魔性のターボスーパーカー フェラーリGTSターボ 2

328よりも明らかに手強く魔性を感じさせるフィーリング

 今回紹介するのは、208系の最終進化版であるGTSターボ。一見したところ同時代の328GTSと変わらないようにも映るが、左右後輪の直前には兄貴分512BBのようなNACAスクープが設けられ、その高性能を暗示しているかのようである。  実際に走らせてみると、見た目の印象を裏切らない高性能を実感させる。254psというパワーは、ヨーロッパ仕様の328よりも16ps劣る反面、トルクは33.5kg‐mと、328の31.0kg‐mを上回る数値を示す。

 とはいえ、超フラットトルクが当たり前となった現代のターボ車とは違い、この時代のターボ、しかも生粋のスーパーカーゆえに操縦感覚は明らかに手強い。あらゆるスピード域でも扱いやすい自然吸気の328と比べてしまうと、低速域ではかったるいことこの上ない。ところが、ターボ過給の立ち上がる4000rpm付近からの豪快な加速感やサウンドに「襲われる」感覚は、ハチマル時代最高の伝説たる「F40」をもほうふつとさせる。

 80年代のカーグラフィック誌では、F40の原型となったプロトタイプ、かの「288GTOエヴォルツィオーネ」のサウンドを「悪魔的快音」と評していたが、GTSターボでもその特質は十分に味わうことができる。しかも、簡単な操作で取り外すことのできるデタッチャブルトップをオープンにしてしまえば、青天井のもとで爽快な走りと小気味よいエキゾーストノートが味わえる、稀有な一台なのである。

 公式記録によると6068台が作られたという328GTSはもちろん、F40の1311台よりも遥かに少ない台数しか作られなかったGTSターボ。さらに日本への正規輸入が行われなかった結果として、国内では極めて希少となった伝説的スーパーカーに触れ、その特質を堪能できたことは、フェラーリの総代理店で社会人としてのスタートを切り、328とともにフェラーリの運転を学んだ筆者にとっても終生忘れ難い記憶として刻まれた。V8フェラーリ史上、最も小さな排気量を持つこのクルマには、それだけの魔力があると思うのだ。

コクピット
ゴージャスになった現代のフェラーリと比べると格段にスパルタンながら、独特の香気も感じるインテリア。カーボン製のシフトノブはノンオリジナルである。

メーター
スリムな形状のメーターナセルに5個、センターコンソールには時計を含めて3個のメーターがはめ込まれる。ターボでは328系の電圧計に代えて、専用のブースト計を装備する。

シート
英国コノリー社製の上質な本革レザーで設えたシートは、フラットな見た目の割にはホールド性も十分。


掲載:ハチマルヒーロー 2018年3月号 Vol.46(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Daijiro Kori/郡 大二郎

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