ポルシェ911の異端児、希少なフラットノーズ|1989年式 ポルシェ 911 ターボ フラットノーズ Vol.1

フラットノーズ特有のリトラクタブル式ヘッドライト(閉状態)。

       
【1989年式 ポルシェ 911 ターボ フラットノーズ Vol.1】

 ポルシェ911といえば、130年におよぶ自動車史上でも最高のスポーツカーと呼ばれるクルマである。そんな中、今年で40周年を迎える「ポルシェ・ターボ」の第1作、930ターボは、モータースポーツの現場にて開発されたターボチャージャーの装着で強大なパワーを獲得したことから、一躍スーパーカーの仲間入りを果たした。現在では、歴代ポルシェの中でもアイコン的モデルとも評されている。


【画像14枚】フラットノーズ特有のリトラクタブル式ヘッドライトを開いた状態のカット。フラットノーズ仕様ではスタンダード装備となるリアフェンダーエアインテークなど


 今も昔も世界最大のスポーツカー・マーケット、北米で施行された排ガス対策法によってパワーを大幅に失ってしまったポルシェ911には、販売政策上も性能回復のカンフル剤が必要となっていた。そこで発案されたのが、70年代初頭からアメリカ、カナダのCan・Am選手権レースにて、すでに圧倒的な成果を挙げていたターボ過給を911に組み合わせるというアイデアだった。1974年ル・マン24時間レースで総合2位入賞を果たした911カレラ・ターボは、その研究から生まれた成果といえよう。

 そして、この素晴らしいレース歴を引っさげて、同じ1974年に発売された「930ターボ」は、BMW2002ターボに次ぐ、欧州車としては第2のターボ過給車となったが、そのインパクトはBMWを上回っていた。初期型930ターボでは、2992ccの排気量で260psをマーク。最高速こそ若干譲ったが、ゼロヨンなどの加速データでは、フェラーリBBやランボルギーニ・カウンタックら当時のスーパーカー界に悠然と君臨していたイタリア製の強力なライバルたちをことごとく打ち破り、スーパーカーの「王者」の一角を占めたのだ。


 さらに1978年モデルからは、それまで3Lだった排気量を3.3Lに拡大。インタークーラーも装備することで、パワーは300psの大台に乗り、車名も「911ターボ」に変更した。そして、1987年から変速機を5速化するなどのアップデートを与えられつつ、1989年まで生産されるロングセラーとなったのである。



スーパーカーブーム時代のアイドルは、実に14年も生産されたロングセラーとなった。 その最終期にポルシェが自ら送り出した特別な1台が、異形のフラットノーズである。
 





Kremer(クレーマー)スタイルの大型リアスポイラーや、ガーズレッドのボディカラーによく似合うゴールド仕立てのWORK社製ブロンバッハ3ピースホイールは、ノンオリジナルの社外品ながら「ハチマル」的な雰囲気を見事に演出。


1989年式 ポルシェ 911 ターボ フラットノーズ
車台番号:WPOZZZ93ZKS0004##/走行距離:6万3500km
SPECIFIVATION 諸元
●全長×全幅×全高(mm) 4300×1785×1300
●ホイールベース(mm) 2280
●トレッド前/後(mm) 1430/1450
●車両重量(kg) 1380
●エンジン種類 空冷水平対向6気筒SOHC
●総排気量(cc) 3298.8
●ボア×ストローク(mm) 97.0×74.4
●圧縮比 7.0:1
●最高出力(ps/rpm) 330ps/6000rpm
●最大トルク(kg-m/rpm) 43.8kg-m/4200rpm
●変速機 5速MT
●ステアリング形式 ラック&ピニオン
●サスペンション前 マクファーソンストラット+トーションバー
●サスペンション後 トレーリングAアーム+トーションバー
●ブレーキ前後とも ディスク
●タイヤ前/後 前225/50ZR16/後245/45ZR16
●発売当時価格 2750万円

【2】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2014年 05月号 vol.25(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1989年式 ポルシェ 911 ターボ フラットノーズ(全2記事)

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text : HIROMI TAKEDA/武田公実 photo : DAIJIRO KORI/郡 大二郎

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