レーシングやラリーを連想させる特別な称号「R」|瞬く間に広がった特別な証、Rへの憧憬と崇拝  Vol.1

究極の高性能を追求するモータースポーツの世界から引き継がれた「RACING」の頭文字「R」。

       
【瞬く間に広がった特別な証、Rへの憧憬と崇拝  Vol.1】

 レーシングやラリーを連想させる特別な称号「R」。高性能化の一途をたどった80年代、ライバルとの差別化を図るためにこの証は広まり、その中のほんの一握りの本物はファンから憧れと尊敬の念を一身に集めた。

 キャブレターの数を武器に、高性能エンジンを積んだホットバージョンが日本に誕生するのは、1960年代の半ばである。誇らしげに付けられたグレードバッジは「GRAND TOURING」の頭文字を取った「GT」だ。いすゞのベレット1600GTとプリンス自動車のスカイラインGTが先陣を切り、浸透した。だが、パワー競争が激化してくるとGTのエンブレムだけでは高性能車と認めなくなった。そこで、さらなる高みを目指し、付けられたのが「RACING」の頭文字「R」である。究極の高性能を追求するモータースポーツの世界からレーシングの文字を取り、GTと差別化を図ったのだ。

 記念すべき最初の作品となったのは、ハコスカの最高峰バージョンとして、1969年2月に送り出されたGT‐Rだ。このクルマはレースで勝つために生まれてきた究極のロードゴーイングカーである。エンジンもレーシングカーのR380に積まれていたGR8型の血を引く直列6気筒のDOHC4バルブを積んでいた。同じ時期、ベレットも1600GTにタイプR(GTR)を設定する。

 70年代になると「R」の称号を付けたクルマがスポーツモデルの代名詞となった。だが、スカイラインGT‐Rに気兼ねしていたのだろう、「GT」に代えて、他のアルファベットを添えて高性能を誇示している。三菱がDOHCエンジンを積むGTOの最高峰モデルに「MR」の名を与えたのが代表例だ。そして、ランサーとFTO、後期型のGTOには「GSR」のネーミングを付けている。これはグランドスポーツを略した「GS」の上位に位置するスポーツモデルという意味だ。ランサーはラリーでも大暴れしたから、ラリーの「R」を指している。これもあながち間違いではない。


初代マーチのR、トラッドサニーのVR、2代目アルトのホットモデルRS-Rなど【写真12枚】


K10 MARCH R

初代マーチに設定されたマーチR。このRはラリーの意味合いが濃く、競技用ベース車両として販売された。パワーユニットは1L直4エンジンにターボとスーパーチャージャーの2つの過給器を組み合わせたツインチャージャーを搭載し、トランスミッションには専用の超クロスミッションを採用。全日本ラリーなどで活躍。




B12 SUNNY VR

トラッドサニーにも特別なRが存在した。それがVRで、この名前は「Version for Rally」に由来する。その名の通り、国内ラリー向けに作られた競技用ベース車だ。廉価グレードをベースにCA16型エンジン、クロスミッションやビスカスLSDを装備。ボディの軽量化と装備の簡略化により車重は1トンを切るまでにダイエットしている。




CC72V ALTOWORKS RS-R

1987年に登場した2代目アルトのホットモデルがアルトワークス。搭載エンジンは3気筒4バルブDOHCインタークーラーターボで、圧倒的なパワーを発揮。これが軽自動車に64psの出力規制が設けられる発端となった。また、廉価版のRS-S、FFのRS-X、フルタイム4WDのRS-Rを用意。RS-Rはラリーやジムカーナなどで活躍した。




R31 SKYLINE GTS-R

グループA規定で行われた全日本ツーリングカー選手権のホモロゲーション取得のために、日産が送り込んだ800台限定のエボリューションモデル。そのスペックはまさにレーシングカーそのもので、ギャレットハイフロータービンや等長エキマニ、大型インタークーラーなどを装着。購入者は抽選で決められるほど話題となった。



【2】【3】に続く

初出:ハチマルヒーロー 2014年 05月号 vol.25(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

瞬く間に広がった特別な証、Rへの憧憬と崇拝 (全3記事)

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