20年ぶりに再会した祖父のブルーバード。それはまったくの偶然だった|1971年 日産 ブルーバード 1800 SSS Vol.1

20年前、この位置に止まるブルーバードの周りを左手前の足漕ぎのペダルカーで遊んだ覚えがあるというオーナー。

       
20年ぶりに再会した祖父のブルーバード。それはまったくの偶然だった。幼い頃、車庫に置かれたそのクルマの周りをペダルカーをこいで遊んだという孫が、20年の歳月を経た後に、今は亡き祖父に代わってワックスをかけ、ステアリングを握る。運命の巡り合わせというのだろうか、その確率はまさに天文学的。むしろ、目に見えない力が両者を引き合わせたような思いすらしてくる。世の中、こうしたことが現実として起こり得るようだ。


【1971年 日産 ブルーバード 1800 SSS Vol.1】

奇跡の再会劇、クルマ好きの、祖父の思いがよみがえった



「これ、間違いなくオヤジのブルーバードだな」と車体の特徴を確かめながらつぶやく父に「それならウチに連れて帰ろうよ」と答えたのが、今回紹介するブルーバード1800SSSのオーナーだ。

 よく、運命の出会いという言い方をするが、オーナー親子のケースは20余年を経た運命の「再会」だった。


【写真15枚】前オーナーが手を加え、オリジナル重視派のオーナーも中速トルクが厚く力強い走りを体感しこの仕様には二重丸という、オリジナルのSUツインからソレックスに変更されたキャブ


 現オーナーにとっては祖父、元オーナーの「ジイちゃん」は、昭和5年生まれでトップクラスの競輪選手だった。それだけに生活環境には恵まれ、昭和の高度成長期、近隣で最初にクルマを買ったのも、テレビを手にしたのもオーナー一家だったという。

 その「ジイちゃん」が、1971(昭和46)年に新車で購入したクルマが赤いブルーバード1800SSSだった。オーナーのお住まいは、一階の一部を車庫として使う二階建ての日本家屋だが、これは「ジイちゃん」の代から受け継ぐ住居で「車庫の中に赤いクルマが置かれていて、その周りをペダルカーをこいで遊んだ覚えがあります」とオーナー。

 そのオーナーも現在25歳。3〜4歳当時の記憶となるはずなので、90年代前半ぐらいの話になる。「このしばらく後ぐらいですね、ブルーバードを見なくなったのは。気がついたらなくなっていた、という感じです」

 オーナー父の話では「オヤジはあまり使っていませんでしたよ。ただ、四半世紀も手元に置いていたわけですから、お気に入りだったことは間違いないでしょうけど」ということになる。

 祖父の時代はモータリゼーションの急速発展期。旧車ファンにとっては垂涎の的となる「名車」が次々と世に送り出された時代だ。父は、それを見ながらバブル期の高性能車、高品質車を思い切り堪能できた世代。そしてこの2人のクルマ道楽をつぶさに見てきたオーナーは、無意識のうちにクルマの楽しさ、おもしろさを体に染み込ませ、気がつけば根っからのクルマ好きが出来上がっていた、というわけだ。

「とくに旧車だけが好きだったというワケではないんです。ただ、今のクルマは道具としての便利さ、快適さはあるものの、楽しさ、面白さといったものは何も感じられません。自然と旧車に目が向いてしまいますよね」



走らせている実感、手応えのあるものが自動車ではないのか、というオーナー。この視点でクルマを眺めていくと、どうしても現代のクルマは合わないという。





ドライバーシートのみレカロのセミバケット、リクライナータイプに換えられている。オーナー、ドライバーインターフェースにこだわりがあるという。



【2】【3】に続く

初出:Nostalgic Hero 2015年 12月号 Vol.172(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1971年 日産 ブルーバード 1800 SSS(全3記事)

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text & photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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