トヨタ 2000GT、その特筆すべきストーリーには3つめがある|1967年式 トヨタ 2000 GT Vol.2

フロントノーズの長さが一層顕著となる、リアからのアングル。このプロポーションとツインカムエンジンの技術がミックスされた1台だからこそ、トヨタ2000GTは後世に名を残せたのだろう。レースに出ていたSCCAレプリカの車高がノーマルのままでは絵にならないので、ビルシュタインの車高調も用意。これでフェンダーアーチとタイヤのクリアランスも整った、動ける足になっている。

       
前期233台、後期118台。合計351台しか生産されなかったトヨタ2000GT。最近は市場価格も高騰しており、モディファイなどを施すことなく、オリジナルのままをキープしようとするオーナーが圧倒的に多いのがトヨタ2000GTだ。だがそんな貴重なモデルをベースに、歴史的ストーリーの復活を目論むべく、大胆なまでに手を加えた驚愕の1台が出現した。「夢のクルマ」がアメリカで見た壮大な夢のかけらを、今、この日本で再現してくれることに感謝しつつ、その全貌を追ってみたい。

【1967年式 トヨタ 2000 GT Vol.2】

 希少価値も手伝って、今や億単位のプライスタグが付くこともあるトヨタ2000GTだが、そのデビュー当時を振り返ると、特筆すべき3つのストーリーがあった。

【1】から続く


純正のマグネシウムホイールのデザインでワンオフで製作されたアルミホイールなど【写真41枚】

特筆すべき3つのストーリー、その3つめとは?

 そして、3つめがアメリカでのレース参戦だ。

 販売面においてアメリカマーケットの重要性を察知していたトヨタは、数あるアメリカのレースシリーズの中から、SCCA(スポーツカークラブオブアメリカ)への参戦を決意。必勝を期すためにキャロル・シェルビー率いるシェルビーアメリカンに活動を委託したことからも、その本気度をうかがい知ることができる。

 念のためにシェルビーアメリカンについて補足すると、レーシングチームとしては、フォードGT40を駆り、1966年のル・マン24時間レース初優勝に貢献。コンストラクターとしては、ACコブラや初代フォードマスタングベースのシェルビー350GTといった今なお語り継がれるハイパフォーマンスモデルをリリースした、当代きってのレーシングチームだったのだ。

 SCCA制覇のために太平洋を渡ったトヨタ2000GTは、製造番号10001(生産第1号車)、1000
5、10006の3台。1968年より、これら3台を使ったレース活動はスタートする。ただし、実際に出場したのは製造番号10005(白/赤ペイントのゼッケン33)と10006(白/青ペイントのゼッケン23)の2台で、そのスタイルを愛車にためらうことなくフィードバックしたのが、今号のカバーカーの正体なのである。



助手席側フェンダーの内側にエアクリーナーとウオッシャータンク、運転席側にバッテリーを置くレイアウトは純正のまま。ただし、バッテリー自体をパナソニックのカオス80B24Rにし、安定した電力を供給。また、エアクリーナーとウオッシャータンクも、オリジナルに似ている他車種用を流用しているそうだ。





センター出しのマフラーがキャブトンタイプからメガホンタイプに変わるのも、シェルビー仕様ならでは。排気は6-2-2なので、タコ足の後ろからテールまで2本のステンレスパイプが貫く格好だ。





純正のマグネシウムホイールは15×5Jと細いため、同じデザインで15×6Jとなるアルミホイールをワンオフで製作。センターロックの役目を果たすノックオフスピンナーも、当時と同じ左に赤、右に青のアルマイト処理のカラーリングとし、ワイヤーロックも施す。タイヤはBSレグノGR9000の185/65R15を装着。


1967年式 トヨタ2000GT(MF10)
SPECIFICATIONS 諸元
●エクステリア:シェルビーアメリカンカラー(ラッピング)、フロントT字グリル&バンパーレス、ワンオフフロントアンダーパネル、フォグランプカバー&ウインカーレンズフィルム貼り、前期ルック後期ミラー、リアオーバーライダーレス
●エンジン:7M型3Lブロック+3M型ツインカムヘッド&インテークマニホールド
●点火系:永井電子機器イグニッションコイル/MDIユニット
●吸排気系:ミクニソレックス44PHH×3、クライスジークワンオフ6-2-2ステンレスタコ足&メガホンマフラー
●冷却系:ワンオフ3層ラジエーター、リザーバータンク追加、6枚羽根電動ファン、オイルクーラー交換&ライン引き直し
●駆動系:後期用5速ミッション載せ換え、OS技研製強化クラッチ&スーパーロックLSD
●サスペンション:ワンオフビルシュタイン車高調
●ブレーキ: (F)マツダRX-8用ローター/キャリパー/マスターバック/タンデムシリンダー
●インテリア:シンプソン4点式ハーネス、4点式ハーネス固定用バー
●タイヤ:ブリヂストンレグノGR9000 185/65R15
●ホイール:純正マグネシウム風ワンオフ15×6J、ワンオフシェルビーアメリカン風ノックオフスピンナー

【3】【4】【5】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2016年 7月号 vol.010(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1967年式 トヨタ 2000 GT(全5記事)

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text : RYOICHI IGAWA/井川了一 photo : MAKOTO INOUE/井上 誠

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