見つかっても、エンジンを抜かれている車体ばかり|1962年式 東急 くろがねベビー Vol.2

2人乗りトラックのキャリヤー、後部が幌に覆われたキャンパスワゴン、全鋼製屋根のライトバンといったボディバリエーションがあった。ちなみに渡辺醤油店は現在廃業している。

       
【1962年式 東急 くろがねベビー Vol.2】

【1】から続く

 エンジンは水冷のオオタ系4気筒エンジンをベースに2気筒化。くろがねの名を冠しているものの、ベビー自体は実はオオタの流れを汲む。

 取材日は燃料系の不調でエンジン始動は叶わなかったが、先だって開催されたイベントでは走行シーンを見せてくれた。走行できる状態のベビーは全国でも片手で数える程度だ。

 オーナーによると、「ベビー自体は見つかることはあります。でもほとんどがエンジンを抜かれてしまっているんです。私も1台の部品取り車を持ってたんですけど、やっぱりエンジンがありませんでした」とのこと。

 その原因を石本さんは「実はこのクルマ、ウオーターポンプがありません。オーバーヒートでエンジンが壊れやすく、修理するのに他のベビーから載せ替えるしかない。だからエンジンが残っていないのだと思います」と推察している。

 フロントエンジンをそのまま180度リアに縦置きしたようなレイアウトのベビー。ラジエーターも車体後部にあり、ボディ各部にも冷却用にダクトが切られているものの、結果としては冷却能力が足らなかったのだ。

RRレイアウトのエンジンルーム。そのかなりのスペースを占拠しているスターターモーターや、ベルトとシャフトを介して駆動されるラジエターファンなど【写真28枚】



エンジンは4気筒サイドバルブを半分にし、OHV化したというのが、見ると納得できる。エンジン前部にベルハウジングを介してミッションとデフが付き後輪を駆動する極端なRR構造。





キャブレターは日立製。オリジナルは調子が悪く、仲間が持っていた同タイプに交換。真鍮フロートは樹脂へと改造している。





ベルトとシャフトを介して駆動される凝ったラジエーターファン。


【3】に続く


1962年式 東急 くろがねベビー
SPECIFICATIONS 諸元
全長 2995mm
全幅 1280mm
全高 1645mm
荷台長 1300mm
荷台幅 1170mm
荷台高 400mm
ホイールベース 1750mm
トレッド前/後 1070/1050mm
車両重量 480kg
乗車定員 2名
最大積載量 350kg
最高速度 65km/h
登坂能力 16°
最小回転半径 3.9m
エンジン型式 WE型
エンジン種類 水冷直列2気筒
総排気量 356cc
ボア×ストローク 62×59mm
圧縮比 7.0:1
最高出力 18ps/4500rpm
最大トルク 3.3kg-m/3400rpm
燃料消費率 30km/L
変速機 乾式単板前進3段後進1段
サスペンション前/後 半楕円型板ばね横置型/コイルばね独立懸架
タイヤ前後とも 4.50-12-4PR.ULT.
発売当時価格 29.8万円


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 04月 Vol.168 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1962年式 東急 くろがねベビー(全3記事)

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text : RYOICHI IGAWA/井川了一 photo : MAKOTO INOUE/井上誠

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