プライベーターが組んだ370psのZ。その心臓部が取り外され、新たなボディに搭載されることに |1975年式 日産 フェアレディZ

フルレストア&ボディ補強を施したS30Z。

       
古くから「物に魂を込める」という表現があるように、本来命のない物にでも思いを込めれば、それは単なる物以上の特別な何かになると信じられてきた。このZに積まれたL28型改3114ccは、あるプライベーターが10年以上の歳月をかけて組んだインジェクション仕様のモンスターだ。そこに費やした時間と思いを測れば、もうこれはただのエンジンと呼ぶべきではないはずだ。そして今、そのエンジンが別のボディへと移植された。新たなる身体を得て、魂入りのエンジンがふたたび吠える!  

【1975年式 日産 フェアレディZ Vol.1 〜2017〜】

 ベースカーの車名や年式は変われど、チューニング旧車のエンジンとなると、その大多数は日産の名機・L型に集約される。それほどまでに浸透しているL型だけあって、忘れられないモディファイドエンジンというのも存在するのだが、ここで取り上げたS30Zが積むL28型改3.1Lも、そんな名作エンジンの1つといえるだろう。

 実はこのエンジン、本誌006に一度登場した過去を持つ。そのときは「プライベーターが組んだ370㎰のインジェクション仕様Z」というキャッチフレーズで脚光を浴びていた。その後、その心臓部が取り外され、新たなS30Zのボディに搭載されることになった。

「昔からクルマが好きで、エンジンの製作者である佐藤君とは知り合いでした。もちろん、このエンジンが積まれていたS30Zも知っていて、一時期、ハコスカのGT‐Rが欲しくて一緒に見て回ったりしました。そんな彼がもう1台S30Zを持っていて、完成まで時間がかかってもよければ譲ってくれるという話になり、なんだかんだで3年近く待ちました。その間に佐藤君が自分のZに別のエンジンを載せることになり、このエンジンを私のZに移植することが決まったんです」と話してくれた、オーナー。


>>【画像38枚】このエンジンが積まれていた前のZでも行われたワイヤータックの技法をここでも踏襲。サイドを貫く補強パイプとともに、美しさこのうえなしのエンジンルームなど






通常はインダクションボックスに隠れて見えない、和光の初期物6-1集合のタコ足。ヒート対策のためにバンテージが巻かれているが、集合部分にはキレイな焼け色が付いている。





アリゾナZカーのアルミオイルパンは、フィンを刻むことで冷却効果を上げ、高強度キャスティングによりブロック剛性アップにも貢献する「使える」製品だ。オイルパンの横には、油温センサーを挿入している。




以前のZはフルチタンのマフラーを装着していたが、今回は音質を変える意味で、花方モータースポーツのφ76.3mmステンレスに変更。



1975年式 日産 フェアレディZ(S30)
Specification 諸元
■エクステリア:パールホワイトオールペイント、フロントスポイラー、エンブレム類スムージング
■エンジン:L28型改3.1L(3114cc、377ps、40kg-m)、N42ブロック、ワイセコDatsun Spirit 特注ピストン(φ89.25mm)、ASW製I断面コンロッド(137.5mm)、クロワー製フルカウンタークランク83mm、ニスモ製メタル、WAKO製75Sカムシャフト、オリジナル形状アルゴンヘッド(360cc±0.3cc)、バルブサイズ(INφ46mm、EXφ38mm)、イスキー製バルブスプリング、チタンバルブリテーナー、ATI製アルミダンパープーリー、アリゾナZカー製オイルパン、RB26型用エンジンマウント&ステー加工、ワイヤータック
■吸排気系:TWM製φ50mmスロットルボディ、サブライブ製ドライカーボン特注インダクションボックス、HPIエアクリーナー、WAKO製6-1タコ足(初期型)、花方モータースポーツ製オールステンレスφ76.3mmSPLマフラー
■点火系:S130Z最終型用ディストリビューター、MSD製プロパワー、テイラー製プラグコード
■制御系:モーテックM84
■冷却系:アリゾナZカー製アルミ3層ラジエーター、HPI製オイルクーラー
■燃料系:1JZ型用インジェクター(燃圧3.5kg)、ATL安全燃料タンク
■駆動系: AP製RB26型用トリプル改ツイン(Assy重量8.8kg)、S15ニスモ製6速ミッション(ミッションメンバー加工)、R33用AT一軸プロペラシャフト、R200デフ(ファイナル3.9、ニスモLSD)、アルフィンデフケース、R31用等速ドライブシャフト
■サスペンション:(F)スーパーオーリンズ車高調(スイフト製コイル10kg/mm)、T3製ロワアーム、ピロテンションロッド、ロールセンターアダプター、ストラットタワー補強(1.2mm厚鉄板)、Z31用ハブ移植 (R)スーパーオーリンズフルタップ車高調(スイフト製コイル9kg/mm)、アリゾナZカー製アルミデフメンバー、T3製ロワアーム、5Hハブボルト打ち直し
■ブレーキ:S15用マスターシリンダー、S15ニスモスペックS用マスターバック (F)ブレンボ製ポルシェ964ターボ用キャリパー(加工bremboロゴ)、GT-R用φ324mmローター (R)ブレンボ製インプレッサGDB用キャリパー/インドラムローターハット
■インテリア: GT仕様ワンオフクロモリロールケージ&各部補強(エンジンルームφ38mm、室内φ50mm)、ナルディ製ステアリング、AIM製MXLデジタルメーター、FRPダッシュボード、レカロ製バケットシート、タカタ製ハーネス、ペダル位置オフセット、ニスモ製シフトノブ、アリアント製X4リチウムバッテリー、UKファイヤーマスター消火器
■タイヤ:ダンロップ ディレッツァZⅡ(F)235/40R17(R)235/40R17
■ホイール: レイズ グラムライツ57エクストリームSPスペック(F)17×9J (R)17×9J

【2】に続く

初出:Nostalgic SPEED 2017年3月号 vol.012(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 日産 フェアレディZ(全4記事)

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text : AKIO SATO/佐藤アキオ photo : RYOTA SATO(PHOTOROOM-SAKKAS)/佐藤亮太(サッカス)

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