「これください」と思い切ったわけです。出逢いはまったくの偶然に。そして熟慮の末の衝動買い!?|1975年式 いすゞ 117クーペ XC  Vol.2

旧車に乗るには、メカニズムをいたわるダブルクラッチが必要不可欠だからと、乗り始めの頃は技術習得にも励んだとか。117クーペの現役当時よりていねいな運転だ。

       
【1975年式 いすゞ 117クーペ XC  Vol.2】

【1】から続く

 子供の頃から形や色、言い換えればデザインやファッションに対する関心は大きかったという117クーペのオーナー。

 だからアパレル関係の仕事に就いているとも言えるのだが、自動車に関してもまったく同じスタンスで、もともとのクルマ好きにオーナー流の審美眼が加わるクルマ選びとなり、いつの間にか117クーペのスタイルが脳裏に焼き付いていたという。

W650、117クーペ、ラシーンが収められている、クルマの所有に合わせて探した車庫付き日本家屋など【写真16枚】

 旧車に対する抵抗感はなし。むしろここまでのいきさつからもうかがえるように、旧車は積極支持派である。

 しかし、話をしていて意外な事実を知ることになった。現在29歳のオーナーだが、クルマオーナー歴はまだ3年と浅い。免許を取り18歳で最初に手にした「乗り物」はモーターサイクル、現在も所有するカワサキW650だった。往年のファンには懐かしい、キャブトンマフラーのW1スペシャルの復刻版として作られたモデルだ。

「マルチシリンダーの電気モーターのようなスムーズな回り方には感動がないんですよ。ドッ、ドッと力強く心臓の鼓動を思わせる単気筒や2気筒の回り方に、なんとも言えぬ魅力を感じます。だからクルマは4気筒派です」。

 そんなオーナー、クルマオーナーになるまでしばらく年月を要したのにはそれなりのワケがあった。

「まず、経済的な問題がありました。買っても満足な状態を保てなかったり維持できずに手放すのは嫌でしたから、時機を待つことにしました。それに、旧車維持のノウハウも分かりませんでしたからね。ですから、小手調べのつもりで、比較的年式の新しいクルマを1台持ってみようと」。

 これが1999年式の日産ラシーンだった。いや「だった」という言い方は正確ではなく、117クーペを所有する現在も所有中のクルマだ。

「この後に117クーペを買うんですが、1回持ってしまうと愛着がわくと言うか、実用性もいいですし、形も気に入っていたし、なんとか頑張って持ち続けることにしたんです」。

 現在のオーナー、117クーペ、ラシーン、W650と2&4の10ホイラー生活を満喫中。やるもんです。

「117クーペは、W650で奥多摩方面へツーリングに出かけた時、いすゞ車を扱っている店に立ち寄って見つけたクルマです。前々から117クーペが気になっていて、中古の実車はどんな状態なんだろうかと、下見というか冷やかしのつもりでのぞいてみたんですが、そこにこのクルマがあったんです。見ると程度は抜群。117クーペはいずれ買うつもりで準備は進めていましたが、近々にどうのこうのというつもりはまったくなかったんです。でも、程度のいい実車を見てしまうと、ここで逃したら次はないかもしれないと考えてしまうわけです。現場でどうしようかとしばらく悩んだ末に『これください』と思い切ったわけです」。




フェラーリのスケドーニを彷彿とさせる。広く大きくラウンドしたリアウインドー。独特のリアビューも117クーペの大きな魅力だ。





エンジンはSUツインキャブ仕様の1.8L SOHC。ハイテンションコード類が代えられた以外はノーマルだ。





撮影中もその傍らで、腕組をしながら117クーペに見入るオーナー。飽きさせないデザインであることが伝わってくる。

【3】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 06月 Vol.169 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1975年式 いすゞ 117クーペ XC (全3記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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