いつかあのスパを走りたい|R100スパ・クラシックレース参戦リポート Vol.2

2015年7月 静 岡 加藤さんは、FIA公認を証明するヒストリック・テクニカル・パスポートを入手するため、オーバーフェンダーを規定に合うように小さく作り直しすなど、車両の改修に多くの時間を費やした。14年12月の岡山での写真と比べるとよくわかるだろう。ようやく準備が完了したのは、シェイクダウンテストの数日前だった。

       
スパ・フランコルシャンサーキットで開催される24時間レースは、世界三大耐久レースに数えられる歴史あるレースだ。1970年、そんなスパ24時間レースに、ロータリーエンジンを搭載した小さな日本車が参戦。それから45年を経た2015年、一人の日本人オーナーが、再びスパの地にR100(ファミリア)ロータリークーペを持ち込んだ。

【R100スパ・クラシックレース参戦リポート Vol.2】

【1】から続く

 ベルギーの南東部、ドイツとの国境にほど近いスパ・フランコルシャンサーキットは、1924年に第1回の24時間レースが開催された歴史あるサーキットだ。公道を利用した当時のコースは全長14kmにおよび、高低差は100m以上という難コースで、森の中に位置するため、天候が極めて不安定なことでも有名だ。

 現在のコースは、完全クローズドで1周7kmほどに短縮されているが、それでも旧ピット施設前の強烈な下りストレートから左コーナーのオー・ルージュに飛び込み、そこから急激に上り坂を駆け上がりながら右左コーナーが連続するラディオンの区間は、スパ・フランコルシャンのハイライトであり、世界有数の難コースといわれるゆえんにもなっている部分だ。

 そんなスパ・フランコルシャンサーキットで開催される24時間レースで、1970年、初参戦ながら快進撃を演じたのがファミリアロータリークーペ(輸出名R100クーペ)だった。

【画像63枚】当時のワークスマシンと同じ仕様に仕上げられたマシンなど

 その活躍ぶりはVol.1で紹介したが、初出場にして、23時間目までトップを快走するという大活躍を見せたのだ。そしてそんなR100の活躍ぶりに胸を躍らせ、ファミリアロータリークーペを手にした一人の青年がこの加藤仁さんだ。大学生だった加藤さんは、ファミリアを手にすると、当時のディーラー、マツダオート東京でスポーツキットを組み込み(そのときのディーラーの担当者は、なんと寺田陽次郎さんだったという!)、ジムカーナなどの競技に参加していたそうだ。

 その後もさまざまなクルマ趣味を楽しんできた加藤さんだが、ファミリアへの愛着は忘れることがなかった。と同時に、70年にR100が快走を演じたスパを自分のファミリアで走ってみたいという夢を抱くようになり、徐々に準備を重ねてきた。

 時が経ち年齢を重ね、機が熟すのをうかがってきた加藤さんだったが、昨年、ついにスパのクラシックレース参戦を決意し、2015年の今年、見事にスパ参戦を果たした。



1970年のスパ24時間耐久レースで快走を見せたR100クーペ。最終的に33号車が5位入賞を果たした。当時のスパ・フランコルシャンサーキットは公道を使った1周14kmのコースだった。現在は1周7kmクローズドとサーキットとなっているが、旧ピットやオー・ルージュなどは、当時の雰囲気を残している。加藤さんのマシンは、当時のワークスマシンと同じ仕様に仕上げられており、さながら45年前にタイムスリップしたようだ。


【3】【4】【5】【6】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 12月号 vol.172(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

R100スパ・クラシックレース参戦リポート(全6記事)

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text : NOSTALGIC HERO/編集部 photo : MASATO MIURA(MZ RACING)/三浦正人(エムゼットレーシング) MAZDA/マツダ、NOSTALGIC HERO/編集部

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