ピンクだけど純正色! 60年前に生産された初代スカイラインが日本に里帰り パート3

       

 今回の紹介する車両は、57年前の1960年にアメリカに輸出された個体で、車両型式もALSIEL-1となっている。「E」はエクスポート(輸出)、「L」はレフト(左)ハンドルの意味だろうか。現地在住のプリンス車マニアが長年普段の足として乗っていたそうで、4年前に日本へ里帰りした。

「アメリカのeBayオークションに出品されていたのを私が見つけ、現地の友人にサポートを依頼して、スカイラインを購入する段取りを整えました」
と、オーナーのAさんがその出合いのきっかけを教えてくれた。現車を早く見たいとロサンゼルスに駆けつけたAさんだったが、改めてクルマ全体のコンディションを確認してみると、ショッキングな事実が明らかになる。

 「ボンネットやトランクには穴が開いているし、内装もボロボロの状態でした。でも丸形2灯ヘッドライトの1型の左ハンドルはとても珍しかったので、再生させたいという気持ちは萎えませんでしたね」

 現地でメンテナンスを受けながら毎日乗られていた個体ということで、ランニングコンディションは抜群だったそうで、Aさんとしてはその点が再生へのモチベーションを保つ拠り所となっていたのも事実だろう。

 国内でのレストアにあたり、こだわったのがピンクのボディにホワイトの内装色。これは当時現地で製作されたパンフレットにあった配色で、日本から出荷される時点でこの仕様となっていたようだ。同じころ街中を走っていたフルサイズのアメリカ車に混じり、小さなピンクの初代スカイラインが走っている様子は、想像するだけで楽しくなってしまう。


59年式 プリンス スカイライン1500 (国内仕様 ALSID-1)
●全長4280mm●全幅1675mm●全高1535mm●ホイールベース2535mm●トレッド前/後1340/1380mm●最低地上高210mm●室内長1920mm●室内幅1460mm●室内高1220mm●車両重量1310kg●乗車定員6名●最高速度125km/h●登坂能力22.8°●最小回転半径5.4m●エンジン型式GA30型●エンジン種類水冷直列4気筒OHV●総排気量1484cc●ボア×ストローク75×84mm●圧縮比7.5:1●最高出力60ps/4400rpm●最大トルク10.75kg-m/3200rpm●燃料供給装置シングルキャブレター●燃料タンク容量40L●変速機前進4段/後退1段●変速比1速5.19/2速3.03/3速1.59/4速1.00/後退5.97●最終減速比4.625●ステアリング形式ウオームアンドローラー式●サスペンション前/後ダブルウイッシュボーン・コイル/ド・ディオンアクスル・リーフ●ブレーキ前後ともドラム●タイヤ前後とも6.40-14 4PR●発売当時価格108万円
 

トランスミッションは4速マニュアルで、コラムレバーは右側に装着される。スピードメーターはもちろんマイル表示となる。


スチールパネルで作られているインストルメントパネルは、当時のセオリーどおり、ボディと同色のピンクで塗装。時計やラジオもなく、走りに徹した仕様となっている。


インパネの中央には、個性的な書体のPrinceのエンブレムが装着される。国内仕様では、グローブボックスのふたに場所が移されていた。


購入時、内装のコンディションが非常に悪かったため、シートやトリムの柄を忠実に再現しながら、すべて製作し直した。白のビニールレザーを多用しているため、シート全体を透明のビニールで保護している。


リアシートも同様の状態。座るのがもったいないほど張りがあり、良好な車内空間を作っている。


燃料タンクは40Lで、トランクの奥にあるこのレイアウトは、後のS50系、C10系にも受け継がれる。車載のジャッキは、サイドシルにアームを挿入するタイプ。


 オーナーのAさんは15歳から5年間アメリカ留学を経験。その時の自分の気持ちを重ねて、取材車両と出合った時に「何とか日本に連れ帰って、元の姿に戻してあげたい」と強く思ったそうだ。写真のミニカーはキーホルダーとして使っているもので、プロのモデラーにワンオフで製作してもらった。愛情をたっぷり受けたALSIEL-1は幸せものである。


掲載:ノスタルジックヒーロー 2017年6月号 Vol.181(記事中の内容はすべて掲載当時のものです)

photo : Ryota-raw Shimizu/清水良太郎

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