「20年来の夢が叶いました」フィリピンから輸入された、車体番号100番台の1台|1982年式 日産 240RS  Vol.3

直線基調のスタイリングに、角形オーバーフェンダーがよく似合う。ボンネットのほか、前後バンパーやトランクリッドもFRP製となる。

       
【1982年式 日産 240RS  Vol.3】

【2】から続く

 1979年にデビューしたS110シルビアをベースとして、WRC参戦車両として開発された240RS。

 サスペンションも、もちろんラリーを想定したチューニングが施されている。フロントは車高調整式で、キャンバーのほかキャスター調整が可能なピロアッパーマウントを装備。ショックアブソーバーは、長時間の悪路走行に耐えるため、オイルと高圧ガス併用のダブルアクションタイプとしているところも興味深い。一方リアは、形式こそ市販車のS110と同じ4リンクリジットだが、アッパーリンク、ロワリンクともに支点位置を可変式とすることで、幅広いセッティングを可能としている。

 こうして隅々にまで手が入れられた240RSは、1983年のモンテカルロラリーでデビュー。FRラリーカーとしてのポテンシャルは非常に高く、日産の期待も大きかった。しかし、ライバルたちがターボや4WDで武装してきたため、上位には食い込むものの、栄冠をつかむまでには至らなかった。3年間のワークス活動のなかで、1983年のニュージーランドラリーで獲得した2位が最高位だった。

 ここに登場する個体は、フィリピンから輸入された車体番号100番台の左ハンドル仕様。9年前に手に入れたというオーナー曰く「日本で車検をとるのに、2年ほどかかりました」と当時の苦労を話してくれた。また、この個体は実際にラリーに参戦していたようで、下回りやフロント部にダメージが残っているという。ただ、機関系にはこれまで大きなトラブルはなく、今でも各地のイベントに出向いているそうだ。

OWNER’S VOICE/フィリピンからの3枚の写真だけで購入を決意

 もともとS20型以来の4バルブDOHCということでFJ20型に魅力を感じており、1982年に新車でS110ガゼール(RS)を購入。しかし、その後240RSが登場すると、同じS110ということから必然的に引かれていったという。そして9年前、フィリピンにあった個体を3枚の写真だけで判断し、思い切って購入。「20年来の夢が叶いました」と目を細めるオーナーだが、消耗品の確保とルーフのサビ修理が当面の目標だそうだ。



ラリーベース車ということもあり、インパネは極めてシンプル。ダッシュボード助手席側に装着されるラリーコンピューターなど【写真20枚】



インパネ中央に配置されるメーターは、右がスピードで左がタコ。スピードはkm/hとMPHが併記されており、200km/hフルスケール。タコは8000rpmにリミットを設定。










ロールケージが張り巡らされた室内には、フルバケットシートが装着される。なお助手席側は、使い勝手を考慮してS110純正シートに交換してある。



1982年式 日産 240RS(BS110)
SPECIFICATIONS 諸元
全長×全幅×全高(mm) 4330×1800×1310
ホイールベース(mm)  2400
トレッド前/後(mm) 1410/1395
車両重量(kg)  970
エンジン型式  FJ24型
エンジン種類 直列4気筒DOHC
総排気量(cc) 2340
ボア×ストローク(mm) 92.0×88.0
圧縮比 11.0:1
最高出力(ps/rpm) 240/7200
最大トルク(kg-m/rpm) 24.0/6000
変速比 1速 2.818/2速 1.973/3速 1.470/4速 1.192/5速 1.000/後退3.382
最終減速比 4.625
ステアリング リサーキュレーティングボール式
サスペンション前/後 ストラット/4リンク
ブレーキ前/後 ベンチレーテッドディスク/ディスク
タイヤ 215/60R14(前後とも)
発売当時価格 550万円


初出:ハチマルヒーロー 2014年 05月号 vol.25(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1982年式 日産240RS (全3記事)

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text : Rino Creative/リノクリエイティブ photo : AKIO HIRANO/平野 陽

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