そして完成! 「7年は、いくらなんでも時間のかかりすぎだと自分も思いました」|1970年式トヨペット クラウン ピックアップ  Vol.4

オーナーの夢であったV8エンジンが、クラウンのエンジンルームにストレスなく収まる。350改360の排気量(約5900cc)と機械式4速オートマのおかげで、全国各地のイベントに行けるほど快適だ。

       
【1970年式トヨペット クラウン ピックアップ  Vol.4】

【3】から続く

 「ホイール、どうしますか?」クラウンピックアップの「クラウンV8載せ換え計画」。クラウンピックアップがオーナーの元を離れ、一本の電話とともに、実際のプロジェクトがスタートするまでに5年もの時間を要した。

 そして完成にこぎ着けたのは、あの電話があってから7年後のこと。プロジェクトのスタートから数えれば、すでに12年が経っていた。オーナーは、「7年は、いくらなんでも時間のかかりすぎだと自分も思いました。でも、アート・オブ・ワークの鈴木英彦代表から送られてくる作業工程の写真を見て、同時に丁寧な説明を聞くと、1つずつの作業に理由があること、よく考えられていることが分かるから、仕方ないことだなと気付きました。

 70年式というベースカーの時代背景も考慮して、エンジンにインジェクションは使っていません。オルタネーターやコンプレッサーを固定するステーもすべてワンオフパーツにクロームをかけています。バルブカバーとデザインを共有するエアクリーナーカバーもアルミ板を削って作っていますし、エアコンのコンプレッサーの配管だってフィッティングの位置を変えて向きを揃えるなど、もうすべてがスペシャル。

 バッテリーのキルスイッチやエアサスのミストセパレーターなどは、すぐに手が届くようにとベッドサイドのフタの中に隠してあるんですよ。これらを見せられたら、時間がかかったのも納得。ムリしてでも鈴木さんにお願いしたのは正解だったと思います」

 以上を経て、オーナーの元に納車されたのは2009年早々のこと。早いものでそれからもう7年が経過した(取材当時)が、クラウンは通勤にも使えば、イベントにも行く。大切に作られたクルマだからといって、決して過保護に扱われていないようで、ボディのリフレッシュをする計画もあるのだとか。

 アメリカンV8サウンドを豪快に響かせる国産旧車として、エンジン載せ換えだけで終わらない、材料にも形状にも加工にもフィニッシュにも理由のある本物のカスタムカーとして、このクラウンピックアップにはまだまだ元気に、そして美しく走ってもらいたいと願うばかりだ。ここまでやってこそ真のカスタムだ! 

全体にメッキをかけた後、メーター外周だけマスキングしてペイントすることで純正同様のメッキの縁取りを再現したインパネなど【写真21枚】



単にセダン用のリアシートを張り替えただけでは終わらない。中央にアームレストも設けているのだ。





マスターバックを室内のインパネ下部に移動。機能性を失わずにエンジンルームの美観向上を実現している。






全体にメッキをかけた後、メーター外周だけマスキングしてペイントすることで、純正同様のメッキの縁取りを再現した。ステアリングはバドニック。ブランクぶたのポジションにタコメーターを埋め込むワザもアリ。



1970年式トヨペット クラウン ピックアップ
SPECIFICATIONS 諸元
● エクステリア:ヴィッツ純正ネイビーメタリックオールペン、
スーパーデラックス用フロントドア移植、
サイドモール裏発泡ウレタン充填、
テールゲートアンダープレスライン新設、
Rバンパーナンバーポケット加工/ステーボルトスムージング、
ムーンアイズ赤テールレンズ、
開閉式ベッドサイドフィラーパネル
(エアサス&バッテリーキルスイッチ入り)、
ベッド内タイヤハウス片側10cmワイド化、ベッドフロアリブ整形
● エンジン:シボレー350
スモールブロック改360(各部スムージング済み)、
カムシャフト交換、カルカスタムアルミバルブカバー、
ホーリー600cfmキャブレター、ワンオフクロームブラケット、
ファイヤーウォール/インナーフェンダースムージング、
ヴィンテージエア・エアコンキット、
エアコンコンプレッサーワンオフ加工
● 点火系:GMハイエナジーイグニッション
● 吸排気系: ワンオフアルミエアクリーナーカバー、
ウェイアンドインテークマニホールド、
ワンオフステンレスヘダース/マフラー
● 冷却系: 汎用アルミラジエーター+電動ファン
● 駆動系:シボレーTH700R4ミッション、3rdカマロ用プロペラシャフト、
GM10ボルトリアエンド
(ワンオフ鍛造シャフト入り7インチナロード加工済み)、
モーザースタビライジングハウジングカバー
● サスペンション: (F)ワンオフフレーム/
ワンオフステンレスチューブラーアーム、
マスタングⅡ2インチドロップスピンドル、ファイアストンエアバッグ、
ユーノスロードスター用ラック&ピニオン加工設置(クーラー付き)、
(R)ワンオフパラレル4リンク+ダイアゴナルアーム、
リアフレーム2インチナロード&レイズド
● ブレーキ:(F)シボレーカマロ用メトリックキャリパー/
フォードグラナダ11インチローター、
(R)ECIリアディスクブレーキキット、マスターバック車内移設
● インテリア:クローム+シルバーペイントメーターパネル、
オートメータータコメーター、
ローカーシフトゲージ、バドニックビレットステアリング、
アームレスト組み込み本革張り替えベンチシート、
130系ハイラックスサーフ用ドアアームレスト移植、ETC、
オーディオヘッドユニット&ウオッシャータンク入りグローブボックス
● タイヤ: ファイアストン (F)195/55R15 (R) 295/50R15
● ホイール:ハリブランドスプリント (F)15×7.0 (R)15×10.0


初出:ノスタルジックスピード 2016年 3月号 vol.009(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1970年式トヨペット クラウン ピックアップ (全4記事)

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text : AKIO SATO/佐藤昭夫 photo : ISAO YATSUI/谷井 功

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