モールのウラ側に発泡ウレタン!? 仕事に「やっつけ仕事」の文字はない。|1970年式トヨペット クラウン ピックアップ  Vol.3

全体にメッキをかけた後、メーター外周だけマスキングしてペイントすることで、純正同様のメッキの縁取りを再現した。ステアリングはバドニック。ブランクぶたのポジションにタコメーターを埋め込むワザもアリ。

       
【1970年式トヨペット クラウン ピックアップ  Vol.3】

【2】から続く

 クラウンピックアップの「クラウンV8載せ換え計画」。クラウンピックアップがオーナーの元を離れ、実際のプロジェクトがスタートするまでに5年もの時間を要した。

 車高を落としても快適に走れるため、履かせたいホイールとタイヤサイズから、アッパーとロワアームのあるべき位置を決める。「ホイール、どうしますか?」。5年目、そのスタートラインは自動車工学の基礎を踏まえた問い合わせだった。

 フロントサスにここまでの労力を惜しまない製作を担当するアート・オブ・ワークの鈴木英彦代表の辞書に、「やっつけ仕事」の文字はない。V8エンジンを積んでもボンネットから飛び出さないよう、高さを逆算した上でのフレーム製作&エアクリーナー等の加工、リーフリジッドからGM10ボルトデフ付き4リンクとなるリアサスへの変更など、機能するのは当然のこと。ショーにエントリーした際も見応えのある「作品」として、クラウンのメカは組み立てられていく。

 ボディに関しては、オーナーが用意したピックアップとセダンのほかに、鈴木さんが独自に入手したピックアップの「3コイチ」を土台に、ボルト類やリベットも、外せるものはすべて外した徹底的なレストアを敢行する。

 ここで1つエピソードを紹介すると、新車と同じコンディションに戻すことよりも、いかに美しく機能的かに重点をおいた製作者のアート・オブ・ワークの鈴木英彦代表は、「ボルトを介してボディと固定するモールの取り付け方では、ボルト穴からサビが生まれる可能性もあるし、モールとボディとのフィット感が一定にならない」と、ボディ側のボルト穴をすべて埋めている。そして、モールのウラ側に発泡ウレタンを充填し、スキマを埋めた上でボディに張り付けたというから、なんとも凄まじい。

クラウンのエンジンルームにストレスなく収まるV8エンジン。メーカー装着よりもピッタリと収まるサイドモールのストレート具合など【写真21枚】




エアクリーナーを加工して薄くすることで、ボンネットもキチンと閉まる。



狭いエンジンルーム内にしまい込むために、複雑怪奇な形状となったステンレスのワンオフヘダース。





本来、上を向いているエアコンコンプレッサーのフィッティングを、全体の美しさやバランスを優先するためにリア側へと移動。こんなマネ、ほかのショップでは絶対にやってくれない。いや、それ以前に気付かない。





オーナーの夢であったV8エンジンが、クラウンのエンジンルームにストレスなく収まる。



【4】に続く

1970年式トヨペット クラウン ピックアップ
SPECIFICATIONS 諸元
● エクステリア:ヴィッツ純正ネイビーメタリックオールペン、
スーパーデラックス用フロントドア移植、
サイドモール裏発泡ウレタン充填、
テールゲートアンダープレスライン新設、
Rバンパーナンバーポケット加工/ステーボルトスムージング、
ムーンアイズ赤テールレンズ、
開閉式ベッドサイドフィラーパネル
(エアサス&バッテリーキルスイッチ入り)、
ベッド内タイヤハウス片側10cmワイド化、ベッドフロアリブ整形
● エンジン:シボレー350
スモールブロック改360(各部スムージング済み)、
カムシャフト交換、カルカスタムアルミバルブカバー、
ホーリー600cfmキャブレター、ワンオフクロームブラケット、
ファイヤーウォール/インナーフェンダースムージング、
ヴィンテージエア・エアコンキット、
エアコンコンプレッサーワンオフ加工
● 点火系:GMハイエナジーイグニッション
● 吸排気系: ワンオフアルミエアクリーナーカバー、
ウェイアンドインテークマニホールド、
ワンオフステンレスヘダース/マフラー
● 冷却系: 汎用アルミラジエーター+電動ファン
● 駆動系:シボレーTH700R4ミッション、3rdカマロ用プロペラシャフト、
GM10ボルトリアエンド
(ワンオフ鍛造シャフト入り7インチナロード加工済み)、
モーザースタビライジングハウジングカバー
● サスペンション: (F)ワンオフフレーム/
ワンオフステンレスチューブラーアーム、
マスタングⅡ2インチドロップスピンドル、ファイアストンエアバッグ、
ユーノスロードスター用ラック&ピニオン加工設置(クーラー付き)、
(R)ワンオフパラレル4リンク+ダイアゴナルアーム、
リアフレーム2インチナロード&レイズド
● ブレーキ:(F)シボレーカマロ用メトリックキャリパー/
フォードグラナダ11インチローター、
(R)ECIリアディスクブレーキキット、マスターバック車内移設
● インテリア:クローム+シルバーペイントメーターパネル、
オートメータータコメーター、
ローカーシフトゲージ、バドニックビレットステアリング、
アームレスト組み込み本革張り替えベンチシート、
130系ハイラックスサーフ用ドアアームレスト移植、ETC、
オーディオヘッドユニット&ウオッシャータンク入りグローブボックス
● タイヤ: ファイアストン (F)195/55R15 (R) 295/50R15
● ホイール:ハリブランドスプリント (F)15×7.0 (R)15×10.0


初出:ノスタルジックスピード 2016年 3月号 vol.009(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1970年式トヨペット クラウン ピックアップ (全4記事)

関連記事:N.SPEED HOT ROD

関連記事: クラウン

text : AKIO SATO/佐藤昭夫 photo : ISAO YATSUI/谷井 功

RECOMMENDED

RELATED

RANKING