軽量+シンプルなFR方式! トヨタスポーツ、時代を超えたスポーツカーの原点|1965年式 トヨタスポーツ800 Vol.1

フロントフードはアルミ製を採用。軽量化がもちろん目的だが、当時としては新しい素材に対する実用性の検証の意味もあった。ヘッドライトのシールドビームは、オーナーのこだわりで当時と同じ50/40Wを装着。

       
ライトウエイトスポーツと呼ばれるクルマは多い。今でも軽量ボディのスポーツモデルは存在する。が、最近のクルマは安全対策や快適装備を盛り込んでいることもあり、車両重量は思いのほか重くなってしまった。軽量化と気持ちいい走り、優れた経済性は、設計者にとって永遠の課題だ。この難問を半世紀も前に解決したのが、トヨタスポーツ800である。

【1965年式 トヨタスポーツ800 Vol.1】

 ライトウエイトスポーツの代表車にあげられるトヨタスポーツ800は、今(2015年)から50年前の1965年春にデビューした。開発プロジェクトの中心となった人物は、立川飛行機出身のトヨタ自動車工業のエンジニア、長谷川龍雄さんだ。量産モデルの主査としてパブリカの開発に携わり、次には初代カローラの主査を務めている。

【画像22枚】シートバック上部に横方向のステッチが入る初期モデルのシートや、シート背面スペースのチャックやふたからアクセスできるトランクなど

 トヨタスポーツ800は、パブリカとともに長谷川さんが50年代から構想を練ってきた作品だ。コードネーム「UP」で呼ばれたパブリカの開発プロジェクトは、水平対向2気筒エンジンに前輪駆動(FF)の組み合わせでスタートした。が、トラブルが多かったので、長谷川さんは白紙に戻し、後輪駆動のFR方式に改めている。

 メカニズムがフロントに集中するFF方式は信頼性が乏しく、操縦性にも難があった。航空機の設計出身だった長谷川さんは、メカニズムがシンプルで、故障しないことがもっとも大切と考え、設計を大きく変えている。エンジン排気量も、首脳陣が主張したものより大きい700ccにして軽自動車との違いを明快に打ち出した。




アルミ製のデタッチャブルトップを外した姿。簡単にルーフを取り外せる機構を盛り込むことは、当初から計画されていた。





トランクリッドもアルミ製となっている。



1965年式 トヨタスポーツ800(UP15)
SPECIFICATIONS 諸元
全長 3580mm
全幅 1465mm
全高 1175mm
ホイールベース 2000mm
トレッド前/後 1203/1160mm
最低地上高 175mm
車両重量 580kg
乗車定員 2名
最高速度 155km/h
登坂能力 sinθ0.464
最小回転半径 4.3m
エンジン型式 2U型
エンジン種類 空冷水平対向2気筒OHV
ボア×ストローク 83×73mm
総排気量 790cc
圧縮比 9.0:1
最高出力 45ps/5400rpm
最大トルク 6.8kg-m/3800rpm
変速機 前進4段・後退1段、2〜4速シンクロメッシュ
変速比 1速 4.444/2速 2.400/3速 1.550/4速 1.125/後退 5.812
最終減速比 3.300
燃料タンク容量 30L
ステアリング形式 ウォーム、セクターローラー
サスペンション前/後 独立懸架トーションバー式/非対称半楕円
ブレーキ前/後 ツーリーディング/リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 6.00-12-4PR
発売当時価格 59.5万円

【2】【3】に続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 08月 Vol.170 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1965年式 トヨタスポーツ800(全3記事)

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text : HIDEAKI KATAOKA/片岡英明、NOSTALGIC HERO/編集部 photo : ISAO YATSUI/谷井 功

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