジン型式 A800E型
エンジン種類 水冷直列4気筒DOHC
排気量 791cc
ボア×ストローク 60.0×70.0mm
圧縮比 9.0:1
最高出力 58ps / 8000rpm
最大トルク 6.3kg・m / 4500rpm
変速機 コラム式前進4段後退 1段フルシンクロ
ステアリング形式 ボールナット
サスペンション前/後 マクファーソン型独立懸架 / リジッド・リーフ
ブレーキ前後とも ドラム
タイヤ前/後 5.00-12 4PR / 5.00-12 6PR
発売当時価格 43.8万円

【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 10月号 Vol.177(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1967年式 ホンダ LM800(全3記事)

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【1】から続く

photo:SATOSHI KAMIMURA/神村 聖

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