最初のクルマは26歳に「任意保険の支払い額が安くなるから」。そして117に見合った楽しみ方を|1975年式 いすゞ 117クーペ XC  Vol.3

フェラーリのスケドーニを彷彿とさせる。広く大きくラウンドしたリアウインドー。独特のリアビューも117クーペの大きな魅力だ。

       
【1975年式 いすゞ 117クーペ XC  Vol.3】

【2】から続く

 想定内の想定外。一見衝動買いにも見える行動だが、プロセスはすでに織り込み済み。117クーペに対する予備知識、購入に関する準備があったからこそなし得た購入の決定で、むしろオーナーの計画性の高さを見せられた思いがする。
 
フローリアンと共通のシャシーで開発された117クーペ。117クーペはどの角度から眺めても美しい。2+2クーペとして流麗なフォルムを見せるサイドビューなど【写真16枚】


「自分の収入は決して多くないです。むしろ低いほうでしょう。だから計画的にお金を使うんです。初めてのクルマ、ラシーンを買ったのが26歳の時というのも、実は任意保険の支払い額が26歳以降で安くなるからです。クルマを持つならこの年齢を過ぎたら、と決めていた部分がありました。それにバイクを持っていたので、自由になる足が欲しいという要求は満たされていましたし、早急にクルマが必要という状況でもありませんでしたから」。

 オーナーに言わせると、お金がないからクルマを持てないという人は、1度収入と支出を見直してみることをお勧めしたい、ということだ。無駄、不要な支出がかなりあるはずだと言う。実際、我が身を振り返ってみると、なんとも耳の痛いアドバイスだ。

「117クーペは、まだ所有して1年に満たないですけど、消耗品のメンテナンスには気をつけています。車齢が古いので、いつ何が壊れるか分からない不安もありますが、乗るたびに気をつけていれば、何かあってもそれほど大ごとにはならないと思うんです」

 機械物は使いすぎてもダメ、使わずに放って置いてもダメ。適当に使ってメンテナンスをしっかりという、旧車オーナーの鉄則を肌身で理解して実行しているようなカーライフ。休日には100kmほどの距離を設定してドライブを楽しんでいるという。

「乗るときは、略式でも襟付きの服は着ていたい。TシャツにGパンはブチ壊し、完全に浮いて見えてしまう。フォーマルでも使えるクルマですから」。

 デザイナーのジウジアーロが喜びそうなオーナーの1人だ。




オーナーの職業柄もあってか靴は300足以上、服は数えたことがないというほどだ。デザインや色彩に対する感覚は持って生まれたものなのだろう。117クーペの選択につながったことがうなずける一面を見せてもらった思いがする。






動力性能に関する不満はまったくないという。欲を言えばDOHC車でもよかったかな、と振り返るが、インジェクションのXEではなくキャブ仕様のXGだという。現有のXCには大満足、ずっと持っていたいという。


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 06月 Vol.169 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 いすゞ 117クーペ XC (全3記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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