80年代。モアパワー&ハイスペックを求めて|高性能テンロク全盛期 Vol.1|駆け抜けるテンロク

スポーティーグレードは、自動車税が1ランク上になるが、それを補って余りある魅力を秘めた1.6Lエンジンを積んでいた。

       
高性能テンロク全盛期 Vol.1 全5回 】

 排ガス対策が一段落し、再びパワー競争に目覚めた1980年代は、クルマ造りが大きく変わった10年でもある。キャブは滑らかに加速し、排ガスがクリーンで燃費も良い電子制御燃料噴射装置に取って代られた。エンジンもOHVからSOHCに進化し、ついにはDOHC4バルブが主役の座に就いている。4気筒エンジン搭載車は前輪駆動(FF)に転換するクルマが相次いだ。80年代後半にはFFベースのフルタイム4WDも少なくない。

 この時代、コンパクトカーのスポーティーグレードが積むのは、走り屋たちから「テンロク」と呼ばれている1.6Lの高性能エンジンである。量販を目的に開発されたファミリー系モデルが積むのは1.3Lと1.5Lエンジンだ。これに対しスポーティーグレードは、自動車税が1ランク上になるが、それを補って余りある魅力を秘めた1.6Lエンジンを積んでいた。

コンパクトカーのスポーティーグレードに積まれていた「テンロク」と呼ばれている1.6Lの高性能エンジン各種【写真10枚】



 その理由は、ツーリングカーレースのクラス分けが、排気量1.6Lを境にして決められていたからである。だから軽量コンパクト設計のファミリーカーに、余裕ある1.6Lエンジンを積んで『羊の皮を被った狼』に仕立てた。ワインディングロードでは排気量に勝る上級クラスのスポーティーカーにひと泡ふかせる速さを見せつけている。

 当然、レースでも大暴れした。最も華やかな活躍を演じたのは、1985年から始まったグループAレースだ。シビックやレビン/トレノ、カローラFXなどのテンロクスポーツがこぞって参戦し、熾烈なバトルを繰り広げた。レースによっては上級クラスのスカイラインRSターボやスタリオンターボなどに土をつけている。

Vol.2、Vol.3、Vol.4、Vol.5に続く

初出:ハチマルヒーロー 2013年 8月号 Vol.022(記事中の内容は掲載当時のものを主とし、一部加筆したものです)

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TEXT : HIDEAKI KATAOKA / 片岡英明

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