東洋工業が狙った「ロータリゼーション」の時代。その先兵|1972年式 マツダ コスモスポーツ Vol.2

2ローター・ロータリーの10A型が収まるエンジンルーム。この初期の頃のREは、デストリビューターが2つあるのが特徴となっている。

       
【1972年式 マツダ コスモスポーツ Vol.2】

【1】から続く

 1963年秋、東洋工業は第10回全日本自動車ショーにシングルローターと2ローターのロータリーエンジンを参考出品した。同じ時期、恒次社長はL402Aと名付けられたコスモスポーツのプロトタイプに乗って販売店や取引銀行などを回り、その優秀性を説いている。この時点ではチャターマークは解決されておらず、耐久性と信頼性は乏しかった。しかし日本カーボン社とアルミ含浸の高強度のカーボンシールを開発し、難題をクリアしている。

1967年5月、流麗なフォルムのコスモスポーツは大都市から発売に移された。搭載されているのは、単室容積491ccの2ローター・ロータリーエンジンだ。言うまでもなく、このA型は世界初の2ローター・ロータリーエンジンである。マツダ独自の2プラグ、サイドポート方式を採用し、4バレルキャブを組み合わせた。最高出力はレシプロエンジンの1.6lクラスを凌ぐ110ps/7000rpm、最大トルクは13.3kg‐m/3500rpmだ。前期型のトランスミッションは、フルシンクロの4速MTである。

東洋工業は年代を「ロータリゼーション」の時代と位置づけ、ロータリーエンジン戦略を推し進めた。その先兵となったのがコスモスポーツだ。

▶▶▶【画像20枚】当時国産ではまだ少なかった15インチタイヤや、前期型が丸形で、写真の後期型は長方形となるウインカーのサイドマーカーなど



大径の3本スポーク木製ハンドルは、前後の位置を60mm調整できるテレスコピック・ステアリングコラムを備える。トランスミッションは後期型では5速となる。





ABCペダルはご覧のとおりの配置。左端にはフットレストも付く。





後期型では、独特の千鳥格子のシート座面が標準となる。リクライニング式バケットシートで、3点式シートベルトが装着される。



1972年式 マツダ コスモスポーツ(L10B)
Specification 諸元
全長 4130mm
全幅 1590mm
全高 1165mm
ホイールベース 2350mm
トレッド前 / 後 1260 / 1250mm
最低地上高 125mm
車両重量 960kg
乗車定員 2名
最高速 度 200km / h
登坂能力(tanθ) 0.553
最小回転半径 5.2m
エンジン型式 10A型
エンジン種類水冷 2ローター・ロータリー
総排気量 491cc×2
圧縮比 9.4:1
最高出力 128ps / 7000rpm
最大トルク 14.2kg-m / 5000rpm
変速機 前進5段 / 後退 1段 前進フルシンクロメッシュ
変速比 1速 3.379 / 2速 2.077 / 3速 1.390 / 4速 1.000 / 5速 0.841 / 後退 3.389
最終減速比 4.111
燃料タンク容量 57L
ステアリング形式 ラック&ピニオン
サスペンション 前 / 後独立懸架筒型複動オイルダンパー・コイルバネ / 筒型複動オイルダンパー半楕円形板バネ
ブレーキ前 / 後 ディスク / リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 155HR15ラジアル
発売当時価格 158万円


【3】に続く

初出:Nostalgic Hero 2016年 4月号 vol.174(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 マツダ コスモスポーツ(全3記事)

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【1】から続く

text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明 photo:ISAO YATSUI/谷井 功

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