まあるい「マリンウインド」を持つクーペ|1979年式 ダイハツ シャレードクーペXT Vol.1

仮にマリンウインドがなくても、シャレードのサイドビューはデザイン的に成立すると思う。だが、あることで話題が生まれ、オーナーたちの思い入れが強くなれば、それは成功だったと言えるだろう。

       
ダイハツロマネスク

【1979年式 ダイハツ シャレードクーペXT Vol.1】

 ダイハツ工業は、日本の自動車メーカーのなかで特筆できるほど長い歴史を誇っている。創業は1907年だ。最初の製品は6馬力吸入ガス発動機だった。その後、軍用自動貨車を試作し、大正時代には鉄道車両用の機器も製作している。そして年号が昭和に変わってしばらく後の1930年に、3輪自動車の最初の作品、HA型を完成させた。750ccエンジンを積むオート三輪、ダイハツ号を製作して高い評価を獲得するのは3年後の1933年だ。

 これ以降、発動機製造株式会社を名乗っていたダイハツは、マツダとともにオート三輪と呼ばれる3輪トラック業界をけん引し、ブームを築いた。昭和初期からオート三輪の分野で名をなし、リーダー的な存在となっている。戦時中はオート三輪の生産を休止していたが、1949年に生産を再開した。51年に社名をダイハツ工業に変えた後も主役はオート三輪だ。オートバイ並みの取り回しのよさと高い機動性に加え、積載能力も高かったからである。

 1954年に第1回全日本自動車ショウが開催された。この年の日本の自動車生産台数は7万台あまりで、そのうちの80%近くを商用車が占めている。4輪トラックと人気を二分していたのはオート三輪と呼ばれる3輪トラックだ。50年代半ばから神武景気の追い風を受け、右肩上がりで自動車業界は成長し小型トラックが台頭してきた。が、買い得感と機動性に勝るオート三輪の優位性はまだ揺るがない。

 この時期、ダイハツのオート三輪は累計生産30万台に達している。3輪トラックのパイオニアを自負するダイハツが62年9月に送り出したのが1.5t積みのオート三輪、CM型だ。

 セミキャブオーバー型トラックがオート三輪を急追してきたが、ダイハツは時代の要求に応える形でCM型を開発し、量産に移した。1t積み3輪トラックのPL型の上級に位置するオート三輪で、ボディもエンジンもひと回り大きい。自慢のひとつは技術陣がこだわりをもって設計した強靭なフレームである。フロントは剛性の高い箱形フレーム、リアには強力なクロスメンバーを採用し、高剛性を誇った。



初代シャレードはデビュー後、毎年マイナーチェンジを行い、フロントグリルのデザインも年度ごとに異なっている。取材車両はあえて言えば「中期型」となり、ダイハツのDマークがグリル中央に付く。



コンパクトな水冷直列3気筒SOHCのCB31型エンジンが横置きで収まるエンジンルーム。XTの車両重量は650kgで、60psのパワーでも軽快な走りを見せる。


リアクオーターパネルにある「マリンウインド」がキュートなシャレードクーペのバックショットなど【写真14枚】






Vol.【2】、Vol.【3】に続く


1979年式 ダイハツ シャレードクーペXT(E-G10)
SPECIFICATION 諸元
全長 3530mm
全幅 1520mm
全高 1360mm
ホイールベース 2300mm
トレッド前/後 1300/1280mm
最低地上高 180mm
車両重量 650kg
乗車定員 5名
登坂能力 tanθ0.47
最小回転半径 4.7m
エンジン型式 CB31型
エンジン種類 水冷4サイクル直列3気筒SOHC
総排気量 993cc
ボア×ストローク 76×73mm
圧縮比 9.1:1
最高出力 60ps/5600rpm
最大トルク 8.2kg-m/3200rpm
変速機 前進4段フルシンクロ・後退1段
変速比 1速 3.666/2速 2.150/3速 1.464/4速 0.971/後退 3.529
最終減速比 4.277
燃料タンク容量 34ℓ
ステアリング形式 ラックアンドピニオン
サスペンション前/後 ストラット式コイルバネ/5リンク式コイルバネ
ブレーキ前/後 ブースター付ディスク/リーディングトレーリング
タイヤ前後とも 155SR13
発売当時価格 76.4万円



初出:ノスタルジックヒーロー 2014年 10月号 Vol.165(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)


1979年式 ダイハツ シャレードクーペXT(全3記事)


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photo : AKOTO INOUE/井上 誠

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