【トヨタのスポーツ・スピリット Vol.1】
トヨタの乗用車には、高性能のDOHCエンジンを搭載したリアルスポーツモデル以外に、
OHVやSOHCエンジンにツインキャブを装着した「S」「SL」「SR」といったスポーティーグレードも用意。
走り志向の若者を中心に人気を博した。そんなトヨタのスポーツ・スピリットあふれるクルマをまとめてみた。
トヨタ自動車はファミリーカーを得意とするメーカーとして知られている。実際、カローラやクラウンなど、ちょっと上質なセダンを生み出す自動車メーカーといったイメージが強い。保守的なクルマ造りをしているように思われているが、トヨタは早い時期からスポーティーな走りにこだわってきた。積極的に前衛的な2シーターのスポーツカーも送り出している。
それは1960年代の全日本自動車ショーと東京モーターショーを見れば分かるはずだ。61年の第8回ショーにはクラウン用の1.9L直列4気筒OHVエンジンを積む「トヨペットスポーツX」を参考出品し、話題をまいた。エクステリアはイタリアンテイストのクーペデザインで、ヘッドライトは左右2灯ずつのデュアルタイプだ。ソアラの登場より20年も前に、プレステージ性の高いスペシャルティクーペを提案していたのである。
1962年の第9回ショーには小型飛行機のようにキャノピー部分のルーフが後方にスライドする個性的な「パブリカスポーツ」を参考出品し、センセーションを巻き起こした。また、パブリカ700のルーフを取り去ったそう快な「パブリカオープン」も展示する。
前者は64年の第11回ショーに進化型の「パブリカスポーツ」を出品し、熱い視線を浴びた。デザインを大きく変えたプロトタイプは、1965年春にトヨタスポーツ800のネーミングで正式デビューを飾っている。後者は63年にパブリカ700コンバーチブルの名で市販に移された。両車は、ベースとなる水平対向2気筒エンジンをチューニングして搭載している。ちなみにトヨペットスポーツXとパブリカスポーツ、これに続くトヨタスポーツ800は関東自動車工業(現・トヨタ自動車東日本)に製造を依頼。また、パブリカのコンバーチブルもセントラル工業(現・トヨタ自動車東日本)がルーフの架装を行った。これ以降、トヨタは関連企業にも力を借りて、少量生産のスポーツモデルを送り出し続けている。
1963年の全日本自動車ショーにはコロナの名を冠した2+2レイアウトの「コロナスポーツクーペ」をターンテーブルに飾った。エンジンはクラウンに積んでいる1.9Lの4気筒OHVだ。これにSUツインキャブを装着し、パワーアップしている。その隣にはコロナのルーフを取り去った1500Sコンバーチブルも展示した。こちらもSUツインキャブ仕様だ。
トヨタだけに限らないが、キャブレターの口径を大きくしたり、数を増やしてエンジンをパワーアップする手法は、その後のスポーツモデルの常套手段となった。トランスミッションもコラムシフトの3速MTではなく、持てる実力を引き出しやすいようにフロアシフトの4速MTを選んでいる。ギアを多段化しただけでなく、ギア比も加速性能を重視した味付けだ。
トヨタスポーツ800が正式デビューした1965年、トヨタはコロナ1500に「ハードトップ」を加えた。2ドアモデルのリアピラーの傾斜を強めたクーペスタイルだが、センターピラーを取り去り、開放感を高めている。こちらもエンジンの排気量を1.6Lに拡大し、SUツインキャブを装着したスポーティーバージョンを設定した。アメリカ流の「ハードトップ」のブームは、90年代前半まで続いている。
リアピラーを傾斜させたノッチバックのクーペデザインとともに若者から支持されたのがファストバックのクーペだ。トヨタスポーツ800に続いて送り出したトヨタ2000GTで、ファストバックをスポーツモデルとして認めさせることに成功した。同じ時期、カローラにも若々しいデザインのスプリンター1100を投入し、若者たちのハートをワシづかみしている。
初代KE10カローラのスポーティー仕様のカローラSLなど【写真12枚】コロナ1600Sは、セダンのRT40とハードトップのRT51に設定。SUツインキャブを装着した1.6Lの4R型エンジンを搭載。水冷直列4気筒OHVながら、90psのパワーを誇った。こちらもタコメーター、バケットタイプシート、ディスクブレーキなどを装備していた。
【2】に続く初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 08月 Vol.170 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)
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