カナダ生まれ！　VTECターボエンジンを搭載した初代シビックワゴン｜1979年式 ホンダシビックワゴン　Vol.1

アメリカ発！ニッポン旧車の楽しみ方 カナダ・スペシャル【1979年式 ホンダシビックワゴン　Vol.1】

シビックがもたらした縁

　旧車の改造。それは、公道走行の法制限の中で最大の工夫をして、自分だけの1台を造り上げる楽しみ。そんな旧車の楽しみ方は世界共通のようだ。

　カナダという北米の国にも、そんな日本旧車が存在していた。アメリカの北側に覆いかぶさるように国土を持つカナダは、アメリカよりもわずかに広いが人口は少ない。人口密度にしてみればアメリカの10分の1、日本のたった100分の1だ。そんな広々とした土地のためか、カナダはリベラル(自由)な国柄で知られる。そしてそのカナダのリベラルさはクルマにも表れていた。改造がずいぶんと自由なのである。

　カナダの西端の町に住むジャスティン・マーチさんは初代ホンダ・シビックの熱烈なファン。ジャスティンさんが思いのままに改造を施した1979年式シビックワゴンは、派手には見えない外見とは裏腹に、車体の中には秘密がたくさん隠されていて、まさに「スーパーシビック」と呼びたくなる1台だ。

　身長が優に180cmを超える長身だからか、ジャスティンさんがクルマにまず求めるものは「快適性」だという。

「自分が心地良く感じられる車内にいると、私は運転が楽しくなるんです。だからクルマを改造する時には、いつもまず内装から始めます」

　と言うジャスティンさんの愛車のシビックワゴンの室内は、オリジナル然とした上質のインテリアに囲まれて、並のレベルを超えたオーディオ装置が搭載されていた。ところが、そのオーディオ装置をあからさまに見せつけない、上手に隠すその手の込みようは、25年の経験を持つカーオーディオ実装の専門家だというから納得である。

「そして外装は、オリジナル状態の外観を保つようにしながら、好みで少し手を入れる程度です。あとはもちろん、エンジンの馬力はたっぷりあったほうがいいですよね」

　という言葉の裏には、次のような衝撃的な体験をしたことがあったからだ。ジャスティンさんが説明を続けた。

「20年以上前の話ですが、仲間で集まりそのあたりの道路でゼロヨンみたいなことをやって遊んでいました。そのころはシボレー・カマロに乗っていて、まあいつも楽勝だったんですが、あるとき78年式シビックに乗ってきたヤツがいて、そいつがめっぽう速い。カマロならいつも2速で十分走りきれるはずが、3速まで使わされたんですよ。何度勝負してもそうでした。こんなちっちゃいクルマにもてあそばれるなんてと思ったら、恥ずかしいやら悔しいやら」

　受けた屈辱の仕返しは同じシビックで。それがジャスティンさんの、スーパーシビックへの第一歩となった。

純正品に見せかけた後部シートのカバーをめくると、その中からあらわれる電子回路と大きなアンプなど【写真20枚】




後方からの外見は、1977年式のバンパーとテールランプのためか意外と穏やか。ところがテールゲートを開けると異様な光景が現れた。巨大なスピーカー、その手前にはスプレー缶以上に大きい1ファラッドのEFX製コンデンサーが2本横たわっていた。前部シートのヘッドレストには8インチの液晶ディスプレーが埋め込まれ、テールゲートからは19インチの液晶スクリーンがぶら下がる。色調はもちろんボディカラーとマッチさせてあった。




馬力好きのジャスティンさんは、もちろんパワートレーンも抜かりない。B16A2型エンジンにギャレット製ターボを組み合わせ、エンジン単体で300ps超えを実現。併せてLSD付きトランスミッションと2.5インチ特製エキゾーストマニホールドを装備。



制動系はNSXのブレーキキャリパーを始め、大径ローターなどもホンダ部品を流用する。


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初出：ノスタルジックヒーロー 2014年 12月号 Vol.166（記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです）

1979年式 ホンダシビックワゴン（全4記事）

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