独身貴族の旧車ライフにも、いつか終わりがくる。自分のスタイルに合わせて造った510ワゴン 〜2016〜|1972年式 ダットサン 510 ワゴン Vol.1

この1972年式510ワゴンのフロントマスクで特徴的なのは、1969年式のグリルとそこに収まる2灯式に替えられたヘッドランプ。内側ヘッドランプにはスモールランプを兼ねたフロントウィンカーの機能が移植してあった。

       
1台のクルマに乗り続ける美学がある一方、自分のライフスタイルに合わせて、それにふさわしいクルマを選ぶ方法もある。今回のオーナーは後者。家族が増える準備を始めた時に出合った緑色のダットサン510ワゴンは、オーナーの好みのスタイルにモディファイしたことによって、まさに生活に欠かせない存在となったのだ。

【1972年式 ダットサン 510 ワゴン Vol.1】

 すべてがクルマを中心に回っていた独身貴族の旧車ライフにも、いつか終わりがくる。共に過ごすべき家庭のために、自由だったはずの週末の時間が消えていく。でもそれで旧車への情熱が消えたわけじゃない。家族みんなで出かけるのもいいし、たまには息子を乗せてワインディングを走りたい。

 そこで、ワゴンという選択。実用性はピカイチの旧車のチョイスだろう。アメリカ・ユタ州の州都ソルトレイクシティに住むドウェイン・シェイファーさんは、ワゴンの便利さに誘われて日本旧車ファンになったという人だ。

 生まれ育ったカリフォルニアの喧騒に疲れて、23歳だったシェイファーさんは、山あいの街ソルトレイクシティへ移り住んだ。愛車にしていたカリフォルニアテイストの1963年式フォルクスワーゲンを、長男の出産に備えるため思い切って手放す。そして育児に専念をした。ところが、そんな禁欲もわずか1年。再びクルマ遊びをしたくなって、相談したカリフォルニアの旧友が勧めてくれたのがダットサン510ワゴンというクルマ。レアで知名度も低くいい選択かもしれない、とそれまで気にかけたこともなかったクルマに、シェイファーさんは思いを抱いた。


▶▶▶【画像13枚】「ピート・ブロックとジョーン・モートンがこの座席に座ってサインしてくれたんです」と興奮を思い出す様子で説明してれたグローブボックスの記されたサインなど




ボディ上部を覆う黒いビニールレザートップには、張り替えの際にGM車用のパーツを流用。その質感と出来の良さとが相まって、このワゴンの外観を引き締める。シェイファーさん自作のキャンバス製スライド式のサンルーフもよく似合っていた。「想像以上の仕上がりで、雨漏りもなし」だそうだ。


【2】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2016年 2月号 vol.173(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 ダットサン 510 ワゴン(全4記事)

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text & photo:HISASHI MASUI/増井久志 photo support:MILES SCHAFFER/マイルス・シェイファー

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