「元祖TC24‐B1はショートストロークで気持ちよく回したい」|1974年式 フェアレディ Z-L  Vol.4

思い入れの強いTC24-B1を搭載するだけに、「不釣り合いな車体には載せたくない」と、ボディメイクに関しては、「ペイント&ボディワークス寺元」に依頼。各部に補強が入れられているが、見た目はノーマル風というスタイル。完成して10年が経つが、ガレージ保管の恩恵もあってが、コンディションは抜群。

       
【1974年式 フェアレディ Z-L  Vol.4】

【3】から続く

  「本物のツインカム」というOS技研がTC24‐B1の宣伝に使っていたフレーズが成人してからも頭から離れず、元祖TC24‐B1を探しはじめたトミタクさん。10年以上が経過した2003年のある日、ようやくホンモノのTC24‐B1と巡りあえたが、そのエンジンは不動だった。そしてワンオーナーのS30Zを手に入れ、並行してレストアを施し、始動へ。「ここまでは、あくまでもオリジナル+αの状態に戻したにすぎない」。ここからさらに10年を費やし、じっくりとトミタク流の改良を加えていった。

シートは当時物のオートルック製フルバケを左右に装着。ポルシェ930ターボのリアゲート用ダンパーを流用したボンネットダンパーなど【写真24枚】

 やがて走行距離も延び、復活させた元祖TC24‐B1もオーバーホール時期を迎える。そこで腰下を中心に、大幅な仕様変更を企画することになった。

「TC24‐B1はショートストロークで気持ちよく回したい」と、LY28型レース用オプションクランクを選択し、79mmのストロークをキープ。ピストンはトミタクが図面を作成して、OS技研で製作した鍛造φ89mmを組み込む。ボアアップのほか、強度の確保と軽量化を強く意識した設計となっていて、力強いパンチを演出するために圧縮比は13.2に設定。鋭いピックアップと吹け上がりが個性となる3L仕様が完成し、350psを発生した。

 また、扱いやすさを維持しながら、エンジン性能をフルに引き出すため、クラッチはOS技研のカーボン製ツインプレートを選ぶ。フライホイールもOS技研のクロモリで、こちらはエンジンで十分にトルクアップすることを前提にしたスーパーレスポンス仕様。その重量はたったの2.6kgしかない。極限まで薄く設計することで、クランクを加工せず、重量物を前方にオフセットさせることにも成功している。

 なお、ミッションはS14用の71CをS30Zに載せる場合、メンバーやレバーの位置がズレるため、標準の71Bのミッションケースに、OS技研のS14用5速フルクロスを組み込んでいる。
 足まわりはレース用オプションの車高調を中心に構成するが、さすがに当時の物はへたり切っているので、AE86用のトキコHTSダンパーを組み込んでリフレッシュ。サスペンションブッシュも強化品へと総入れ換えた。

 一般的に高出力を手に入れると、挙動も大味になる傾向が強いが、トータルの完成度を重視するトミタクZでは、ヨレ感を取り払い、フットワークでもリアルスポーツらしいシャープさとダイレクト感を実現じているのだ。

OWNER’S VOICE

「TC24-B1をベストコンディションで動態保存していくことがボクの使命です」とトミタクさん。自宅ガレージには旋盤、交直両用溶接機、フライス盤などを揃える筋金入りのプライベーターだ。ロッカーアームを高精度で研磨する機械など、自作した機材も多数存在する。これまでに「あのエンジンを動かすのであれば」と、多くの人が協力してくれたので、元祖TC24-B1を維持していくための環境作りを徹底。お世話になった人々のためにも、いつまでも乗り続けたいと考えているのだ。







ボンネットの裏側には、「長瀬発動機」、「寺元」の文字のほか、BREを設立したレーシングカーデザイナーのピート・ブロックさんのサインが。さらにその隣には、S30Zのスタイリングを担当した松尾良彦さんのサインまで残されていた。ちゃんと誰のサインか分かるように説明まで貼ってある。


1974年式 フェアレディ Z-L(S30)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:サファリブラウン(ボディカラー)、ワークス寺元フルレストア、リスタード製カーボンボンネット、フロントスポイラー(当時モノ)、フロントクリアウインカー、デリカ用バックランプ流用サイドマーカー
■エンジン:L28型改3Lトミタク・フルチューン仕様、OS技研製TC24-B1(81年式)、ボアφ89mm×ストローク79mm(圧縮比13.2)、OS技研製カム(320度、10.5mmリフト)、バルブサイズ(INφ35.5mm、EXφ30.8mm:TC24-B1専用設計)、ホンダN360用バルブスプリング、コッター、リテーナー(当時のOS技研純正)、OS技研製鍛造φ89mmピストン、SAENZ製H断面コンロッド(LY28型用クランクに合わせて加工)、LY28型用オプションクランク(8穴)、ニスモ製コンロッド(幅を詰める加工)、オイルパン加工(ハコスカ用→S30Z)、ウエーバー50DCO1/SP、長瀬発動機製φ50.8mm等長タコ足、φ60.5mmフルデュアルマフラー
■点火系:マロリー製デスビ改、MSD 6AL、永井電子製プラグコード(短縮加工)
■燃料系:BMW E30 M3用燃料ポンプ、亀有製レギュレーター、トミタク製燃料デリバリーパイプ
■冷却系:910ブルーバード用ラジエーター
■駆動系:OS技研製オフセットフライホイール(内容物を9mmエンジン側に寄せた)、カーボンツインクラッチ、S14用OS技研製5速フルクロス(71Bのケースに組み込み)、スーパーロックLSD(トミタク仕様)
■サスペンション:純正オプション車高調、アメリカ製強化ブッシュ
■ブレーキ:(F)純正オプションMK63+S13シルビア用ベンチローター
■インテリア:Defiφ115mmタコメーター&φ60mm追加メーター(油圧、油温、水温)、ラムコ製φ50mm燃料計、オートルック製バケットシート(当時モノ)、ダッツンコンペステアリング、クスコ製ロールバー
■タイヤ:アドバン ネオバAD07 (F)195/50R15 (R)205/50R15
■ホイール:RSワタナベ (F)15×7.5J (R)15×8J


初出:ノスタルジックスピード 2016年 3月号 vol.009 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1974年式 フェアレディ Z-L (全4記事)

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text:HIROSHI SHOUMATSUMOTO/正松本 宏 photo:RYOTA-RAW SHIMIZU/清水良太郎

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