排ガス定期検査、廃止の動き。実は旧車に優しいカナダの法規制|1980年式 日産 スカイライン HT 2000 GT Vol.2

ケンメリを彷彿とさせる先代譲りのスタイリングは流麗で美しい。1977年に登場した「ジャパン」のデザインは、フルモデルチェンジにおけるキープコンセプトのデザインの先駆けとなった。それは1978年には日産フェアレディ、1979年にはホンダ・シビックがキープコンセプトでフルモデルチェンジを受けたことからも分かる。

       
カナダ発! ニッポン旧車の楽しみ方
【1980年式 日産 スカイライン ハードトップ 2000 GT Vol.2】

【1】から続く

排ガス定期検査、廃止の動き

 日産がダットサンのブランドネームでカナダへ進出したのは、アメリカ進出同様に早い時期だった。カナダの個人系ディーラーに販売を依存していた初期には販売台数はそれほど伸びず、1965年になってカナダ西端のバンクーバー市に現地法人を設立。アメリカ同様にスカイラインはカナダへ正規輸入されることはなかったものの、1967年の510、1969年の240Zと人気が高まり、70年には日産は輸入車メーカー69社中4位という大きな存在になっていた。

 80年代に入ると、日本車の大量輸入に起因したアメリカ自動車産業の不振を受けて、カナダの雇用も悪化。アメリカ政府に同調して日本に自動車輸出規制を求めたりもした。

 このようにアメリカ自動車産業との強い連携を保っていたカナダも、法規制の面ではアメリカとはずいぶん異なっていて、実は旧車には優しいのである。クルマの改造が比較的自由なだけでなく、中古車の輸入は車両製造後15年以上ならば合法(アメリカは25年以上)となるなど、自国自動車産業を守るためと主張するアメリカの法規制よりも、カナダの法規制はユルい。自動車製造国として独自メーカーを存続できなかったカナダといえども、旧車にファンがいてニーズがあることを率直に理解する「カナダらしさ」がそこに見える。

 そんなリベラルなカナダの真骨頂、2014年に大きな動きがバンクーバー市で起こった。なんと乗用車の排ガス定期検査を撤廃するという。旧車オーナーがホッと胸をなでおろす、何ともうれしいニュースが伝わった。

 カナダの排ガス規制はそれぞれの州政府に依存されている部分が大きく、古くは70年代に排ガス規制が導入されたものの、定期検査を伴う本格的なものになったのは意外にも90年代だった。それでも対象となっているのはカナダ国内の主要な2都市のみだ。

 カナダ東部のオンタリオ州南部で「ドライブクリーン」の通称のもとで行われる排ガス規制は、99年に始まり現在も継続中。製造7年目以降は定期的な排ガス検査が求められる。87年式以前はこの定期検査が免除される。

 これに対して西部のブリティッシュコロンビア州バンクーバー市の都市部が対象となっている「エアケア」は、大気汚染の危険性が唱えられたことを受けて4/91年から開始された。新車か旧車登録された車両でない限り排ガス定期検査が課されるこのエアケアは、2014年末日をもってすべての乗用車に対する定期検査が廃止される。

 まるで時代に逆行するかのように思えるこの排ガス定期検査廃止の動き。それは以下のように説明されている。

 エアケア開始から20年間、大気汚染と個々の車両の排ガス検査のデータを分析した結果、汚染ガス排出の多かった個体は特定され、修理改善された。14年以降に生産されるクルマはすでに排ガスの水準が高くなっている。このようにエアケアの成果が確認できた状況においては、今後は大気汚染対策の限られた費用や労力をまだ検査の行き届かない商用トラックや農耕車両へシフトしていく、という理屈である。

 このような現実感のある理屈が堂々と通じるバンクーバーでは、絶対数の少ない旧車は環境に対する影響がさほど大きくない、ということを政治がよく理解しているように思えるのである。

チンスポイラーによって、よりケンメリに似た雰囲気になったフロントや、 輸入したときから付いていた4輪のオーバーフェンダーなど【写真10枚】





C210スカイラインの特徴の1つに、インパネに備えられた水平指針のメーターがあった。エンジン停止時には6連計器のオレンジ色の針がそろって水平左方向に止まる姿は整然としていて美しく、そのインパネのデザインは後のスカイラインにも受け継がれる。






傷みの激しかったオリジナルの内装はすべて改装し、レザーとスエードをふんだんに使って豪華に仕上げた。後部座席にはR32のリアシートを流用したそうだが、違和感なくフィットしていた。







オーディオもオーナーの好み通りに改造してあるが、「比較的おとなしめです」とオージラさんは言った。4インチ3ウェイスピーカー方式で、トランクに収められた10インチウーファーの筐体には旧式デザインの「サムソナイト」のブリーフケースを使っていたのがユニークだった。


【3】に続く



初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 02月 Vol.167 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1980年式 日産 スカイライン ハードトップ 2000 GT(全3記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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