そこが開くのっ!? ドアも荷台のあおりも開き方がユニークっ!|1962年式 東急 くろがねベビー Vol.1

ドアは前側が開くタイプ。荷台開口部は車体の左側のみとなっている。

       
【1962年式 東急 くろがねベビー Vol.1】

 戦前期から「くろがね」の名を冠するオート三輪や軍用車の開発、製造を行い、名車を世に送り出してきた日本内燃機株式会社。しかし戦後は衰退の一途をたどり、1962年には倒産へと追い込まれてしまう。その晩年、再起への一瞬の光明として送り出されたのがくろがねベビーだ。

 昭和30年代まで、商用トラックは税制面で有利なオート三輪が主流であった。そこにトヨタが送り出した四輪トラック、トヨエースがシェアを奪っていく。より乗用車的な四輪車がユーザーには好まれたのだろう。軽自動車でもその流れが起こりつつあった。

 その頃くろがねはというと、人材の流出により開発がままならない状況であった。存続のため東急グループによる買収を受け、さらに経営が行き詰っていた小型四輪メーカーの老舗、オオタ自動車工業を吸収合併。三輪、四輪の総合メーカーを目指すことになる。

 くろがねベビーは、オオタ自動車創業者の三男である太田祐茂さんによる設計である。ちなみに農機メーカーとして有名なヤンマーが同時期に開発していた、ディーゼルエンジンを搭載する軽四輪トラック、ヤンマーポニーも太田祐茂さんが試作段階に関わっており、エンジン以外の基本設計はベビーと姉妹車のような関係にある。

ボディ前面下部につくボディサイズに対して大きく見える「kurogane」のエンブレムや、左側面が開く荷台の開口部など【写真28枚】





幌は車体軽量化が目的と思われる。オリジナルはボロボロになり、後に作り直したもの。





東急くろがね工業の名を、歴史に残した名商用車





【2】【3】に続く

1962年式 東急 くろがねベビー
SPECIFICATIONS 諸元
全長2995mm
全幅1280mm
全高1645mm
荷台長1300mm
荷台幅1170mm
荷台高400mm
ホイールベース1750mm
トレッド前/後1070/1050mm
車両重量480kg
乗車定員2名
最大積載量350kg
最高速度65km/h
登坂能力16°
最小回転半径3.9m
エンジン型式WE型
エンジン種類水冷直列2気筒
総排気量356cc
ボア×ストローク62×59mm
圧縮比7.0:1
最高出力18ps/4500rpm
最大トルク3.3kg-m/3400rpm
燃料消費率30km/L
変速機乾式単板前進3段後進1段
サスペンション前/後半楕円型板ばね横置型/コイルばね独立懸架
タイヤ前後とも4.50-12-4PR.ULT.
発売当時価格29.8万円


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 04月 Vol.168 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1962年式 東急 くろがねベビー(全3記事)

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text : RYOICHI IGAWA/井川了一 photo : MAKOTO INOUE/井上誠

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