50℃近い砂漠では、窓を閉めた方が涼しい! 漢字の「名古屋」ナンバーのままでアメリカ大陸を走破したスカイライン|グレートレース 2015 Vol.3

ヒストリック・ルート66をひたすら西に走る。

       
【GREAT RACE 2015 cross THE AMERICAN Six STATES Vol.3】

グレートレース2015に参戦、9日間で4000kmを駆け抜ける!  
6月20日から9日間にわたってアメリカで開催されたクラシックカーイベント「グレートレース2015」。
名古屋と東京にショールームを持つ中古車専門店「ビンゴスポーツ」から、スカイライン2000 GT-Rが参戦。
ナビゲーターとしてこのGT-Rに乗り込んだ自動車ライターの西川 淳さんに、レースのリポートをお願いした。

【2】から続く

ハコスカGT-Rでアメリカ大陸を走破 〜第3回〜

漢字の「名古屋」ナンバーのままでアメリカ大陸を走破したスカイラインなど【写真21枚】

 実際、あまりにシンプルすぎて、9日間も飽きずに走れるかとスタート前には危惧していたが、杞憂だった。全体のルールも分かりはじめた2日目からは、普段はサーキットでコンマ1秒を詰める豪快ドライバーの武井社長が、一心不乱にマイル計を見つめてアクセルコントロール、ナビの筆者はコマ図と目印に必死で向き合い、お互い、雄大なアメリカ南部の景色を楽しんでいる余裕などない。わずかに、リエゾン区間ではまわりを見渡すこともできるのだが、それとて指定時間内での到着を考えるとミスコースは厳禁だから、少なくとも観光気分じゃ走れない。

 そのうえ南部ルートは酷暑だ。40℃なんてまだ甘い、アリゾナ州の砂漠エリアでは50℃近くに跳ね上がり、水分がとったそばから蒸発する始末。窓を全開にして走ると、熱風が当たってかえって暑い。窓を閉めた方がまだしも涼しいなんてことを、初めて経験した。

 もちろん、暑さはクルマにも大敵、なはずだったが、ハコスカ・ビンゴ号はいたって快調だった。山をのぼり、空気が薄くなってS20型エンジンの吹けが悪くなる、なんてことはあっても、根をあげる気配はまったくない。一定の低速で走るという競技にはまるで不適な高回転型エンジン+キャブ+マニュアルミッションだったけれども、そこはドライバーのテクでカバー。繊細で気難しいというS20型のイメージも、今ではすっかり変わって、丈夫でたくましく、実に大和魂のあるエンジンだと思えるように。60年代の大志ある日本人のクルマに対する意気込みが伝わってきた。
 ランチポイントや宿泊地では、グレートレース一行が到着すると、ちょっとしたカーイベント状態に。ハコスカを初めて見るというクルマ好きがほとんどで、ボンネットを開け、S20型エンジンを見つけるや、興奮のあまり卒倒しそうになるJDM好きの若者も!  

 マイナートラブルもあったが、チームジャパンは8台とも無事にゴールのサンタモニカへたどり着いた。成績?  まぁ、それはよしとしよう。それよりも、60年代の日本に、すでにこれほど素晴らしいスポーツカーがあったという歴史、それをベースに現在の日本の自動車産業があるという事実を、アメリカ大陸で噛み締めることができたことの方が大事だ。先人たちの偉業を称え、感謝したい気持ちでいっぱいになった。




ミズーリ州のカークウッドをスタート。その後、オクラホマ州、テキサス州、ニューメキシコ州、アリゾナ州を通過し、カリフォルニア州のサンタモニカにゴールする行程。







ビンゴスポーツGT-Rは大きなトラブルもなく、S20型エンジンも快調に回り続けた。制限速度45マイルを守って走行。





BREカラーをベースにした510ブルーバード1600SSSも、日本から持ち込まれた1台。カーナンバー5、日本勢で一番若い番号が与えられた。





最終日、ランチの経由地はThe Nethercutt Collectionという、全米で5本の指に入る自動車ミュージアムだった。
 




ビンゴスポーツGT-Rは、カリフォルニア州サンタモニカのゴールに無事到着。チームジャパンも全車完走することができた。




初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 10月号 vol.171(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

GREAT RACE 2015 cross THE AMERICAN Six STATES(全3記事)

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text:JUN NISHIKAWA/西川 淳 photo:BINGO SPORTS/ビンゴスポーツ

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