州営のオフロード車用公園があるの!? 「遊びに行っちゃうよ」とジンさん|1971年式 トヨタ ランドクルーザー  Vol.4

緑色のFJ40の内装は、交換されたメーター類を除けば、かなりオリジナルに近い状態だった。それは4速のフロアシフトレバーを含め必要最低限ともいえるデザインで、ドアにも内張りなどなく鉄板むき出しの武骨さ。

       
【1971年式 トヨタ ランドクルーザー  Vol.4】

【3】から続く

 アメリカのオフロードファンにとって、本家ジープではなくトヨタ製4駆を選ぶ理由は一体何なのだろう。

「FJ40はジープよりトラブルが少ないし、アフターマーケットのパーツも手に入れやすい。1975年式以前はスモッグ(本誌144号の記事に詳しい)の心配もないので、エンジンの乗せ換えも簡単。同時代のジープはと言うと、FJ40に比べてホイールベースが短いので安定性が今ひとつ。新しいジープはホイールベースが長いけれど、サスがコイルオーバーなんです。みんなリーフスプリングのほうが好きだから」。

 アメリカのFJ40ファンの気持ちをジンさんはこう代弁した。だからFJ40を常に探している人が多いのも事実。

「きちんとレストアしたFJ40の車両には、ジープではあり得ないくらい高額な値段がつきます。見栄えもしない私のFJ40だって譲ってくれと言われたことがずいぶんあるんですよ」。

 そう言葉を続け、アメリカでのFJ40の人気ぶりを教えてくれた。

 サラリーマンで25年間以上同じ会社に勤め続けて、今はLED製品の生産管理のITが担当だという。

「しばらくはもう仕事が忙しくて大変でしたが、ここに来て少し落ち着いてきたので、ようやく趣味の時間がまた取れるようになりました」。

 そんな言葉からうかがえたのは、忙しい職場での活躍ぶり。毎週土曜日にある子供のスイミング教室の送迎は奥さんに任せて、自分は「遊びに行っちゃうよ」と言うジンさん。そのお気に入りの行き先の1つが、自宅からクルマで1時間ほどの山中にあるカリフォルニア州営公園のこのホリスターヒルズだ。この公園は、広大な敷地にオフロード車が自由に走り回れる環境がある。こんなオフロード車専用の公営公園があるのがアメリカのすごいところ。州政府の予算を使って運営するからには、公益にかなっているということだろう。

 ホリスターヒルズは、私有地として所有者家族4代にわたって受け継がれてきた土地で、そこで狩猟目的の車両が使われたのが始まり。そして50年代になると、オフロード自体を楽しむようになったようだ。70年には私営オフロード場として一般開放され、75年にはカリフォルニア州が敷地を買い上げ、そのまま州営公園としたものである。

 現在では近隣への騒音に細心の注意を払うだけでなく、公園内の自然を積極的に保護することも目的として、オフロードファンのために運営されている。公園内を縦断するサンアンドレアス断層の両側で地質や地形が異なり、それもこの公園でのオフロードランに独特のテイストを与えているとのこと。

 こんな恵まれた環境で、のびのびと羽を広げる我らトヨタFJ40ランクル。自然の中で本家ジープを追いかけ回している風景が見られたりもするのだ。

トヨタ製F型からシボレー製のV8エンジン(スモールブロック型)に換装されたエンジンなど【写真13枚】



赤いFJ40と同様に、この緑色のFJ40もリーフスプリング式のサスペンションをリバースシャックルへと変更してある。車両用途に応じた適切なサスペンション動作を求めた結果だ。ドラムのままのブレーキは、ディスクへと改造計画中とのこと。





FJ40ではステアリングボックスがボンネット先端から前方へ飛び出して、フロントバンパーとの間に露出していた。左ハンドル仕様は、そこから長いロッドを介してホイールのナックルを動かし操舵する仕組みになっていた。





エンジンはトヨタ製F型からシボレー製のV8エンジン(スモールブロック型)に換装済み。「アメリカにあるFJ40の、2台に1台はシボレー製V8に換装されているだろう」とジンさんが言うほどに、一般的で簡単なスワップだ。頑丈なFJ40のホディや駆動系は補強なしでV8のパワーに対応できるし、アメリカではシボレー製のエンジンパーツのほうが手に入りやすいのが理由だとのこと。


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 04月 Vol.168 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1971年式 トヨタ ランドクルーザー (全4記事)

関連記事: ニッポン旧車の楽しみ方

関連記事: ランドクルーザー

text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

RECOMMENDED

RELATED

RANKING