日本のキャブオーバー型軽トラックの草分け。先見性が光ったベビー|1962年式 東急 くろがねベビー Vol.3

東急くろがね工業の名を歴史に残した名商用車。

       
【1962年式 東急 くろがねベビー Vol.3】

【2】から続く

 多くの荷物を積んで走り回るとエンジンが破損するという、商用車として致命的なトラブル。その修理には、エンジンを他のベビーから移植するしかない。このことから、多くのベビーはボディだけが後に残ったのだろうという推察へとつながっていく。

 製造末期にはウオーターポンプを搭載した改良型を投入するも時すでに遅く、ベビーは後続の他社製軽トラックに圧倒され、姿を消していくのである。販売網が他社に比べ脆弱というのも致命的だった。ベビーとともに、くろがねの名は消えてしまった。

 しかしベビーが誇るべきは、キャブオーバー型への先見性だろう。戦前からの歴史と伝統を持つくろがねとオオタが最後に生み出したベビーは、日本のキャブオーバー型軽トラックの草分けとして、その姿を現代にも残しているのだと信じたい。


特徴的な赤いシートや、H型のシフトパターン。Babyのマークが入る、ホーンボタンなど【写真28枚】





簡素ながら独立した空間を持つ車内。オート三輪の時代からは格段の差がある。





簡素なABCペダル。ペダルゴムが一部欠品している。





 コニー愛好家でもあるオーナーは過去、本誌にコニー360とともに登場したことがある。ヂャイアントとくろがねという、オート三輪の名門2社が生み出した軽四輪を所有するという稀有なマニアだ。ベビーは現在、千葉県御宿町にある鶏卵牧場内の「レトロぶーぶ館」にて展示されている。


1962年式 東急 くろがねベビー
SPECIFICATIONS 諸元
全長 2995mm
全幅 1280mm
全高 1645mm
荷台長 1300mm
荷台幅 1170mm
荷台高 400mm
ホイールベース 1750mm
トレッド前/後 1070/1050mm
車両重量 480kg
乗車定員 2名
最大積載量 350kg
最高速度 65km/h
登坂能力 16°
最小回転半径 3.9m
エンジン型式 WE型
エンジン種類 水冷直列2気筒
総排気量 356cc
ボア×ストローク 62×59mm
圧縮比 7.0:1
最高出力 18ps/4500rpm
最大トルク 3.3kg-m/3400rpm
燃料消費率 30km/L
変速機 乾式単板前進3段後進1段
サスペンション前/後 半楕円型板ばね横置型/コイルばね独立懸架
タイヤ前後とも 4.50-12-4PR.ULT.
発売当時価格 29.8万円

【1】【2】から続く

初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 04月 Vol.168 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1962年式 東急 くろがねベビー(全3記事)

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text : RYOICHI IGAWA/井川了一 photo : MAKOTO INOUE/井上誠

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