ロンサムカーボーイとともに「この景色の中でクルマを走らせるのが大好きなんです」|1979年式 日産 サニー 1400 GL  Vol.3

カチッとしたボクシーな形で存在感を伝えてくる310サニーのフォルム。旧車ファンにはこうした質感がたまらない魅力となる。

       
【1979年式 日産 サニー 1400 GL  Vol.3】

 旧車オーナーの愛車観、あるいは旧車のある生活を読者にお伝えしたくて立ち上げた新連載企画「旧車生活へのいざない」だが、最初から非常に個性豊かなオーナーに巡り合うことができた。

【2】から続く

 ピカピカになったサニーを前にして、オーナーに旧車観を尋ねてみたが、これが思いよらぬ回答だった。

「現行車とか旧車とか区別する意識があまりないんです。どれもクルマなんですが、いいなぁと感じるのは、すべて旧車なんです。存在感があるというか、形があるというか、逆に今のクルマには引かれるものがなくて……」

 だから、その使い方にも特別な意識がなく、ごくふつうに使っている。
「自分は足として使っています。片道30kmぐらいの通勤なんですけど、毎日これで通っていますよ。ちゃんと走るし、なんの問題もないです」

 メンテナンスといっても特別に手がかかるわけではない。もともと実用車として作られたクルマだし、この時代なら機械的にももう安定した時代だ。「ただ、パーツに関しては時代を感じますね。ないんですよ。それでも310サニーはメジャーな車種なんで、希少車に比べれば恵まれていますけど、消耗品の数少ないパーツをのぞけば新品はないですからね。旧車の場合、気になるパーツを目にしたら、手に入れておくというのは鉄則ですね。自分もこのあいだ、オークションでダッシュボードをかなり安く手に入れました(笑)」


センタークラスター/コンソールにおさまる自慢の一品。パイオニアのロンサムカーボーイが3点セットなど【写真12枚】



4ドアセダンという言葉がピッタリとくるリアビュー。510ブルーバードが無理なら310サニーという選択肢も納得できる1ショットだ。


 こうしたあたりは旧車オーナーに共通する心構えだろう。また、旧車仲間の存在も大きいという。互いに不要なパーツを都合しあったりしているという。サニーに装着されたダッツンコンペ・ステアリングもこうして手に入れたという。

 運転席はオリジナルでなくレカロのリクライニングタイプを装着していたが、やはり先輩が不要になったと聞き、あわててもらいに行ったという。旧車仲間がいることは、いろいろな意味でプラスの要素が圧倒的に多い。

 オーナー、こうした環境をフルに活用してコストパフォーマンスに優れた旧車ライフを楽しんでいるようだ。

 車両の外観を撮るため同乗して郊外に移動。流れに逆らわない運転スタイルが印象的だった。本人いわく「自己流」というが、パワーのオン/オフとステアリングを連携させたヨーの立ち上げ方がうまい。冬場凍結路となる地域なだけに、毎日の運転の中で自然と身につけていった技術なのだろう。

 眼前に冠雪した山並みを視野に入れての甲斐路ドライブは雄大のひと言。振り返れば、背景は5合目あたりまで雪化粧をした霊峰富士、最高である。

「この景色の中でクルマを走らせるのが大好きなんです。ここの自然環境や土地柄が合っているんでしょうね」

 そういえば、つい最近何かのアンケートで、理想の田舎№1に山梨県が選ばれていたことを思い出した。この雄大な景色の中でお気に入りのクルマを走らせられるオーナーの環境が、急に羨ましくなってしまった。310サニーにとっても、雑多な市街地より、はるかに似合う生息環境だ。

 ひととおりの取材を終え、最後に案内してくれたのがオーナー行きつけの店「フープティ」だった。大きな目玉が商標の「ムーンアイズ」グッズを扱うお店で、同代表の渥見さんが大の旧車ファン。店舗の横には2代目MS40系クラウンのワゴンモデル「カスタム」が置かれていた。

「時間があればここへ来て、クルマの話や雑談で楽しんでいます。やはり旧車オーナーの先輩がいるというのは心強いですし情報も豊富です。ここへ来るのが楽しくて」

 オーナーにとっての理想のクルマ環境を見せてもらった1日となった。


【1】【2】から続く




ムーンアイズのグッズを扱う「Hooptie(フープティ)」が嶋津さんお気に入りのお店。





現行車と旧車が店前のスペースに並ぶのも「Hooptie(フープティ)」ならではの光景。





同店の代表も大の旧車ファン。オーナーにとっては旧車ライフの大先輩となり話のひとつひとつがおもしろいという。もちろん「たまにはグッズを買っていく(笑)」付き合いだ。



初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 04月 Vol.168 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1979年式 日産 サニー 1400 GL (全3記事)

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text & photo : AKIHIKO OUCHI/大内明彦

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