「もし、S20エンジンが排ガス規制をクリアしていたなら……」|1973年式 日産 スカイライン HT 2000 GT-R Vol.2

サーフィンラインをさえぎるオーバーフェンダー、そしてトランクスポイラー。レースシーンを思わせる特別な装備に、だれの胸も高鳴った。

       
【1973年式 日産 スカイライン ハードトップ 2000 GT-R Vol.2】

【1】から続く

 そして、1973年1月の発売開始からわずか4カ月後。市販台数195台、生産台数197台といわれている事実を前に、「もし、排ガス規制そのものがなかったら……」、「もし、S20エンジンが排ガス規制をクリアしていたなら……」、「もし、本気でレースに参戦していたなら……」と、幻を追いかけても空しいだけ。現実は、スカイラインの歴史に1つの「影」を残したのだ。

 今回の車両のオーナーである喜多和幸さんは、自身が小学生のときに姉がハコスカのGTに乗っていたことからハコスカに興味を覚えたという。初めて買ったハコスカはL型エンジン搭載のHTで、その後ハコスカのGT‐Rも入手。今から7年前には、オーナー同士の横のつながりからケンメリGT‐Rが売りに出ている話を聞き、ケンメリまで購入したというから、GT‐R愛好家にとってこのうえない夢を実現してしまった方だ。

 そのケンメリだが、1カ所しかサビがなかったボディにもかかわらず、「一生モノのクルマにするためには、レストアしなければ」と考え、地元の宮本自動車へフルレストアを依頼。同店の技術と自ら集めた新品パーツを惜しげもなく投入した結果、もはや新車と呼んでもいいほどにボディからエンジン、下回りに至るまで曇りがない。


K4ヘッドの組まれたケンメリ用S20型エンジンや、文字のすれや傷みのない型式プレートなど【写真22枚】




赤いプラグコード、ラジエーターのアッパーホース以外、オリジナルを保つ名機S20型エンジン。ケンメリにはK4と呼ばれるヘッドが組まれていた。青色に輝くショックは、ラバーソウル製の車高調だ。






エンジンのオーバーホールは、栃木県のプロショップ「アールファクトリー」に依頼した。






文字のすれや傷みのない型式プレートからも、このGT-Rがいかに大事に扱われてきたかがうかがえる。

【3】に続く


1973年式 日産 スカイライン ハードトップ 2000 GT-R(KPGC110)
SPECIFICATON 諸元
全長 4460mm
全幅 1695mm
全高 1380mm
ホイールベース 2610mm
トレッド前/後 1395/1375mm
最低地上高 165mm
室内長 1790mm
室内幅 1340mm
室内高 1125mm
車両重量 1145kg
乗車定員 5名
最高速度 200km/h
登坂能力 tanθ0.46
最小回転半径 5.2m
エンジン型式 S20型
エンジン種類 水冷直列6気筒DOHC
総排気量 1989cc
ボア×ストローク 82.0×62.8mm
圧縮比 9.5:1
最高出力 160ps/7000rpm
最大トルク 18.0kg-m/5600rpm
変速比 1速 2.906/2速 1.902/3速 1.308/4速 1.000/5速 0.864 後退 3.382
最終減速比 4.444
燃料タンク容量 55L
ステアリング形式 ボールナット
サスペンション 前/後ストラット/セミトレーリングアーム
ブレーキ前後とも ディスク
タイヤ前後とも 175HR14
発売当時価格 163万円


初出:ノスタルジックヒーロー 2015年 02月 Vol.167 (記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1973年式 日産 スカイライン ハードトップ 2000 GT-R(全3記事)

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text : AKIO SATO/佐藤昭夫 photo : RYOTA-RAW SHIMIZU/清水良太郎

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