ライフズグッドレーシングの記念碑的Z|1972年式 ダットサン 240Z Vol.2

ブラウンさんが「日常使いですよ」という240Z。ZをZらしく走らせる、それがブラウンさんのドライビングだ。ニスモのエキマニから生み出される甲高い音を響かせながら、軽快な走りを見せてくれた。

       
アメリカ発! ニッポン旧車の楽しみ方【1972年式 ダットサン 240Z Vol.2】

【1】から続く


アメリカのレース運営団体

 国ごとの技術誇示の色合いが強かったヨーロッパのレースとは異なり、アメリカのレースの歴史の多くは趣味を発端としている。そして、20世紀後半の著しいモータリゼーションと相まってレース界にも資金が流れ込み、プロフェッショナルレースの環境が形成されていった。60年代から70年代にはヨーロッパを中心としたF1やルマンといった国際レースとも呼応しながら、ヨーロッパ勢を呼び込んで、豪快さを持ち味としたレースが繰り広げられた。

 現在アメリカ国内ではオープンホイールの最高峰「インディ」とともに、ストックカーレースの人気も高い。その最高峰は「NASCAR」だ。ストック(オリジナル)カーレースは、もともとストック(在庫品)のクルマで行うものだったが、その意味合いが長年の間に変化し、今では「見た目は市販車のようだが、中身は純粋なレースカー」を使ったレースのジャンルになっている。

 オープンホイールのフォーミュラカー同様、ストックカーレーシングにもランクが存在し、レースドライバーたちはランクアップに精進する。その広い底辺の人口を包み込むだけの多くのレース主催団体があり、広いアメリカ国内の各地で、それぞれのレース主催団体はおのおのの理由で設立され、経営や運営の理由で分離統合を重ねてきた。

 1944年に設立された由緒あるSCCA(スポーツ・カー・クラブ・オブ・アメリカ)は、60年代から70年代のカンナムやトランザムシリーズの主催団体でもあり、同時にアマチュアレーサーにも身近な存在で、多くのレース活動をサポートしている。歴史が長いだけあって組織の規約などには非常に厳格だ。

 1991年に設立された新興のNASAはフレンドリーな雰囲気で、近年人気を高めている。参加費も安価である車種ごとに分けられたレースカテゴリーがユニークで、併せてレース開催日には体験走行などのイベントも開催し、若手層の取り込みと育成に努めている。

 これらと対照的だったのは、80年代に日産のターボ車が活躍したIMSA(インターナショナル・モーター・スポーツ・アソシエーション)。現在はNASCAR傘下になっている。レースカテゴリーが少なかったうえに、純粋にレースイベントに特化したことによって参戦資金が高額になりすぎたことも一因となり、一時の人気にもかかわらず参戦者がだんだん減ってしまった。

 以上のようにレース運営団体も、時代のニーズに合わせながらファンや業界を魅力的に取り込んで存続していくために、さまざまな努力を続けている。

 一方、プロフェッショナルとアマチュアのレースの違いはチーム運営に表れる。一言でいえば金銭だ。レースは年間シリーズで行われ、総合成績を問われる。そこには賞金に併せて、コンティンジェンシープライズ(レースで良い成績を収めることでスポンサーから懸賞金が支払われるシステム)など、チーム運営のための資金提供の機会が準備されている。1戦の欠場でも年間成績とスポンサーに対する印象に痛手を残すことになるので、プロフェッショナルでは1戦ごとの成績だけではなく、安定したチーム運営が必須なのだ。


2007年結成のブラウンさんの運営するチーム「ライフズグッドレーシング」のファクトリーなど【写真13枚】




ブラウンさんのプロフェッショナルレーシングの記念碑の役割を担う「240Z」。その寡黙ながらも精悍な姿は、常に意志を持って前に向かっていく、そんなメッセージをチームに伝えているようだった。





ブラウンさんはこのZの3番目のオーナーである。「2番目のオーナーは妙な改造を施していた」とブラウンさんは説明したが、ファーストオーナーから引き継がれた当時の写真や、オーナーマニュアルなどのオリジナル書類はきれいなまま、豊富に残されていた。


【3】に続く


初出:ノスタルジックヒーロー 2014年10月号 Vol.165(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

1972年式 ダットサン 240Z(全3記事)

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text & photo : HISASHI MASUI/増井久志

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