魔性のターボスーパーカー フェラーリGTSターボ 1

イタリアの国内税制に対応するためのターボモデル

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 かつての日本と同じく、2000ccを境に自動車税額が大きく異なったイタリア国内マーケットに向けて、スーパーカー専業とするメーカーたちも1970〜80年には排気量を2Lに縮小したモデルをイタリア市場限定で販売。ランボルギーニは「ウラッコP200」、マセラティも「メラク2000」を発売した。  そしてフェラーリも負けじと3LV8ティーポ「F106A」型エンジンを縮小した「F106C」ユニットを開発。7mmストロークはそのまま、ボアを81mmから66mmまで短縮することによって排気量を1991ccに縮小しながらも、170psをマークすることになった。

 この2000cc版V8フェラーリは、まず75年に2+2ミッドシップの「208GT4」として登場したのち、80年以降は2シーターの「208GTB/208GTS」もデビュー。また82年にはKKK社製ターボチャージャーを装着することで220psを発揮する「208GTB/208GTSターボ」へと進化する。

 さらに、フルスケールモデルが308GTB/308GTSから328GTB/328GTSへと進化した85年には、ターボチャージャーをKKK社製から、288GTOやF40などと同じ日本の石川島播磨重工業(現IHI)製に変更。BEHR社製インタークーラーの装備なども併せて254psまでパワーアップ。そして車名からは「208」の文字が消滅し、シンプルに「GTBターボ/GTSターボ」と呼ばれることになった。

 外観では208ターボ時代からの特徴であったリアフェンダー下部のNACAスクープを踏襲したほか、リアバンパー上部には四条のスリット。また328ではオプション(日本仕様328は標準装備)とされていたルーフ直後のエアスポイラーが標準装備化されるなど、ターボの熱対策のため特有のディテールが与えられていた。

 GTB/GTSターボは事実上のイタリア国内市場専用モデルで、約3年の生産期間にマラネッロ本社工場から送り出された台数も、GTBターボでは308台。当時は多数派であったGTSターボでも828台という、極めて少ないものに終わった。そして328シリーズの後継車348シリーズ以降は、イタリアの税制が改定されたことに伴い、2L版の設定は行われることがなかったのである。

エンブレム


グレード名

ピニンファリーナエンブレム

ドア
上部の大型エアインテークは308/328と共通だが、下部のNACAスクープはターボ専用のもの。


ホイール
328では比較的多いABS付きブレーキ仕様車は、ターボでは少数派。このオフセットの小さなホイール装着車が多勢を占めるという。


掲載:ハチマルヒーロー 2018年3月号 Vol.46(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

text:Hiromi Takeda/武田公実 photo:Daijiro Kori/郡 大二郎

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