2年の歳月をかけ、往年のサファリ仕様240Zの姿がよみがえった。|1973年式 ダットサン 240Z サファリラリースペック Vol.3

当時もののハルダ製トリップ(シングル)マスターを2基装着。動かすためのケーブルはフロント左右のストラットから取り出していて、タイヤ空転による距離誤差を防ぐ工夫がされている。ちなみに通常どおりトランスミッションから分岐して取り出すと、スリップによる距離誤差が出てしまう。下段のストップウオッチ(左)はホイヤー製モンテカルロ、時計(右)は同じくホイヤー製のマスタータイムを装着。ともに貴重品。

       
「フェアレディZへの慕情」

昭和演歌の題名にも使われた慕情という言葉には、恋しい、懐かしいという意味がある。クルマは機械の集合体であるのだが、人それぞれの思いが込められる対象となることもよくある。

【1973年式 ダットサン 240Z サファリラリースペック Vol.3】

【2】から続く

 こうして2年の歳月をかけて、日産ファクトリーチームがサファリラリーで好成績を収めた当時の240Zの姿がよみがえった。1971年から1973年までと同じたたずまいであり、写真を見てお分かりのとおり、サファリ仕様独特の装備も当時と同じように製作して装着されている。一方、現代の競技車両にふさわしいさまざまな安全装備が組み込まれているところは、さすがIRSが製作したラリー車両だと納得させられる部分も多い。

 主なき240Zをこの先どう維持管理するか、岩下さんは悩んだという。そして故人の希望どおり、古き良き時代の遺品として、優れた技術とその勇姿を末永く残すことを使命に、いつでも走れる状態に整備。保管場所の確保は、ホイールメーカーのエンケイが引き受けてくれることになった。

 サファリラリーのスタートランプにのぼることはない240Zだが、この1台にかかわった人々の心は、間違いなくケニヤのナイロビに向いていた。

【画像34枚】5の番号だけ手作りとなった、1971〜73年当時のオフィシャルものとなるおなじみの形のラリーステッカーなど



ダッツンコンペ・ステアリングを装着。インストルメントパネルやセンターコンソールなども、メーターやスイッチなどが丁寧な加工によって組み込まれている。





特徴ある配置のABCペダルとフットレストは、当時ものパーツをそのまま再生、装着している。






左右のフットレストの間にあるのは、ホーン用のフットスイッチ。運転操作に忙しいドライバーに代わり、ナビゲーターがエアホーンを鳴らす。


1973年式 ダットサン 240Z サファリラリースペック(HS30)
SPECIFICATIONS 諸元
全長 4300mm
全幅 1630mm
全高 1305mm
ホイールベース 2305mm
トレッド前/後 1355/1345mm
車両重量 1150kg
乗車定員 2名
最高速度 240km/h
エンジン型式 L26型改
エンジン種類 水冷直列6気筒SOHC
総排気量 2874cc
最高出力 250ps/7500rpm
最大トルク 26.5kgf・m/5400rpm
変速機 前進5段/後退1段、F5C71B・直結5速
燃料タンク容量 120L
サスペンション前後とも マクファーソン・ストラット
ブレーキ前後とも ベンチレーテッド・ディスク、MK63-20S
ホイール前後とも 鍛造マグネシウム合金製、6.0J×14インチ

●おことわり 取材車両のダットサン240Zサファリラリー仕様については、諸般の事情により、
関係者や企業へのお問い合わせには対応致しかねます。ご理解のほど、よろしくお願いいたします。


【4】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 10月号 vol.171(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1973年式 ダットサン 240Z サファリラリースペック(全4記事)

関連記事: フェアレディZへの慕情

関連記事: フェアレディZ

photo : KAZUHISA MASUDA/益田和久

RECOMMENDED

RELATED

RANKING