2000GTのストーリー、「映画出演」「世界記録」そして・・・|1967年式 トヨタ 2000 GT Vol.1

フォグランプカバーのスモーク化、フロントバンパーレス、T字グリルレスも、SCCA仕様を作る上での重要な鍵となる。本来は不要なヘッドライトも、公道仕様のため残している。

       
前期233台、後期118台。合計351台しか生産されなかったトヨタ2000GT。最近は市場価格も高騰しており、モディファイなどを施すことなく、オリジナルのままをキープしようとするオーナーが圧倒的に多いのがトヨタ2000GTだ。だがそんな貴重なモデルをベースに、歴史的ストーリーの復活を目論むべく、大胆なまでに手を加えた驚愕の1台が出現した。「夢のクルマ」がアメリカで見た壮大な夢のかけらを、今、この日本で再現してくれることに感謝しつつ、その全貌を追ってみたい。

【1967年式 トヨタ 2000 GT Vol.1】

本来のボディーカラーはシルバーで、白いボディも赤のペイントもラッピングで再現されたなど【写真41枚】

 市場での流通数やモディファイを楽しむという点では、スカイラインやフェアレディZといった日産勢の後塵を拝する。ただし、トヨタ2000GTにこそ、「日本モータリゼーション史上最高傑作の一台」の冠を授けることに異論はないと思う。

 ヤマハとの共同開発であったことを差し引いても、1960年代半ばにDOHCエンジン、4輪ディスクブレーキ、4輪ダブルウイッシュボーン、ラック&ピニオンステアリング、5速フルシンクロミッションといったメカニズムの採用は画期的。リトラクタブルヘッドライト、ロングノーズ、2座のファストバックフォルムのスタイリングを兼ね備えたGTカーなど、日本国内には存在し得なかったのだから。

特筆すべきストーリー、その1つめ

 希少価値も手伝って、今や億単位のプライスタグが付くこともあるトヨタ2000GTだが、そのデビュー当時を振り返ると、特筆すべき3つのストーリーがあった。

 1つめは人気シリーズ映画「007は二度死ぬ」への出演だ。ご存じイギリスのスパイ、ジェームズ・ボンドが主人公の同シリーズに登場するクルマといえば、世界に名だたるスポーツカー、アストンマーチン。その名前と肩を並べたということは、まさに世界基準の名車への仲間入りを果たしたことの重要な裏付けとなったのだ。

スピードトライアルというストーリー

 2つめは、1966年10月に茨城県谷田部にあった高速周回路で行われたスピードトライアル。007シリーズへ出演がソフト面のアピールだったとすれば、こちらは紛れもなくハード面のアピールにつながった。区切られた時間、マイル数、キロ数をどれだけの平均時速で走れるかの課題に挑み、13のカテゴリーで世界記録を樹立。この段階ではまだ市販化はされていなかったが、メーカーサイドの大々的な宣伝効果もあり、トヨタ2000GTへの期待感は、いやでもふくらんでいった。




SCCAを走ったトヨタ2000GTはゼッケン23(白/青)とゼッケン33(白/赤)の2台。日本にすでにゼッケン23のレプリカがいたことから、AIさんはゼッケン33レプリカの製作にあたっている。








後期用フェンダーミラーにツートンフィニッシュとネジ取り付け加工を行い、前期用ミラーに見せる工夫も。また、シェルビーアメリカンの33号車ではエンブレムが外されているが、純正の七宝焼きエンブレムはあえて残している。






テールランプとナンバープレートの間に位置するオーバーライダーを取り外し、そのスペースに赤のペイントを施す。大型フューエルキャップの取り付けが今後の課題だそうだ。


1967年式 トヨタ2000GT(MF10)
SPECIFICATIONS 諸元
●エクステリア:シェルビーアメリカンカラー(ラッピング)、フロントT字グリル&バンパーレス、ワンオフフロントアンダーパネル、フォグランプカバー&ウインカーレンズフィルム貼り、前期ルック後期ミラー、リアオーバーライダーレス
●エンジン:7M型3Lブロック+3M型ツインカムヘッド&インテークマニホールド
●点火系:永井電子機器イグニッションコイル/MDIユニット
●吸排気系:ミクニソレックス44PHH×3、クライスジークワンオフ6-2-2ステンレスタコ足&メガホンマフラー
●冷却系:ワンオフ3層ラジエーター、リザーバータンク追加、6枚羽根電動ファン、オイルクーラー交換&ライン引き直し
●駆動系:後期用5速ミッション載せ換え、OS技研製強化クラッチ&スーパーロックLSD
●サスペンション:ワンオフビルシュタイン車高調
●ブレーキ: (F)マツダRX-8用ローター/キャリパー/マスターバック/タンデムシリンダー
●インテリア:シンプソン4点式ハーネス、4点式ハーネス固定用バー
●タイヤ:ブリヂストンレグノGR9000 185/65R15
●ホイール:純正マグネシウム風ワンオフ15×6J、ワンオフシェルビーアメリカン風ノックオフスピンナー


【2】【3】【4】【5】に続く

初出:ノスタルジックスピード 2016年 7月号 vol.010(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1967年式 トヨタ 2000 GT(全5記事)

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text : RYOICHI IGAWA/井川了一 photo : MAKOTO INOUE/井上 誠

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