グレーゾーンはNG 旧車の輸出入を行う際には、完全に合法な手段をとることが重要に|JDMレジェンズ  Vol.3

この240Zとスターレットはビゼックさん個人所有のクルマ。スターレットはサーキット走行用にセッティングしてあるものの「8歳になる長女が『スターレットは自分が乗る最初のクルマにする』と言っているので、手放すわけにいきません」と微笑みながら言った。

       
【JDMレジェンズ  Vol.3】

【2】から続く

 その後コブさんは本業が忙しく、テキサス州の本社にとどまりがちになり、ソルトレイクシティを本拠地としていた旧車輸入部門は本業と分離して、この輸入業をビゼックさんが単独で引き継ぐこととなった。こうして2009年「JDMレジェンズ」は独立したのだった。

 クルマには各国の法規が強く関わるため、国をまたぐ輸出入は容易ではない。国外に送りつけたところで、公道に出せるまでの手間と費用は膨大になるのが常だ。自動車メーカーを始め各国の経済団体は、個人レベルの輸出入が増加して、経済的な影響が出始めることに好感をもたない場合も多い。

 アメリカでは特に、クルマと犯罪を結びつけて考える傾向が強い。怪しげなクルマは犯罪のにおいがする、というわけだ。そのため法律の適用が徐々に厳しくなってきていて、2000年くらいまでは個人輸入もまだ比較的簡単にできたようだったが、2005年ごろから近年にかけては、法律が厳格に適用され始めている。法の抜け道を探すかのように、州法の適用が比較的緩やかな州へ陸路を通じてカナダやメキシコなどから入れてしまえば大丈夫、というまことしとやかな噂もあるが、これも最近はきっちりと監視されているようである。そんな状況にあって、旧車の輸出入を行う際には、グレーゾーンではなく、完全に合法な手段をとることが近年ことさら重要になってきている。

 たとえ世の流れが逆風になっても、外国にだけ存在するクルマを好きになって、それに乗ってみたいと思う人たちのパワーというものは、時に強烈にふくれあがる。中でも我らが日本の、日産スカイラインは常に世界の憧れの的だ。歴代スカイラインはほとんど日本国外へ正規輸出されなかったからだ。

 従来から、歴史的に希少なヨーロッパのクルマや、世界の有名レースで優勝したレースカーなどは、世界規模で取引きされてきた。貴重な絵画にも引けを取らないほど高額の個体は、日本国内にも存在する。それは自動車博物館に展示されていたり、個人コレクターの計らいでヒストリックカーレースやコンコースデレガンスに姿を見せたりする。そんな勇姿を、おそらく多くの人が見たことがあるだろう。

 グローバリゼーションとインターネットでつながれた今の世界で、希少なクルマを求める欲求は新しい趣向を見せ始めている。量産車であっても、これまでは世界から隠れるように存在していた日本生まれの旧車が、世界を舞台にしたコレクターカーへ仲間入りする段階へ来たということを意味するのだ。


ショップトラックとして重宝しているダットサン620ピックアップなど【写真13枚】





ショップ内の正面奥の壁は、旧車パーツやポスターで装飾されており、その下に作り付けられていた奥行きの浅い作業台が、2つのつり下げランプで照らし出されている。そんな芸術的な作業場が印象的だった。


【4】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 06月 Vol.169 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

JDMレジェンズ (全4記事)

関連記事: ニッポン旧車の楽しみ方

text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

RECOMMENDED

RELATED

RANKING