6気筒エンジンを積む2000GTは孤高の存在|スカイラインは4気筒か6気筒か? Vol.2

4気筒エンジン搭載車は、いつしか「ショートノーズ」と呼ばれる屈辱を味わうように。だが、4気筒もデザインバランスは悪くない。

       
スカイラインといえば、ハコスカGT-Rに代表される6気筒スポーツモデルが頭に浮かぶが、S50の時代までは4気筒が主役だった。もし第1回日本グランプリの惨敗がなければ、スカイラインは違った道を進んでいたのかもしれない。

【スカイラインは4気筒か6気筒か? Vol.2】

【1】から続く

 1968年7月、スカイラインはモデルチェンジを断行し、3代目のC10スカイラインが登場した。まず、ファミリー系のスカイライン1500が発売され、9月に2000GTがベールを脱いでいる。パワーユニットは紆余曲折があった後、ファミリー系はプリンス直系のG15型直列4気筒SOHCに決まった。2000GTは日産からL20型直列6気筒SOHCを譲り受けている。

 この2000GTの上にフラッグシップのGT‐Rが存在したが、3代目のときも一般の人にとって身近な存在だったのは慣れ親しんだ4気筒エンジン搭載車だ。ただし、カーマニアなどの口コミで2000GTの評価は年を追うごとに高まっている。クルマ好きは欲しいが、高くて手が出ない。

 そこで4気筒エンジン搭載車に、ムード派のスポーティデラックスを設定した。当時はセパレートシートと4速フロアシフトだけで「スポーティ」と誇ることができた時代である。後付けのタコメーターやフォグランプを装着しただけで、スポーティな気分に浸ることができたのだった。レギュラーガソリン仕様だから経済性も良い。


▶▶▶【画像10枚】リアサスペンションも独立懸架となる、6気筒 GT-E・Sタイプと同等のスポーティな装備をおごられた5代目、スカイライン・ジャパンの4気筒 TI-E・Sなど

 2ドアハードトップが登場したのを機に、スカイラインはインパネのデザインを変え、簡単にタコメーターを組み込めるようになった。この時代、6気筒エンジンを積む2000GTは孤高の存在だ。誰にでも買えるクルマではなかった。だから4気筒の愛車を可能な限り2000GTに近づけようと努力し、安価にスポーティムードを味わおうと背伸びしたのである。

 4代目のケンとメリーのスカイラインの時代になると、スポーティさとラグジュアリーさの両方を、という欲張り派のためにスポーティGLなるグレードも設定された。だが、高度成長の時代であり、マイカーブームの真っただ中だったため、ケンメリは最初からからスカイライン2000GTが主役の座に就いている。ハコスカまで2000GTは特殊なクルマだったが、この代になるとグッと扱いやすくなっていたのである。

 4気筒エンジン搭載車は、いつしか「ショートノーズ」と呼ばれる屈辱を味わうようになる。実際には標準ノーズなのだが、ロングノーズと対比してショートノーズと呼ばれたのである。しかも4気筒エンジンのファミリー系モデルは、リアサスペンションも独立懸架ではない。これもユーザーにとっては引け目となり、腹立たしかった。

 プアマンズ・スカイラインではまずい、とメーカー側も気づいたのだろう。5代目の「ジャパン」のときに4気筒エンジン搭載車は「TI」を名乗った。また、リアサスペンションもリーフスプリングから4リンク/コイルに進化させている。GT並みにスポーティなTI‐E・Sも設定し、2000TI‐E・Sでは2000GTと同じ4輪独立懸架を採用した。だが、2000GTと較べると影が薄い。






GT-Rに搭載されたS20型直列6気筒DOHC4バルブユニット。G15型4気筒と較べると気難しい性格で生産性も悪かった。だが、高回転まで回したときのサウンドは素晴らしく、官能的だ。




ハコスカの時代は、セパレートシートに4速のフロアシフト、これが装備されているだけでスポーティカーと呼ばれた時代だった。このころスカイラインのブランドイメージが高まってきたので、オーナーは4気筒エンジン搭載車でも胸を張って乗ることができたのである。






ケンとメリーのスカイラインはアメリカのマッスルカーの香りがする。当然、デザイナーは6気筒エンジンを積むGTを中心にラインを引いたのだろう。だが、4気筒もデザインバランスは悪くない。1800スポーティGLは走りもよく、軽やかなハンドリングが持ち味だった。


【3】に続く

初出:Nostalgic Hero 2016年 2月号 vol.173(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

スカイラインは4気筒か6気筒か?(全3記事)

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Photo : KAZUHISA MASUDA/益田和久

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