8000rpmを許容! イチから作り上げた4K型改1430ccの直立仕様|1984年式 トヨタ スターレット XL  Vol.2

すっきりとした印象に仕上げられたエンジンルーム。

       
【1984年式 トヨタ スターレット XL  Vol.2】

ストリート仕様にふさわしい、美しさと余裕のあるパワー

【1】から続く

 素性を知っているKP61。「他人の手に渡ってしまうのは実に惜しい」と奮起。手元に迎えることを決めたオーナー。その後もう1台手に入れたことで、この1台はストリートスポーツを目指すことに。

 特に注目なのが、キッチリと作り込まれたエンジンルーム。厳選したパーツ、すっきりとしたレイアウト、ハイセンスなグレーのペイントなどにより、シンプルだが強いインパクトを放つ。

 搭載するエンジンは、ベースエンジン探しからはじめ、イチから作り上げた4K型改1430ccの直立仕様。コンロッドは運良くTRDのH断面を見つけたが、ピストンはなかなか当時物が見つからず、車両製作担当の吉良自動車が米国CP社にオリジナル品の製作をオーダー。ピストン径はφ79mmに設定し、十分なブロック強度確保しながら、4mmのボアアップを図っている。

 クランクは純正をバランス取りしたものだが、強固な材質を用いてステフナープレートを製作することで、クランクキャップの剛性を大幅に引き上げる。5種類あるメタルは各気筒で使いわけ、さらにWPC処理が施される。

 ヘッドは燃焼室容積が深くて厚みがあり、加工を進めても剛性を確保しやすい4K‐U型をベースとして選択。ビッグバルブ、強化バルブスプリング、強化リテーナーといったTRD製品を組み込み、TRDステージⅡ仕様にチューン。当時のレーステクノロジーを取り入れつつ、ストリート仕様として末長く使える耐久性を備える。

 こうして仕上がった4K型改は、圧縮比を11.1に設定し、カムはガレージモリムラ製の76度を組み込む。1430ccへの排気量アップによりトルクがたっぷりと確保されていて、ストリートでの扱いやすさにも不満なない。さらに各部の強度を確保した上でヘッドまでていねいに作り込むことで8000rpmを許容し、サーキットでも遠慮なくブン回せる痛快なエンジンに仕立てられている。

 なお、スターレットグランドカップやマイナーツーリングで活躍していたレースカーが採用していたことで、KP61オーナーにとって憧れのアプローチとなっている直立マウントも実施。エンジンマウントはTRDのAE86用強化を加工し、直立用として製作された当時物のインマニやタコ足を装着する。そのために吉良自動車では『直立プレート』と呼ぶオリジナル変換アダプターを製品化。通常は6本のボルトで計8カ所の吸排気ポートを固定しているのに対し、13本のボルトで固定するので、取り付け剛性が格段に向上。振動によってボルトがゆるみ、2次エアの吸入を起こすリスクを防いでいる。


エンジンの直立化に伴い、角度を変更しなければいけないため、傾いたミッションに合わせて曲げ加工されたシフトレバーと加工されたコンソールのシフトゲート部分など【写真30枚】



1430ccに排気量アップされた4K型は、直立化してマウントされる。本来は、助手席側に傾いている。そのため、キャブレターの取り付けが難しく、レースなどでは直立マウントで搭載されていた。





キャブはウエーバーの45DCOEを装着。トルクを確保するために、インマニはある程度の長さがある当時物の直立用を選択。エキマニも当時物の中から、トルクを重視したレイアウトのものを探し出した。





スポーツユース時の水温ヒート対策として、吉良自動車が大容量のアルミ2層式ラジエーターを製作。亀有製のローテンプサーモスタットも併用する。


【3】に続く


1984年式 トヨタ スターレット XL((KP61)
SPECIFICATIONS 諸元
■エクステリア:TRD製ルーフスポイラー、シビエヘッドライト、輸出用サードマーカー、グレー塗装(エンジンルーム)、チッピング(下回り)、アングル溶接補強(サイドシル)、アイバワークス製タワーバー
■エンジン:4K型改1430cc直立仕様、ステージⅡヘッド、ボアφ79mm×ストローク73mm(圧縮比11)/ガレージモリムラ製76度カム、TRD製ステージⅡバルブ、スプリング、リテーナー、ロッカーアーム加工(重量合わせ+タフトライド処理)、リフター軽量加工+タフトライド加工、ロッカーアームスペーサー、ヘッド面研、ポート拡大加工(チューニングショップ フォースト)、亀有製メタルガスケット1.0mm、CP製ピストン、TRD製H断面コンロッド、ブロックダミーヘッドボーリング、上面修正面研、ステフナー加工、砂落とし、純正クランクフルバランス取り、メタルWPC、TRD製オイルパン、オイルポンプ容量アップ、特注コクドベルト仕様プーリー、TRD製AE86用エンジンマウント、ウエーバー45DCOE、直立インマニ、ラバーインシュレーター、直立用タコ足、吉良自動車製φ50mmデフ下ストレートマフラー、オイルキャッチタンク
■点火系:永井電子機器製MDI、シリコンコード
■燃料系:ミツバ製燃料ポンプ
■冷却系:吉良自動車製ワンオフアルミ2層ラジエーター、セトラブ製オイルクーラー
■駆動系:OS技研製ストリートマスター(吉良自動車特注)、クラッチ&フライホイールバランス取り、直立ミッションオイルパン、ルート6製クロスミッション、TRD製LSD(ファイナル3.9)
■サスペンション:ビルズ製AE86用(F)全長調整式4kg/mm(R)タンク別体式3kg/mm
■ブレーキ:(F)AE86純正キャリパー&スリットローター+プロジェクトミュー製パッド
■インテリア:ラムコ製追加メーター(油温、水温、油圧)、スタック製タコメーター、カットオフスイッチ、レカロ製SPGフルバケットシート、タカタ製4点式ハーネス、キャロッセ製5点式ロールバー(追加バー2本)
■タイヤ:ヨコハマ エコス 165/65R13
■ホイール:SSRフォーミュラーメッシュ(F)13×7J(Bタイプ)(R)13×7J(Aタイプ)



初出:ノスタルジックスピード 2016年 3月号 vol.009 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1984年式 トヨタ スターレット XL (全3記事)

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text:HIROSHI SHOUMATSUMOTO/正松本 宏 photo:RYOTA-RAW SHIMIZU/清水良太郎

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