「もちろん、持ち続けますよ。息子に乗ってもらわなければいけませんからね」親子四世代で引き継がれる歴史|1971年 日産 ブルーバード 1800 SSS Vol.3

オーナー一家。クルマ好きDNAの影響なのだろうか、娘さんは女の子ながらクルマ大好き、とくにジムニーが大好きだとか。そして未来のブルーバードオーナーの息子さん。このクルマ好きの中にあって奥様のみ「蚊帳の外」だとか。

       
20年ぶりに再会した祖父のブルーバード。それはまったくの偶然だった。幼い頃、車庫に置かれたそのクルマの周りをペダルカーをこいで遊んだという孫が、20年の歳月を経た後に、今は亡き祖父に代わってワックスをかけ、ステアリングを握る。運命の巡り合わせというのだろうか、その確率はまさに天文学的。むしろ、目に見えない力が両者を引き合わせたような思いすらしてくる。世の中、こうしたことが現実として起こり得るようだ。

【1971年 日産 ブルーバード 1800 SSS Vol.3】

【2】から続く

 子供のころから機械いじり、クルマが大好きで、バイクの免許を取るとジャンク同然のホンダ・ゴリラを手に入れ、見よう見まね、失敗を繰り返しながら自分の手でよみがえらせたという。

 現在、ブルーバードとは別に、ふだん乗り用に2台のジムニーを所有。1台はほぼノーマルの街乗り用、もう1台はオフロード走行用のヘビーデューティー仕様で、暇を見つけては走りに出かけているという。

 ちなみに「ジイちゃん」のブルーバードは、父との共同購入で、それまで使っていたレクサスRXと入れ替える形での所有となった。


【画像15枚】20年前、この位置に止まるブルーバードの周りを足漕ぎのペダルカー(左手前)で遊んだ覚えがある。そして20年を経たいま、今度は自分の息子が同じようにしてここで遊ぶのを見ると、妙な錯覚にとらわれるというオーナーなど


「レストアは、あまり好きじゃないんです。幸運なことに、このクルマは保管環境がよかったため、手を加える必要がまったくなく、オリジナルのままで大丈夫でした」

 祖父が知人に譲り渡し、間もなくその知人から別の人に売却され、長期間ほとんど乗らずに保管されていたことが分かった。それだけに劣化の心配もなく、塗装も十分な状態だった。むしろ、厚い鉄板に厚く塗られた塗装が磨き込まれたよさ、光沢や色合いの深みが感じられるほどだった。

 エンジンは軽く手が入った状態。キャブレターがツインソレックスとなりハイテンションコードが強化品に換えられていた。これはオーナーが手を加えたものではなく、前オーナーが手を入れた個所だという。

 撮影のため、近隣を走ってもらったが、加速のたびにツインチョークキャブレター特有の吸気音が聞こえ、これがなんとも心地よかった。

「音とか振動とか、今の快適なクルマしか知らない人には不快かもしれませんが、私にはメカニズムが生き物のように動いていると感じられ、クルマに乗っている、操っているという充実感として伝わるんです。やっぱりこれがクルマ、っていう感じですね。なんとも言えない満足感、充実感ですよ」

 かつて赤いクルマの傍らでペダルカーに乗って遊んだというオーナー。20年以上を経たいま、今度は息子がオーナーが使ったペダルカーで同じようにブルーバードの周りで遊ぶ光景。デジャブーとは、こういうことも言うのではないだろうか。

 野暮な質問と思いつつも「このブルーバード、これから先どうします?」と水を向けてみたら「もちろん、持ち続けますよ。息子に乗ってもらわなければいけませんからね」と。

 祖父、父、本人、そして息子。親子四世代間で引き継がれる1台の車両。日本の自動車文化もこうした一面を見せるまでに時を積み重ねてきたのか、としみじみ思わされる瞬間だった。




話題がクルマのことになると話が尽きなくなるオーナー。現行車ではなく結果的に旧車に目が向いてしまうという。そうした意味では、510ブルーバードは特別な存在。C10系スカイラインにも興味があるという。



クルマ好き(道楽?)の祖父、父の影響を小さな頃から受けていたオーナー。物心がついた時にはクルマが楽しくてしかたなかったという。


初出:Nostalgic Hero 2015年 12月号 Vol.172(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1971年 日産 ブルーバード 1800 SSS(全3記事)

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text & photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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