免許取得前からR30スカイラインをレストア! 恐るべし、筋金入りの旧車ファン| 1975年式 日産 ブルーバードU HT 1600 SSS‐E Vol.3

ハイデッキデザインだったため後方視界に難があったが、ボリューム感のあるリアデザイン。アメリカンテイストも少々。

       
今回の旧車オーナーは、現行車、旧車を合わせてすでに10数台を乗り継いできた自動車好き。
最近は現行車ばかりだったと言うが、1年前、楽しさを求めて現在のブルーバードUを入手。
旧車にしかない躍動感や生命感を思い切り楽しんでいるという。

【1975年式 日産 ブルーバードU ハードトップ 1600 SSS‐E Vol.3】

【2】から続く

「今のクルマ、道具として使うなら運転は楽だし燃費もいいし、広いし静かですごくよくできていると思うんですよね。でも、決定的なことがひとつある。走らせて楽しくないんですよ」
 逆の言い方をすれば「旧車には走らせる楽しさがある」ということになるわけだが、これは誰かに教えてもらうという性質のものではなく、自分自身で感じ取る以外にないものだけに、今のクルマしか乗る機会のない人にとっては、最後まで知りようのない感覚と言うこともできるだろう。

▶▶▶【画像19枚】Jラインを描くブルーバードUの特徴的なサイドウインドーラインなど


 皮肉(?)なもので、こうした実直な感想をもらすオーナーの勤務先は自動車メーカー。ご自身は今年30歳と旧車を肌身で知る世代ではなく、むしろ「歴史上の過去のクルマ」という見方をするのがふつうだし、旧車自体を目にする機会もほとんどないはずだ。
 老若男女さまざまな旧車オーナーの方々と接してきたが、旧車リアルタイム世代ではなく、若い世代のオーナーにかなりの率で共通して言えることがあった。TVや映画の影響力だ。実際アクション物などでは、クルマが準主役的な立場で扱われることもあるだけに、TV画面を食い入るように観ていた童心に、少なからず影響を与えていたことは容易に想像できる。


「最初に手に入れた旧車はR30スカイラインRS。ノンターボの後期型、鉄仮面です。西部警察の影響ですね。相当に想い入れていました。中学生の時に手に入れ、アルバイトをしてはレストアパーツを集めてコツコツと直していました」

 並の旧車ファンでは太刀打ちできない「旧車少年パワー」だが、免許を取得して半年ほどで手放すことに。


「なんと言いますか、自分の運転技量が未熟だったというか、少し早かったかな(笑)、ということです」

 まさに手塩にかけて大切に育てた愛車だけに、こうしたことがあると一気に冷めてしまうこともあるようだ。

「しばらく時間をおいて、またR30スカイラインRSを手にいれました。今度はスリットグリルを持つ前期型。今振り返ると、スカイラインへの思い入れが相当強かったんだと思います」

 結局、その後は現行車を何台か乗り継ぐカーライフを送ることになるのだが、乗り継ぐほどに「クルマらしさがない、楽しくない」という思いが強くなり、気持ちは知らず知らずのうちに旧車に向かっていたという。

「不満というか、これはしかたのないことなのかもしれませんが、自分の周りに旧車オーナーやファンがほとんどいないんです。何をするんでも自分一人でやらないといけない。旧車環境に恵まれた人たちが、少しうらやましいです(笑)」



黒い結晶塗装のカムカバー、ECGIからソレックスダブルチョーク2連装へと、カスタマイズされた個所が見えるエンジンルーム。




ホイールはロンシャンXR4。80年代の物だ。
 


【4】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 08月号 vol.170(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 日産 ブルーバードU ハードトップ 1600 SSS‐E(全4記事)

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text & photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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